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コンセプトは反トランプ?「今のアメリカはアメリカ的ではない」 - Q.サカマキ Instagramフォトグラファーズ

6/29(木) 10:46配信

ニューズウィーク日本版

<アメリカ人写真家ジョン・トロッターのインスタグラムは、アカウント名が「unamericain」。これにはどういう意味が込められているのか>

今回取り上げる写真家は、ニューヨーク在住のアメリカ人、ジョン・トロッター。大ベテランである。とはいえ、彼がインスタグラムを本格的に使うようになったのは、ここ最近のことだ。

すぐに、unamericainというアカウント名に興味を引かれた。また、現在進行系の抗議運動を撮った写真にも。そしてこう思った。彼が作品に託したメッセージは「トランプ大統領の登場とともにアメリカで発生し始めた多くの出来事は、本当のアメリカじゃない」ということではないか。アカウント名は「un-American」(アメリカ人ではない、アメリカ的ではない)にかけて付けられたのではないか、と。

半ば当たり、半ば外れていた。トロッターがunamericainのアカウント名でインスタグラムを始めたのは、少し意表を突いて、連絡の途絶えた古い友人たちなどにも目を留めてもらい、できれば自分を見つけ出してもらおうと思ったからだ。

また、プレスや写真家の友人が多い彼は、そうした人間なら誰もが知っている巨匠ロバート・フランクの『The Americans』を意図的にもじっていた。フランス人の血を引いていたこともあり、最初にフランスで出版された同書のフランス語版タイトル(『Les Américains』)を使ったのだ。

【参考記事】アクティヴィストを自称する「インスタグラムの王」

ただそれだけで、社会的なコンセプトはなかった。実際、トロッターのインスタグラムの初期の作品は、彼がサイクリング時にスナップ的に撮ったものだ。

John Trotterさん(@unamericain)がシェアした投稿 - 2017 5月 5 1:35午後 PDT




John Trotterさん(@unamericain)がシェアした投稿 - 2017 6月 22 5:14午後 PDT


だが、大統領トランプの出現とともに、とりわけ1月のトランプの就任式をトロッター自身が取材して以来、彼はインスタグラムの中で写真をシリアスに考えるようになっていった。いつのまにか、un-Americanのコンセプトも自然に含むようになっていった。

とはいえ、社会性のある写真というだけでは――とりわけ抗議運動の写真は――魅力的な写真にはならなかったかもしれない。いくら多くのアメリカ人やトロッター自身が、今のアメリカに怒りや不安を感じていたとしても。なぜなら、このトランプ時代、そうした写真はSNSなどで数えきれないほど発表されているからだ。

にもかかわらず、彼の写真は何かが違っていた。抗議運動の中で群衆を撮影しながらも、常にほぼ個人に焦点を当てている。フラッシュを調整しながら被写体を浮き出させ、力強さと親密さの2つの臨場感的要素をうまくかもし出しているのだ。

【参考記事】本音を出さない政治家の、本質をえぐるフラッシュ

もう1つ理由がある。20年前に彼が経験した悪夢に起因したものだ。彼はカリフォルニアでギャングを取材中、袋叩きにされ、九死に一生を得たが、トラウマと物理的な後遺症が残ってしまった。大勢の人や多くの物事を一度に知覚する能力が弱くなってしまったという。

そのためトロッターは、群衆を撮影しながらも、その中の個人に焦点を当てているのだという。いってみれば、写真家としての本能的な使命感と肉体的・精神的なセラピーを兼ねている。それが結果として、典型的な抗議運動であるはずの写真をどこか不可思議で魅力あるものにしているのかもしれない。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
John Trotter @unamericain

John Trotterさん(@unamericain)がシェアした投稿 - 2017 1月 28 9:55午後 PST



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