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「TRAIN SUITE 四季島」はいかにして生まれたのか~フェラーリをデザインした男・奥山清行が語るモノづくりの神髄(前編)

6/29(木) 15:57配信

nikkei BPnet

 2017年5月1日から運行開始となり、大きな話題を集めているのがJR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」。斬新かつ新しい旅の形を提案していると、鉄道ファンだけにとどまらない人気を博している。事実、旅行代金は32万円から95万円と高額にも関わらず、すでに来年3月出発分まで完売しているというほどだ。そんな輝かしい成功の立役者となったのが、本プロジェクトのプロデュースを手掛けた奥山清行氏。「イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした男」として注目を集め、Ken Okuyamaの名前で知られている世界的に有名な工業デザイナーである。
 これまでにE6系秋田新幹線やE7系北陸新幹線、山手線新車両E235系などのデザインプロデュースも行っており、いまや鉄道事業の発展には欠かせない一人でもあるが、これまでに携わってきたプロジェクトは多岐に及び、その活躍はとどまるところを知らない。大学卒業後より海外に渡った奥山氏は、アメリカをはじめ、ドイツ、イタリアといった世界を舞台に経験を積み、長年モノづくりの第一線を走り続けている。そんな、奥山流モノづくりの神髄に迫るべく、前編では「TRAIN SUITE 四季島」誕生までの経緯やデザイナーとしての役割について聞いてみた。 (インタビュー・文=志村昌美、インタビュー写真=武田光司)

「トータルプロデュースさせて欲しい」という逆提案から始まった

 「TRAIN SUITE 四季島」では、デザインだけでなく、サービス内容なども含めてほぼすべての工程に携わったという奥山氏。それだけに細部に至るまで、こだわりの強さを感じさせるが、5年もの年月をかけて完成させた裏には、並々ならぬ思いもあったはずだ。

――まずは、どうやってこれらのコンセプトを生み出したのか、きっかけや意識していた点を教えてください。

奥山 それまでに秋田新幹線や北陸新幹線のデザインプロジェクトに参加したこともあり、JR東日本さんは当社のことをよく理解した上で指名して下さったのですが、最初は内装と外装をデザインするぐらいのつもりで依頼を受けたと思います。ただ、僕もそれまで鉄道事業に対して感じていた疑問というのがあったので、それをどうにかしたいという気持ちもありました。つまり、現代の鉄道事業というのは、運輸業ではなく実はサービス業だということです。時間通りに正確に安全に人と物を運ぶというのは、当たり前なことであり、もちろん大切なことですが、収益の大部分は運賃などによる鉄道事業ではなく、商業施設などの関連事業から入っているのが現状。にも関わらず、それを提供している側のメンタリティーが追いついていないんですよ。

 というのも、僕は週に何回もいろんな新幹線を利用していて疑問に思うことがありました。同じ値段を払っているのに、路線によってサービス内容が全然違っているなんて、顧客目線からすると気になりますよね。また、プラスアルファの料金を頂くならば、それに見合った経験を持ち帰っていただけるようにしたかった。そのためには一本筋が通ったサービスを提供したいので、「車両のデザインだけではなく、ユニフォームもロゴも名前も、また、料理に関わる器だけでなくすべての車内備品もトータルでプロデュースさせてください」と逆提案したんです。

 最初はJR東日本さんも驚いていましたが、それくらいしないとお客様に四季島のメッセージを伝達できないと思ったわけです。できれば待合室や駅舎の一部も含めてまるごとやらせていただけるなら是非お受けしたい、とお伝えして始まったのがクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」というプロジェクトです。

【TRAIN SUITE 四季島】
 2017年5月1日より運行が開始されたKEN OKUYAMA DESIGNがデザインした10両編成、定員34人の豪華寝台列車。色濃く変わる四季のうつろいと、いままでにない体験や発見を通じて、まだ知らないことがあったという幸福を実感してもらいたいという思いを込めて、コンセプトは「深遊探訪(しんゆうたんぼう)」。甲信越を回る1泊2日のコースから、3泊4日で東北や北海道まで訪れるコースまであり、モダンで斬新なデザインが車両ごとに楽しめることも話題となっている。

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最終更新:6/29(木) 15:57
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