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アメトラの女装家──トム ブラウン 2018年春夏コレクション

6/30(金) 11:21配信

GQ JAPAN

最後に登場したトム・ブラウン本人は、シアサッカーのジャケットとショートパンツを穿いていた。しかし、ランウェイに登場したモデルの7割はスカートかワンピースを着用していた。なぜトムは、かれらに女性の服を着せたのだろうか?

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日本のTVはLGBTのタレントに支配されつつある。そのことについてここで意見は述べないけれど、かれら、かの女たちのなかで、ガチガチのアメトラな装いの人はいない気がする。トム ブラウン ニューヨークのショーの前日のパリはゲイ・パレードで、街はお祭り騒ぎだったのだが、パリのLGBTの人たちも同様だった。女装をしている男性たちの装いは、ほぼTVに出ている人たちと同じか、たまにTVに出てくる新宿二丁目の住人と似ている印象を受けた。

サウナ状態の蒸し暑い会場に入ると、ランウェイの中央には、ガラスケースに仰々しく収められた3つの金の靴が並んでいた。両端はヒールのロングウィングチップで、中央は子供用の編み上げブーツだ。話が前後するが、ランウェイを歩くモデルたちは、子供の靴にだけ寂しげに目線を送ることになる。何かを言いたげに。

コレクションのほとんどは“ザ・トムブラウン”的なアイテムで構成されている。グレーの段返り3つボタンのジャケット、犬の金刺繍が施されたシアサッカーのスーツ、細身のボタンダウンシャツ&タイ……。でも、珍しく定番をランウェイで見せるのかと思いきや、シルエットがどうも不自然である。

なぜなら、かれきている服は、サイズ感はぴったりなのに、女性服のシルエットだからだ。ジャケットは50cm以下の着丈のショート丈か、たっぷりとしたロングジャケットで、ストライプのロングコートは艶かしく体に沿う。これに、様々な形のスカートとワンピースと“ロングウィングヒール”が加わるから、頭はさらに混乱する。

私たちは子供の頃から、男性服と女性服の違いを自然と理解するようになる。LGBTではない男子は小学1年生の時点で、スカートを穿きたくて駄々をこねることはない。ここ数年のジェンダーレスは、男性が女性服の表面的な要素を取り入れていく流れだった。今回のトムのジェンダーレスは、そうした流れとは少し毛色が異なり、男性服の構造を女性服の構造に置き換えたことに面白みがある。

トム・ブラウンは、ルールが明確に決められたユニフォーム的なアメトラな世界にシルエット革命をもたらした。トムの登場で、ジャケットの丈は短くなり、シャツはタイトになり、パンツはクロップド丈となったのだ。今回のコレクションは、そのシルエット革命の第2段階ということなのかもしれない。それでも、これが一般に普及することは決してないだろう。

最後を飾ったのは、前姿がタキシード、後ろ姿がウェディングドレス姿の男性だった。男性と女性の両方の感性を持っている人、つまりはトムの化身なのだと思う。人間は複雑で難しい生き物である。思想も宗教も肌の色も嗜好もそれぞれ違う。でも、誰もが幸せになる権利を持っているのだ。

Words: Kaijiro Masuda

最終更新:6/30(金) 11:22
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