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トランプが中国に送った新たなメッセージ

6/28(水) 12:11配信

Wedge

 ヘリテージ財団のチェンが、5月26日付のデイリー・シグナルで、南シナ海での航行の自由作戦と、中国の人権派弁護士家族の保護は、トランプ政権の対中政策がより適切になっているものと評価しています。要旨は、次の通りです。

 ここ数週間に起きた2つの動向は、米国の対中政策が先鋭化しつつあることを示唆している。その1つは、スプラトリー諸島のミスチーフ礁で米駆逐艦「デューイ」が行った航行の自由作戦である。これはトランプ政権によって行われた最初の航行の自由作戦であるだけでなく、2012年以後に初めて行われた、真の意味での航行の自由作戦であった。

 オバマ政権は南シナ海でわずかながらの「無害通航」を行っていたにすぎなかった。オバマ政権が行っていた活動は、人工島の周辺水域に侵入するにあたり、中国の事前許可は必要ないことを主張してはいたが、そこに中国の権益主張が発生しているかという重要な問題に対する活動にはなり得ていなかった。仲裁裁判所が南シナ海の様々な海洋地形は島ではなく、12カイリの主権主張を満たすにはあたらないとの裁定を下した後であっても、オバマ政権は真の航行の自由作戦を実施しようとはしなかった。

 しかし、今回駆逐艦デューイは、ミスチーフ礁の12カイリ以内を航行するにとどまらず、同海域内でman overboard訓練(※船外に人が落ちた場合の救難訓練)を実施した。これは「無害通航」ではないが、「航行の自由」に含まれる行為である。これにより、ミスチーフ礁は島ではなく、領海を発生させる権利がないことを強調したことになる。

 同時期、中国政府に異議を唱えて逮捕されていた人権活動家Xie Yang弁護士の家族が拘束先のタイから中国へ送還されようとしていた折、駐タイ米国大使館が国外脱出させることに成功している。これは2012年5月に盲目の人権弁護士として知られる陳光誠氏が北京の米国大使館に駆け込んだ際、大使館関係者が混乱した対応をとったのとは対照的である。陳氏はインタビューで、米当局では陳氏の妻の安全を保証できないため、大使館を出るよう圧力をかけられたと話している。

 トランプ政権のアジア戦略の全体像はいまだ不明確である。その間にも北朝鮮は米本土に到達する長射程のミサイル開発を続けている。北朝鮮に圧力をかけるという習近平とトランプの約束にもかかわらず、中国の北朝鮮に対する影響力行使はいまだ限定的であり、統計は中朝貿易が増加していることを示している。

 しかし今回、中国反体制派の家族に対し、米国は基本的原則へのコミットメントを具体的な形で証明した。同様に南シナ海問題についても、米海軍は海洋の自由を守る活動に回帰している。これは改善のきざしにも見受けられる。

出 典:Dean Cheng ‘Trump Signals New US Approach to China With Tough Actions’ (Daily Signal, May 26, 2017)

 トランプ政権下における対中国政策を全体的に評価するのは時期尚早でしょう。「一つの中国」には「縛られない」と就任前に述べ、蔡英文と電話会談をおこなったトランプ大統領は、就任後には、北朝鮮情勢の緊迫に伴い、「中国はよく努力している」と述べ、中国の嫌がる行動をとることを止めました。

 その後、ごく最近に至って、米国は中国の反対することに対しても、適切に行動するようになったとして、ヘリテージ財団のディーン・チェンが二つの例――南シナ海での「自由航行作戦」および人権活動家の国外脱出――を挙げています。果たして、チェンの評価が妥当であるか否か、今後の米国・中国の行動を見る以外ありません。

 「航行の自由作戦」については、南シナ海のミスチーフ礁で行われた今回の米軍のデューイ艦による行動は、2012年以来行われていなかった真の意味での「自由航行作戦」と呼ぶに値するものであったとチェンは言います。それは、オバマ時代の「無害通航」が中途半端なものであったことと対比できると述べています。そして、中国はこのデューイ艦の南シナ海での活動に対し、強く抗議しました。米国がこのような「自由航行作戦」を今後とも続けるのであれば、日本としてはそれを歓迎し、側面的な協力を惜しむべきではないでしょう。

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最終更新:6/28(水) 12:11
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