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主将と点取り屋の葛藤。川崎F・小林悠は「自分のゴールも大事ですもん」

6/29(木) 8:00配信

webスポルティーバ

◆川崎フロンターレ・小林悠インタビュー(後編)

 川崎フロンターレの小林悠は、寝室の扉の内側に目標を書き記した紙を貼っている。その場所を選んだのは、起床とともに毎朝必ず見ることで、より強く意識できるからだという。

【写真】小林悠を変えた「運命の試合」

 2017年になって、新たに書き直した紙は全部で3枚。うち2枚には「タイトル」と「全試合出場」の言葉が綴られている――。

 今季から指揮官が鬼木達監督となって、キャプテンを任されるようになった小林に、チームの何が変わったのかを聞けば、こう答えてくれた。

「昨季までは攻撃のところに特化していて、その分というわけではないですけど、やっぱり簡単な失点というか、チームとしてオーガナイズできていれば防げた失点というのがあった。オニさん(鬼木監督)は、その隙を出させないというか、攻撃しているときもリスク管理をするとか、攻撃している中でも守備時のマークを確認させるなど、守備の意識を徹底してくれている。

 今まではどちらかというと常にイケイケな感じでしたけど、今季は(谷口)彰悟とか(大島)僚太が、しっかりバランスを取ってくれている。チームとしても、勝つために今、攻撃に打って出ていいのか、それともボールを大事にしたほうがいいのか、というアンテナを張れるようになった」

 今季の川崎には手堅さがあり、試合巧者のようにすら見えるのはそのためだろう。今年の1月1日、天皇杯決勝で敗れて、その悔しさから小林は勝つことにこだわるようになった。「たとえオウンゴールで勝っても、勝ちは勝ち。勝ち点3がプラスできるならば最高にうれしいし、それでいいとすら思えるようになった」とまで言う彼の姿勢は、確実にチームにも伝播している。

 内容よりも結果――それは、タイトル獲得を目指すうえで、小林の中で新たに芽生えた本心である。一方で、小林の中には異なる感情がある。キャプテンとしてチームのことを考えた感情を縦軸とするならば、それとは平行することのない横軸が存在する。

 彼が持つもうひとつの軸は、ストライカーとしての感情である。寝室の扉に貼られた最後の1枚には、しっかりと「得点王」の文字が刻まれているのだ。

 小林自身、自らの中にあるふたつの異なる感情に気づいたのは、おそらくこのインタビュー中でのことだろう。

「キャプテンとして変わったところは何か?」という質問に対して、小林は「若手に対しても、積極的に声を掛けるようになりました」と答えた。具体的に聞けば、今季加入したFW知念慶(愛知学院大→)とのエピソードを教えてくれた。

「あいつは、すごくいいものを持っていると思うんですよ。ただ、僕が若いときもそうでしたけど、なかなか試合に絡めるわけじゃない。だから、『オレが若い頃は試合に出るために紅白戦のときには、ゴールしか狙っていなかったよ』って言ったんです。『周りに何を言われようが、FWは点を取らなければ、メンバー入りすることはできない。オレはそこにこだわったから、プロ2年目の途中から試合に出られるようになった』って。

 あいつがそれを聞いて、どう感じたかはわからないですけど、『どんな形でもいいから、とにかくゴールにこだわれ』ってことは伝えました。試合に出なければ、経験も成長もできないと思うから」

 そう言ってから、ハッとしたのか、小林は話のテーマを自分に戻した。

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