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BOOM BOOM SATELLITESは最後まで“究極のライブ”を見せた 二人の歩み凝縮したラストステージ

6/29(木) 16:00配信

リアルサウンド

 BOOM BOOM SATELLITES(以下、BBS)が6月18日、新木場STUDIO COASTにてラストライブ『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』を開催した。昨年5月31日、最終オリジナル作品となった『LAY YOUR HANDS ON ME』の発売をもってその活動を終了することを発表したBBSだったが、同年10月9日に川島道行(Vo/Gt)が逝去。今年3月にベストアルバム『19972016』をリリースしたのを機に、ファンに向けたサプライズとしてこのラストライブ開催を発表。チケットが即日完売したこともあり、全国7都市の映画館にてライブビューイングが行われる盛況ぶりとなった。

 開演を待つ間、場内には中野雅之(Ba/Prog)が6年ほど前に制作した“ミックステープ”が流れ、観客の期待を徐々に煽っていく。そして定刻が過ぎた頃にはオーディエンスの熱気が早くもピークを迎え、場内にハンドクラップが鳴り響く。すると、BGMがフェードアウトして場内は暗転。ステージ前に下ろされた幕には壮大な宇宙空間や都会の一場面などが映し出され、場内の空気が一変する。紗幕の向こうには所定の位置に移動する中野、サポートドラマーの福田洋子、同じくサポートギタリストの山本幹宗の姿が見え隠れし、ステージ下手から福田、中野、そして川島道行の立ち位置を空けて上手に山本というおなじみの配置が確認できた。

 雑踏音が流れる中、その音が止まったと同時に川島のブレスが場内に響きわたり、そのまま「LAY YOUR HANDS ON ME」からライブはスタート。川島存命時にはライブ披露が叶わなかったこの曲が1曲目とわかると、フロアからは歓喜の声が上がる。紗幕には川島の歌声にあわせて動く波紋が映し出され、今日の盛り上がりにあわせてその動きは徐々に大きくなっていった。また、ライブバージョンで聴くこの曲の躍動感は想像以上で、改めてBBSはライブバンドなのだということを強く実感させられた。

 2曲目「NINE」では紗幕に川島のシルエットが映し出され、マイクやギターアンプなどが配置されているもののそこにはいない川島が、まるで本当にこの場で歌っているかのような錯覚に陥る。曲が終盤に進むにつれて、バンドが放つ高揚感はさらに増し、続く「DRESS LIKE AN ANGEL」ではオープニングのキメフレーズで観客とバンドの熱力は一気に爆発。サウンドと連動した照明、紗幕のほかにステージ後方にも設置されたスクリーンを使った立体的映像がより幻想的な空気を作り上げ、会場を異空間へと誘う。今回のステージ演出は、過去のBBSの映像作品やライブ演出などに携わった関和亮、長添雅嗣、柿本ケンサク、山本太陽といったクリエイター集団によるもの。まさに「BBSのことを強く理解したクリエイターたち」による、究極のステージングが終始展開され、この瞬間までは川島の不在を一切感じることはなかった。

 ところが、4曲目「BACK ON MY FEET」で紗幕が上がると同時に、そこに川島不在という現実を無情にも突きつけられる。その事実に胸が苦しくなったが、それもほんの一瞬のこと。強烈な演奏とまばゆい照明を前にしたら、この「“今”のBBS」を自然と受け入れている自分がいた。それはフロアにいるオーディエンスも同様で、早くもモッシュやクラウドサーフといったアクションでバンドの熱演に応えていた。

 中野はステージ前方に飛び出し、いつものように観客を煽る。「MORNING AFTER」では在りし日の川島のライブ映像がコラージュ的にスクリーンに映し出され、「KICK IT OUT」ではMVにも登場するCGがサウンドとリンクして動く。特に「KICK IT OUT」では川島のボーカルトラックにあわせて、中野もマイクを通して歌声を乗せライブ感を強めていった。また、「A HUNDRED SUNS」のエンディングでは強烈なフィードバック音が延々と鳴らされ、そのまま「FOGBOUND」へと続くと場内に無数ものまばゆいレーザー光線が飛び交う。こういう演出も含め、「自分は今、ロックバンドBBSのライブを体験しているんだ!」と満足したファンは多かったのではないだろうか。

 そして「BLIND BIRD」では再び紗幕が下ろされ、歌詞と都会の映像が浮かび上がる。それまでのアッパーな空気感から一変、場内は再び濃厚で幻想的な世界観が演出されていった。続く「STARS AND CLOUDS」では会場の壁面にまで宇宙空間が映し出され、その中で川島の伸びやかな歌声が響きわたる。その光景を、オーディエンスは一瞬も見逃すまいと見入り、静かに聴き入る。静と動、生と死……さまざまなイメージを与えてくれるこの曲のエンディングでは、場内の宇宙空間がいつのまにか青空へと変わっていた。そこから川島が生前強く愛したと言われる「STAY」へ。川島の歌からは生命力の強さが感じられ、まばゆいまでの強い照明が川島の立ち位置から放たれると、そのままクライマックスに突入。轟音の中にも優しさが感じられるこの曲に対し、フロアからは盛大な拍手が送られた。

 紗幕の後ろからお辞儀をする中野は、そのまま『LAY YOUR HANDS ON ME』のラスト2曲「FLARE」「NARCOSIS」を続けて演奏。川島が生前最後にレコーディングしたコーラスを用いたこれらの曲では、紗幕にオープのような無数もの光の球体が上昇していく様が映し出される。そして「NARCOSIS」のエンディングでは紗幕が上がると同時に、天井から白い羽根が舞い落ちてくる。ドリーミーなサウンドと相まって、これらの演奏と演出はまるで何かが一度終わり、また新たに生まれ変わるかのような印象を与えたのではないだろうか。

 スクリーンに川島と中野のこれまでの軌跡を振り返る映像が、まるで走馬灯のように流れていく。そんな感動的な場面の最後に用意されたのは、2013年5月の日本武道館公演で川島が最後に放ったセリフ「最後に言いたいことがあります。BOOM BOOM SATELLITESでした! ありがとうございました!」だった。まるでひとりの人間の人生が、100分に凝縮されたかのようなこの日のライブはここで幕を下ろした。

 目元を手で押さえながら、中野は観客に向けて何度もお辞儀をする。そして最後に福田、山本と一緒に挨拶をすると、中野は「長いこと支えていただいて言葉がありません。本当にBOOM BOOM SATELLITESのことを大事にしていただいて、ありがとうございました。あなたたちが僕と川島くんが一番大切にしてきたもので、誇りです。これからも僕たちが作ってきた音楽を大事にしてください」と涙を浮かべながら語った。そして、その後もひとりステージに残り、名残惜しそうにファンに挨拶をしてその場を去った。

 こうして20数年にわたるBBSの活動に、正式に終止符が打たれた。あの日私たちが会場で目にしたもの、耳にしたものは間違いなくBBSのライブそのものだった。残念ながら川島がその場に立つことは叶わなかったが、その姿は目には見えなくても、彼の存在はその場に確かに感じられた……あの空間にいた者なら、きっと同意してくれるはずだ。そういう意味でも、この日のライブは間違いなく、川島と中野がスタートさせたBBSのラストステージだったのだと断言できるものだった。

 ようやくここでBBSに大きな区切りをつけた中野は、きっとこれから新たなステージで、新たな音楽を聴かせてくれることだろう。すでに8月には『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』に、TK(凛として時雨)とのユニット・PANDASでの出演も決定している。これからどんな音楽で我々を魅了していくのか、楽しみでならない。

西廣智一

最終更新:6/29(木) 16:00
リアルサウンド