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加計学園問題で安倍内閣が犯した根本的な誤り

6/29(木) 11:26配信

日経BizGate

「関係法令に基づき適切に実施」を繰り返した安倍首相

 組織にとっての真のコンプライアンスとは、決して「法令や規則に違反しない」という意味の「法令遵守」にとどまるものではない。「社会的要請に応えること」と広くとらえる必要があるということは、これまでも、繰り返し述べてきた通りだ。それは、組織である以上、企業だけではなく、官公庁、政府においても同様だ。

 ところが、学校法人加計学園の愛媛県今治市での獣医学部新設を巡る安倍内閣の対応は、文字通りの「法令遵守」に固執し、それ以外の重要な社会の要請に目を向けてこなかった。そのような不誠実な対応によって、政権への信頼は急速に低下しつつある。

 加計学園問題は、コンプライアンスと「法令遵守」に関しても、多くの論点を含むものと言える。

 第1に、国家戦略特区の指定によって、安倍晋三首相の「腹心の友」である加計孝太郎氏が理事長を務める獣医学部の新設認可が認められようとしていることについて、「関係法令に基づき適切に実施」と繰り返し強調してきたことだ。

 獣医学部の新設は、過去50年以上にわたり認められてこなかった。それを、安倍首相がトップを務める内閣府所管で、方針決定などについて首相に権限がある国家戦略特別区域法に基づき、大学認可を所管する文部科学省の従来の方針を変更して実現しようとしているものだ。もちろん、法令上は、国家戦略特区法は、諮問会議の決定などの手続きを経て従来の行政の判断を変更することを可能としている。そういう意味で、法令上問題ないことは当然である。

 ここで問題なのは、「法令違反の有無」ではない。(1)獣医学部の新設を認めるべきとの判断が実質的に妥当だったのか、つまり、本当に「社会の要請に応える」ものだったのか、そして、(2)その判断が、公正・公平だったのかである。

獣医学部新設判断の実質的な妥当性

 (1)の「判断の実質的な妥当性」に関しては、安倍首相は、50年以上にわたって獣医学部の新設が認められて来なかった「岩盤規制の打破」ということを強調してきた。しかし、「岩盤規制の打破」はすべて「善」であり、それに抵抗して既得権益を守るのが「悪」であるかのように決めつけるのは誤りだ。

 少なくとも、専門職の資格取得を目的とする大学等の設置認可や定員の問題は、そのような単純な問題ではない。

 本来、憲法が保障する「学問の自由」(23条)の観点からは、大学などの設置は、自由であるべきだ。しかし、それが、何らかの職業の国家資格の取得を直接の目的とする大学、大学院の設置となると、国家資格取得者が就く職業の需給関係などについての見通しに基づいて、大学、大学院などの設置認可の判断が行われる必要がある。その見通しを誤ると、大きな社会的損失を生じさせることになりかねない。

 法曹養成制度改革の際、文科省は70校もの法科大学院の設置を認可したが、その結果は、膨大な額の補助金という財政負担と、数多くの就職困難な法曹志望者を産み出すという悲惨なものだった。そのような失敗を経験してきた文科省が、設置認可に慎重になるのは当然だ。

 獣医学部に関する需要の見通しについては、獣医師が診療の対象とする家畜やペットの数を見る限り、今後需要が拡大することは考え難く、長年にわたって新設を認めてこなかった。家畜の疾病予防や食肉検査などの衛生分野を担当する公務員獣医師が不足していることは確かだが、それは、主として公務員としての待遇の問題であり、獣医師全体の需給関係の問題ではない。

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最終更新:6/29(木) 15:50
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