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学校不祥事の顛末-退職教諭が在職時に得た個人情報を流用-(1)

6/30(金) 18:30配信

教員養成セミナー

膨大な個人情報を保有する学校 求められる適切な管理とは

【今月の事例】
県教育委員会は、県立B高校の教諭だった60代の男性が、生徒約300人分の個人情報を流用していたと発表した。住所などが載った名簿を不正に持ち出し、安全保障関連法の廃止を求める署名を促す文書を送っていたという。元教諭は、校内のサーバー上で管理していた生徒600人超の氏名、住所などが載った名簿を自分のUSBメモリで持ち出し、自宅のパソコンに保存。定年退職後、生徒約300人の自宅に、署名を促す文書を送付した。元教諭は「署名を求めるために持ち出したわけではない」と説明している。既に退職しているため、懲戒処分の対象にはならないという。

1 問題の核心
 個人情報に関連する服務事故の典型例は、所定の手続きを経ることなく書類、あるいはUSBに入れた個人情報を学校外へ持ちだしてそれを紛失したり、車上荒らしや置き引きなどの盗難被害に遭ったりするケースです。

 他方、本件は不正に持ち出した個人情報を、あえて特定の目的をもって流用した珍しい事案です。元教諭は「紛失や盗難ではないから問題ない」「外部へ漏えいしたわけではない」という認識だったのかもしれません。しかし、問題の核心は、個人情報の適切な管理を逸脱していること、管理上のルールを守らなかったことであり、外部への漏えいが起きたかどうかではありません。


2 個人情報保護に関する知識

(1)適用法令
学校の場合、私立では「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)に基づき、公立等では個人情報保護条例等のもとに、個人情報を適正に管理をすることが求められています。
(2)個人情報の具体例
個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」(個人情報保護法第2条)をいいます。個人データとは、個人情報をデータベース化した場合、そのデータベースを構成する個人情報をいいます。

 これらの定義から分かるように、学校には個人情報が溢れています。例えば、氏名が含まれる名簿等、内申書、成績表、指導要録などは個人情報に該当しますし、在校生ばかりでなく保護者・教職員・卒業生、受験生等に関する情報も、個人情報に該当する場合があり得ます。


3 個人情報に関する校内ルール
 個人情報保護法は、下記のとおり安全管理措置等をとる義務を定めています。


(安全管理措置)
第20条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
(従業者の監督)
第21条  個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。


 こうした法の趣旨を受け、自治体や学校の多くは、個人情報の取り扱いについて具体的な規則を定めています。「個人情報を学校外へ持ちだす場合は校長の許可を得る」といったルールは、まさにその代表例です。


4 信頼確保へ向けて
 元教諭の行為は、在職中であれば当然、懲戒処分の対象となります。個人情報の不適切な管理による漏えいにより生徒らに損害が発生すれば、民事上の不法行為責任を問われる可能性もあります。なお、改正個人情報保護法が全面施行となる2017年5月30日以後、個人情報の取り扱いに関する業務の従事者等が、不正な利益を得る目的で提供し、または盗用すると罰則が科せられます(第83条「個人情報データベース等不正提供罪」)。

 現代において、個人情報の適切な管理は、学校だけでなく民間事業者にも広く求められる義務であり、社会的要請です。ルールを遵守し、児童生徒、保護者、ひいては社会からの信頼を失うことがないよう個人情報を慎重に取り扱うことが、一人一人の教員に求められているのです。


※「教員養成セミナー2017年7月号」より

弁護士 樋口 千鶴
(上條・鶴巻法律事務所/東京都教育委員会公益通報弁護士窓口)

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