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これからのビジネスに欠かせない存在!?VRで世界を変えるゲーマーたちの活躍

6/30(金) 19:10配信

@DIME

現在、世界で最も注目されている半導体メーカー、米国のNVIDIA(エヌビディア)主催のテクノロジーカンファレンス、GTC2017(5月8-11日@サンノゼ)に参加した。60カ国から7000人以上が集ったこのカンファレンスの大展示会場の一角には、VR VillageというVR(バーチャル・リアリティ)のゲームを中心に体験できるコーナーが展開され、その周辺にはVR企業が所狭しとばかりに出展していた。数あるセッションの中でも「ゲームのその先に:現実をバーチャル・リアリティ(VR)に」という挑戦的な題目と、マクラーレンやNASAの豪華パネリストに魅かれて50分間のパネルディスカッションを聞いた。

印象に残ったのは、ゲーム好きでストーリーテラーであり、ゲーム制作経験を持つプログラマー、エンジニア、アーティスト達が、VRゲームにとどまらず多様なプロジェクトに参画し、期待されているということだ。それはどんなプロジェクトで、どのようなチームが、何をどのように展開し、成果は何なのか? 日本企業が参入するチャンスは? 高級スポーツ車のデザイン、宇宙飛行士トレーニングや宇宙飛行のVRゲーム、空港ロビー、ホテル、手術室等のデザインシミュレーション、、、ゲーマーの活躍が、現実をバーチャルに、そしてバーチャルがさらに現実をより良くするために大きく貢献していることを知った。その後パネリスト4人それぞれに@DIMEのためだけに聞いた話も含め、事例を紹介します。

■マクラーレンのデザイン重鎮が率いる、デザイナーとゲーマーの集団がVRでプロジェクト推進

Mark Roberts氏は、20年以上マクラーレンのデザイン部門で働く、デザイン・オペレーション・マネージャーだ。現在、2022年までに15種類の新車をデザインするという社の一大ミッションに携わっている。

車のデザインは単なる車体の外見だけでなく、内装や使い勝手はもちろん、内部の機械系やネットワーク系など複雑なしくみ、時間やコスト管理なども関わり、気が遠くなるほど大変だ。彼は、そのデザインの完成度を高めると同時に開発期間を短縮するために、デザインプロセスにVRを取り入れ、チームにゲーム開発経験のあるメンバーを加えた。マクラーレンでは、最初のスケッチ画から落とし込んだクレー製の模型を塗装し、実物大のモデルを作る過程には、職人技を大切にして人の手作業の部分が多い。それは実際のデザイン画も披露されているRoberts氏のプレゼン動画(2分45秒)に集約されているので、車好きな方はどうぞ!

その後、この車のモデルをVRに落とし込んで、デザインのブラッシュアップに活用している。このVR環境開発の過程で、すでにゼロからプログラムを作ることに慣れており、複雑なデザインとエンジンをはじめとした内部機能の重たいデータから極力軽いプログラムを作ることが得意なゲーム開発経験者が、本領を発揮する。スムーズで自然な動き、操作と画面の動きに遅れがない等、VRに重要な点が解決される。デザイン過程の時間短縮だけでなく、自信を持ってデザインすることができ、一方でそれまでCGを使って得ていた顧客からのフィードバックも実際の運転体験に近い状況で入手できるようになったという。Roberts氏は「全く違う世界から来たデザイナーとゲーマーが一緒にプロジェクトを推進して、成果をあげている」、また「子供達に、ゲームで遊んでばかりいるな、なんて小言をいう時代じゃない」とも語り、会場を沸かせた。

■NASA宇宙飛行士の訓練は、ハイブリッド・リアリティを活用して、ゲーム会社ともコラボ

アメリカ航空宇宙局(NASA)の2017年度予算は196.5億ドル(約2.2兆円)だ。そこで欠かせない宇宙飛行士のトレーニングは、地球上では宇宙空間と同じ環境を設定するのが難しく、訓練用機材の製作も高価で、費用が莫大になる。そのためNASAは、VR(バーチャル・リアリティ)と物理的現実を組み合わせたハイブリッド・リアリティを活用している。NASAの「Hybrid Reality and Advanced Operational Concepts Lab」Matthew Noyes氏は、火星や月といった宇宙環境を、宇宙飛行士に全身で具体的に感じてもらいながらVRで没入感を高め、トレーニングの質向上とコスト削減をめざすプラットフォーム開発を手がけている。

例えば、以前は宇宙船内の整備用ドリルを使う訓練は、実際の船内と異なる環境で行なっているので本当の感覚をつかむのは難しかった。現在では、まず視界に入るものをVRに置き換え、物理的な感覚はなるべくそのまま体感できるようにする。つまり、宇宙飛行士は左の写真のドリルを実際に持ち、同時に右の写真にある船内のVR環境内でドリルを持っている状況をリアルタイムに目で確認しながら、ハイブリッド・リアリティの環境で質の高い訓練を受けられる。また、ここで使う訓練用ドリルは、3Dプリンターで20ドルで作成されたもので、この訓練で実際に使われることでドリル自体の改善点も明らかになり、宇宙船で実際使う高額なドリルの制作コストが削減できる。

さらに、最新のトレーニングでは、火星や月、あるいは宇宙ステーションで感じられる低重力の環境をシミュレートして体験できるインテリジェント・クレーン「アルゴス」システム(ARGOS:Active Response Gravity Offload System)を活用している。

また、宇宙船内ではどのように水が流れ、火が広がるのかをVRでシミュレーションすると同時に、火事の際の対処法を体感させながら訓練するのもハイブリッド・リアリティの活用の一例だ。

さらに、ゲーム開発会社と組んで開発した火星のモーション・シミュレーションによるトレーニングでも、ハイブリッド・リアリティが活用されている。

そして現在、Noyes氏自身がネット上で見つけ、ソーシャルメディアを通して最初のコンタクトをしたという、宇宙飛行VRゲームを開発しているオーストラリアの企業とプロジェクトが進行中だ。そのコラボ先とは?

■NASAとコラボする、宇宙飛行に夢をいだくゲーマー集団とは?

オーストラリアのVRコンテンツ開発支援企業、Opaque Mediaは、NASAのトレーニングプログラム開発に貢献し、一方で自社のEarthlightという宇宙飛行のインターラクティブなVRゲームの開発にNASAの協力を得ている。

NASAのNoyes氏は、この予告ビデオの素晴らしい映像に感動して、遠く離れたオーストラリアにある、Opaque Media社に直接連絡をしたという。NASAのハイブリッド・リアリティの宇宙飛行士のトレーニングのプラットフォームの質をさらに高めるためだ。そのためにEmre Deniz氏が率いるEarthlightのチームは、実際に宇宙飛行士トレーニング用のインタラクティブVRのコンセプトを作り、実際の宇宙飛行士やNASAのプロジェクトスタッフからフィードバックを得て、プロトタイピングとテストを繰り返し、ナビゲーション開発をはじめ、宇宙船内の工具デザインへの助言など様々なサポートを行なっている。Earthlight側にとっては、NASAでしか得られない貴重なデータ、リサーチ、情報や経験をより本物感のある高度なVRゲーム作りに反映できるという、大きなメリットがある。

例えば、実在の宇宙船をインタラクティブVRのゲームにして、宇宙飛行士になりたい人々に経験してもらう一方で、宇宙飛行士にはそれをトレーニングとして使える素材となる。

今春にはNASAを訪問して、「アルゴス」システムで低重力環境を体感しながら、VRヘッドセットを装着して制作中のVRゲームを体験して、今後のゲーム制作のヒントを得たという。

Deniz氏は、「宇宙飛行に関わる人々の熱心さ、インスピレーション、イノベーションに魅せられてこの分野の仕事を始めた。そして自分たちが作ったゲームで子供達が宇宙の旅を楽しんでいるのを見て、チームメンバー全員がこの仕事をしてよかったと思っている。NASAと仕事をして、国際宇宙ステーションのモックアップを触ったり、宇宙飛行士のヘルメットをかぶってみたり、宇宙飛行士たちとチャットで会議したりすることで、私たちの人生が何か変わったように思う。それは具体的には説明できないが、人間の宇宙飛行に対する彼らの情熱を映し出す大きなプロジェクトに、我々は微力ながら貢献しているという自覚から来ているのかもしれない。」とコメントを寄せてくれた。

「無重力で行うゲームや宇宙旅行のプロモーションに関心を持っている」と、彼の夢は広がる。

■ゲーマーが作るVRシミュレーションが、企業の経費削減と効率アップに貢献

建築設計、建設分野の企業に、VRを使った開発サポートのツールやインタラクティブなVRコンテンツ提供サービスを行うTheiaのCTOであるStephen Phillips氏は、「この業界ではプロジェクトに時間がかかりすぎているので、効率よくする」と言い切る。例えば、企画からデザイン、諸々の承認を得て、最終的な完成まで5~10年かかる。インタラクティブなVRを使うことで実際の建設や内装作業に入る前の空間設計から、モックアップ制作、最終的なマーケティングまでのワークフローの時間短縮が可能だ。

ラグジュアリーホテルの例では、50~100万ドルをかけてモデルルームを作ってデザイン検討していたのを、VR上のモデルルームであれば、実際のインテリア配置、色や採光などを確認し、変更も可能で、設計のコストと時間が大幅に短縮できる。

また、手術室の設計も実際にインタラクティブなVR環境に関係者が同時にアクセスして、自分たちが使いやすい環境のために、器具やインテリアの位置関係、照明を確認するなどできるようになる。実際のモデルルームを作るのでなく、このようなVR環境を数週間で作ることができる。

では、彼らは技術的な点以外に、他社との差別化は何か? Phillip氏にさらに質問を投げかけた。「Theiaの開発者やアーティストの全員が、大学でゲーム開発を学んだり、前職でゲーム開発に関わっており、3Dのアーティストだ。そして、現在でも全てゲーム開発業界で働いているという意識でインタラクティブ・メディアに情熱を持っている。」また、「本気になればビジュアル専門の開発者は、ゲームエンジンを2~3週間である程度は使いこなせるようになる。しかし我々は、全員が専門家であり全てをインタラクティブなリアルタイムの映像に捧げている。その過程で、ノウハウはたくさんあり、本当に些細なことでも大切にして積み上げて仕事をしている。」という。「ゲーム開発者は、辛抱強く、例えばバグテストなど含めて長期にわたってコツコツと仕事をすることができる。CTOとして彼らの才能を伸ばしていきたい」と既に大手企業をクライアントに持つ自信と実直さが伝わってきた。

では、日本ではどうなのか?

■日本企業と、日本への期待はあるか?

今後は、様々な分野で、ゲーム制作の経験があるゲーマー、エンジニアやビジュアルアーティスト、インタラクティブ・メディアや3Dの専門家がプロジェクトチームに参画して、活躍するだろう。忍耐強く、チャレンジ精神あふれる、決してゴールを見失わずにコツコツと物事を進めるゲーマーは、あなたの周りにいるかもしれない。

また、NASAのPeters氏は、JAXAとの協働があるので日本とのコラボレーションは歓迎で、またゲーム大国とも言われてきた日本からの、新たなハードウェアやゲームプレイの発想も期待しているという。先日、マイクロソフトのホロレンズを活用して、操縦士と整備士に、教科書片手にヘッドセット越しに現実世界に映し出されるコックピットやエンジンを見ながら実践を学ぶというバーチャルと現実のミックスト・リアリティを使ったJALの訓練プログラムの説明を聞く機会があった。日本企業が業務効率化を高める余地はあるという話はよく聞くが、これからはVRはじめとしてバーチャルを業務で活用する機会も増えるのではないだろうか。

 最後に、エヌビディア社がこのゲームやVRと関係あるのか?について。同社はゲーム業界でも使われるグラフィックのエンジンで成長が始まった企業だ。今や彼らはそこで培った経験や技術を幅広い産業で活かし、革命を起こしている。それに重ね合わせて思うに、会社単位でなくともゲーマー自身や彼らをメンバーに巻き込んだチームが、科学技術の発展によって劇的な変化を迎える社会の未来のために、何かをもたらしてくれるのではないかと期待したい。

取材・文/望月奈津子

@DIME編集部

最終更新:6/30(金) 19:10
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