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生物工学から生まれた「吸血ブレスレット」のプロトタイプ

6/30(金) 7:31配信

WIRED.jp

カナダの研究者チームは、身につけた者が痛みを感じない「自動採血デヴァイス」のプロトタイプを発表した。そのヒントは、人間の厄介な大敵、「蚊」の口吻にあった。

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地球上でもっとも優れた吸血生物といえば、およそ1億7,000万年前から生息し続け、その鋭利な鋸歯で切り開いた傷口から毛細血管をピンポイントで探り当てる昆虫、蚊である。直径80マイクロメートルと、人間の毛髪より細い針により皮膚との接触面積と摩擦を最小限に抑えることで、獲物の痛覚を刺激することなく血液を吸える。

こうした蚊の吸血メカニズムは近年、痛みを感じさせない注射針のヒントして、生物工学の分野で注目されてきた。それをさらに応用したのが、定期的に装着者の血液を無痛で採取し、血糖値データをスマートフォンなどの外部装置に自動転送できる医療用の「吸血デヴァイス」だ。

カギは「形状記憶合金」

糖尿病患者が強いられる日々の血糖値測定を少しでも楽にしようと、これまで医療機器メーカーはインプラント型のグルコースセンサーや、ボタンひとつで血液サンプルを採取できるセミオートの監視装置といった、あらゆる自動検査デヴァイスの開発を試みてきた。

しかし、測定プロセスそのものは簡略化できても、患者の身体にかける負担や苦痛を軽減することは決して容易ではない。そこでカナダにあるカルガリー大学の研究チームは、蚊に刺されたときのように痛覚を刺激することなく血液を採取でき、あらかじめ設定された頻度で自動的に血糖値を測定してくれるウェアラブルデヴァイス「e-Mosquito」を考案。2007年からプロトタイプの開発を進めている。

その仕組みは、アクチュエイターに取り付けられた極小の注射針を自律動力だけで皮膚下に挿入し、毛細血管から微量の血液を採取するというもの。開発初期の段階では、動力源として生体電気を利用していたが、駆動系のコストが高いことに加えて、パーツの小型化が困難という問題に直面した。最初に完成した試作機のサイズは、トランプ1組分に相当したという。結果、手首に常時装着するデヴァイスには適していなかった。

この問題を解決するために、研究チームは同大学で小型技術を専門とするオーリー・ヤディド-ペクト博士に協力を依頼。アクチュエイターの素材に、加熱することで収縮する形状記憶合金を採用した。これにより素材のコストカットだけでなく、生体電気よりも強い貫通力を生み出せるため、デヴァイス全体の小型化にも成功したというわけだ。

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最終更新:6/30(金) 7:31
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