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好感度が上昇 石田ゆり子は時代を「忖度」できる女優

6/29(木) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 『日経エンタテインメント!』が2017年6月号で毎年恒例の「タレントパワーランキング」を発表しました。この一年で躍進した「女優 急上昇ランキング」では、2016年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に出演した石田ゆり子さんが1位を獲得しました。

 『逃げ恥』効果は絶大なようで、主演の新垣結衣さんは女優編No.1に輝いています。(参考記事:「新垣結衣、初の女優1位 広瀬すず、土屋太鳳が上昇」)

 特に、石田ゆり子さんの場合は、16年の83位から20位へ一気にジャンプアップしています。『逃げ恥』で石田さんは、新垣さん演じる主人公・森山みくりの伯母で、美人で仕事もできるアラフィフのキャリア女性・土屋百合(ゆりちゃん)という役柄を演じていました。仕事熱心である一方、恋愛経験のない独身女性というキャラクターでもあり、彼女がジェンダー格差を感じる中で、強く優しく生きる姿に、多くの視聴者が共感したようです。

■コンテキストスキルが高い役柄をリアルに演じる力

 このドラマに登場するゆりちゃんのオフィスシーンでのファッションに注目すると、パンツ姿も多く、一見、バリキャリ風ですが、ブラウスやシャツのデザインは女性らしい飾りがあったりと、そのバランスは絶妙で、肌の露出も少なく、仕事に励むのに万全な装いでした。

 私は毎回、石田ゆり子さん演じるシーンを見ながら、ゆりちゃんという役柄にコンテクストスキルの高さを感じたものです。

 コンテクストとは、背景、文脈という意味があり、コミュニケーションの基盤である「言語・共通の知識・価値観・ロジック」のことを指します。コンテクストスキルが高い人というのは、コミュニケーションにおいて、その場で交わした「言語・知識・価値観」のやりとりから、一を聞いて十を悟るような類推力を持っており、効率性の高いコミュニケーション能力を発揮します。それは「聞き手能力の高さ」でもあります。

 企業向けの研修で紹介することもあるビジネススキルです。日本社会で言うところの「阿吽(あうん)の呼吸」や、最近話題になった「忖度(そんたく)」もコンテクストスキルが成立させるコミュニケーションスタイルと言えると思います。

 コンテクストスキルの活用には功罪がありますが、『逃げ恥』のゆりちゃんは、ビジネスパーソンとして、効果的にその能力を発揮していました。

 上司や部下との接し方も、硬さと軟らかさのバランスを駆使し、上手にコミュニケーションをはかっているのです。

 例えば、産休をとる同僚について、女性の部下から「ぶっちゃけ迷惑!仕事も増えるし、むかつきませんか?」と不満への同意を求められました。

 ゆりちゃんは「悪いけどもうそんな次元にない。私の分まで産んでくれてありがとうって、感謝。この年になるとね、もう嫉妬なんて通り越してる。あなたたちもブーブー言わないの。今どき産休に理解のある会社の方がいいでしょ。それにね、福利厚生があるっていうことはまだ(この会社が)安泰ってことよ」と、想像力を働かせることなくただ現状への不平不満を抱く若い女性たちに対して、鋭くもしなやかでわかりやすい言葉を投げかけていました。

 旧態依然とした上司からは「これだから結婚してない女は」と陰で揶揄されるシーンはありましたが、その姿も同僚や部下たちからの厚い信頼を得ることにつながります。

 また、「若い女性の方が魅力的」という価値観にとらわれている20代女性に放ったセリフはネットでも絶賛されました。そのセリフは以下の通りです。

 「あなたはずいぶんと自分の若さに価値を見いだしているのね。私が虚しさを感じることがあるとすれば、あなたと同じように感じている女性がこの国にはたくさんいるということ。今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。自分がバカにしていたものに自分がなる。それって、辛いんじゃないかな。私たちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもそのひとつ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」

 このセリフはハッとするインパクトと同時に、説得力を持って視聴者に受け入れられたようです。この冷静なゆりちゃんの役は、石田さんが落ち着いたトーンで演じ切ったからこその説得力とも言えます。

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最終更新:6/29(木) 7:47
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