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米国がベネズエラからの原油の輸入停止を検討 --- 白石 和幸

6/28(水) 16:52配信

アゴラ

4月から始まったベネズエラの市民による反政府デモは2か月が経過している今も続いている。これまでの死者は軍人や市民ら80人以上となっている。

ニューヨーク在住でギリシャ移民の社会学者ジェームズ・ペトラスはベネズエラの警察と軍隊の統率力が尽きるまで反対派による抗議行動を「コマンド・スル」は続行させ、その間にベネズエラ国内で軍部が立ち上がるのを待っているのだと指摘している。その後、米国が介入するというのがプランだと言及している。(参照:elrobotpescador.com/2017/05/17(https://elrobotpescador.com/2017/05/17/venezuela-al-borde-de-la-guerra-civil-y-una-posible-intervencion-militar-externa/))

「コマンド・スル」とはマイアミに本部を置くラテンアメリカを管轄する米軍司令部である。

その一方で、米国はベネズエラのマドゥロ政権を牽制すべく次の二つの策をプラニングししているという。

・カリブ海のバルバドスで米軍を含め18カ国が軍事演習。
・米国はベネズエラからの原油の輸入停止を検討している。

この軍事演習は米軍指揮の元に、カリブ海の小国の軍隊が集まり、それに米国、カナダ、フランス、メキシコ、英国がオブザーバーとして参加することになっている。

カリブ海の一連の小国は最近中国も自国の影響下に置こうとする動きがあり、米国はそれをも牽制する意味の軍事演習でもある。(参照;hispantv.com(http://www.hispantv.com/noticias/venezuela/343818/ejercicios-militares-tradewinds-comando-sur-eeuu))

「Tradewinds2017」と名付けられたこの軍事演習は、ベネズエラの沿岸から1,078km離れたカリブ海バルバドスに18カ国、2500人の編成部隊によって6月6-12日に実施の軍事演習であった。その後、6月13-17日には、ベネズエラから600km離れたトリニダード・トバゴで軍事演習が続行された。(参照:hispantv.com(http://www.hispantv.com/noticias/venezuela/343818/ejercicios-militares-tradewinds-comando-sur-eeuu))

この軍事演習の後、11月には「AMAZONLOG 2017」と呼ばれている軍事演習にも米国は参加することになっている。この軍事演習は元CIAの情報提供屋とされているブラジルのテメル大統領が米軍をこの軍事演習参加に招待した。演習の場所はコロンビア、ペルー、ブラジルの3か国が国境を共有する地域で、この3か国の軍隊が参加することになっている。エクアドルは米国が参加するということで参加を辞退した。

エクアドルは今もベネズエラのチャベス前大統領の反米主義に共鳴して、ボリバル革命に賛同している国である。コロンビアとブラジルはベネズエラと国境が接しており、現在両国は米国寄りの外交を展開しており、ベネズエラを牽制する形になっている。特に、コロンビアは長年米国の航空母艦と評価されており、同国には7つの米軍基地が存在している。そこからベネズエラへの米軍の侵入は容易である。(参照:vaconfirmamendoza.com.ar(http://vaconfirmamendoza.com.ar/?articulos_seccion_719/id_2735/tropas-de-estados-unidos-en-el-corazan-de-amarica))

次に、米国がベネズエラから原油の輸入停止について、マイアミをベースにしたラテンアメリカ紙『el Nuevo Heraldo』(http://www.elnuevoherald.com/noticias/mundo/america-latina/venezuela-es/article154499669.html)が6月5日付で、米国がベネズエラからの原油の輸入停止を検討していると報じた。

これには二つの意味があるように思われる。ひとつは、今年、ベネズエラがデフォルトに陥る可能性があると噂されているが、その財政危機に加えて、米国への原油の輸出が消滅するという事態に成れば、デフォルトが早まることは必至である。

もう一つは、デフォルトすれば、米国にあるベネズエラ石油公社の子会社CITGO がロシアの石油企業Rosneftに経営権が譲られても、米国はその影響を最小限に留めることが出来るという考えである。

米国はベネズエラから日量70万バレルの原油を輸入している。輸入している企業はCITGO、Valero、Philips66、Paulsboroなどであるが、その内の24%をCITGOが輸入しているという。(参照:elnuevoherald.com(http://www.elnuevoherald.com/noticias/mundo/america-latina/venezuela-es/article154499669.html))

CITGOは米国の3か所でベネズエラからの原油を精製しているが、このCITGOの49.9%の株がロシアの石油企業Rosneftが所有しているのである。CITGOの親会社であるベネズエラ石油公社(PDVSA)がRosneftから融資を受ける際にCITGOの株を担保にしたという訳である。(参照:expansion.mx(http://expansion.mx/empresas/2017/04/11/la-compra-de-la-energetica-citgo-por-parte-de-rusia-alarma-a-estados-unidos))

今年、ベネズエラがデフォルトに陥れば、RosneftはCITGOの株を更に買い占めることは容易になる。その結果、米国内にロシア企業が突如出現するという事態になる可能性がある。米国の上下院議員の間でも国家の安全に拘わる問題だとして警鐘を鳴らしているという。(参照:expansion.mx(http://expansion.mx/empresas/2017/04/11/la-compra-de-la-energetica-citgo-por-parte-de-rusia-alarma-a-estados-unidos))

そこで、トランプ政権が策として考えたのが、ベネズエラからの原油の輸入停止ということではないかと思われる。そうすれば、マドゥロ政権を更に窮地に追い込むことになる。そして、米国がベネズエラからの原油の輸入を停止すれば、CITGOは精製業務が消滅し、企業そのものの存続が困難になる。そうしておけば、ロシアのRosneft がCITGOの経営権を取得しても米国への影響は殆どなくなるという訳である。

と同時に、米国で精製されたガソリンやディーゼルが日量8万5000バレルがベネズエラに輸出されているが、この輸出も停止するという考えである。(参照:elnuevoherald.com(http://www.elnuevoherald.com/noticias/mundo/america-latina/venezuela-es/article154499669.html))

6月初めに85人の軍人が、国家警備隊と国家警察隊が市民の抗議デモの鎮圧に暴力や無謀な発砲を交えた取り締まりをしていることを批判したとして逮捕されたそうだ。同じように、最近、14人の軍人が軍規を裏切る行為があったとして逮捕されている。軍の内部においても、物資や医薬品不足といった市民が抱えているのと同じような問題を軍人も抱えており不満が募っているという。(参照:elconfidencial.com(http://www.elconfidencial.com/mundo/2017-06-08/venezuela-rumores-golpe-estado-temor-nicolas-maduro_1395517/))

チャベス前大統領に忠誠を誓っていた軍人クリベール・アルカラーは政府に権力主義の横行が目立つようになっているとしてマドゥロ大統領を批判し、政治的、社会的、そして経済的に軍部の中でも不満が広がっていると指摘している。(参照:elconfidencial.com(http://www.elconfidencial.com/mundo/2017-06-08/venezuela-rumores-golpe-estado-temor-nicolas-maduro_1395517/))



白石 和幸(しらいし かずゆき)
貿易コンサルタント
1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究や在バルセロナ日本国総領事館のバレンシアでの業務サポートも手掛ける。著書に『1万キロ離れて観た日本』(文芸社)

白石 和幸

最終更新:6/28(水) 16:52
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