ここから本文です

経営トップが不在となったUber。キーマン入れ替えは吉と出るか

6/30(金) 9:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 ライドシェア最大手であるUberテクノロジーズのトラビス・カラニックCEOが辞任しました。自ら率先して辞任というより、株主の圧力により、辞任させられたといったほうがいいでしょう。

 これは異例の事態です。そもそも、カラニック氏はUber共同創業者。セクハラなど、いろいろ問題とされる企業風土を作り上げた悪しき功績はあるものの、Uberの企業価値を700億ドル(約7兆7900億円)とまで評価される会社に育てた、いわば剛腕経営者であることは事実です。

 カラニックCEO辞任は、自ら創業し、ここまで大きくした会社から「追い出された」に近いものがあるわけです。

 今回のケースでは、カラニックCEO辞任の背景には、株主の圧力があったとされています。

 具体的には、主要5株主が退任を迫ったとされていますが、中でも、主要株主の1社であるベンチマークというベンチャーキャピタルを中心に話が進められたとされています。

 そのベンチマークの中には、ベンチャーキャピタリストとして著名であり、早い段階からUberの将来性を見込んでいたビル・ガーリー氏も含まれています。

 ガーリー氏はUberの取締役を任されていたぐらいですから、カラニックCEO辞任に際し、大変な影響力があった人物と考えれてもいます。

 主要株主が辞任を迫り、カラニックCEO辞任。そしてその翌日、辞任を迫った側であるガーリー氏が、Uberの取締役を辞任する、と報じられました。

 いったい何が起こっているのでしょうか?

 ブルームバーグは、Uber内にガーリー氏の敵が生まれたから辞任する、とする関係者の話を報道しました。

 よくよく考えてみると、Uberは企業価値700億ドルではあるものの、設立は2009年という、生まれてから10年も経っていないベンチャー企業です。創業者CEO中心に会社の風土が生み出され、急成長を遂げてきたベンチャー企業において、創業者CEOを支持する人が多くいるのは当然のことでしょう。

 ガーリー氏はこれまでカラニック氏を支えてきて、取締役でもあった。なのに、カラニック氏批判を始めた。その後、カラニック氏はCEO辞任という結果になってしまった。

 創業者CEOの支持者の目線で考えると、ガーリー氏を敵視したい気持ちも分からなくもないでしょう。

 名物CEOは辞任、Uberの将来を見込んだ著名ベンチャーキャピタリストも取締役辞任。超急成長を遂げたUberの主要メンバーの交代が進んでいます。

◆次期CEOが背負う、2つの大きな課題

 問題を抱えながら、急成長を続けたUber。Uber企業価値700億ドルという評価額は、どれくらい大きな数字でしょうか。

「ユニコーン企業」という言葉を聞いたことがあるかと思います。ユニコーン企業は、非上場企業ながら、企業としての評価額が10億ドル以上のベンチャーを指します。いわば巨額の利益をもたらす可能性のある企業です。

 Uberの企業価値700億ドルというのは、いわゆるユニコーン企業と分類されるための基準の70倍もの数字。

 破格の企業価値。現に、CBインサイツのユニコーン企業価値ランキングにおいて、現在、企業価値で栄光の第1位はUberとなっています。

 そんな、10年経たずにここまで「急成長」した会社も、現時点で、CEO、CFO、COO不在という超異例の事態に陥っています。

 企業風土の原因とされた創業者CEOが辞任したことで、今後、Uberは企業文化を根本的に変えていこうとしているわけです。

 次期CEOには2つの大きな課題とプレッシャーがあります。

 1つ:Uberに新たな企業風土を根付かせること。

 2つ:Uberをこれまで同様、急ピッチで成長させていくこと。

 新規参入も多くある自動車シェアリング市場において、この2つを同時にこなすのは大変な至難の業であるといえます。もうしばらくは厳しい状況がつづくでしょう。

 ただ今後新たな剛腕キーマンが登場すれば、数年後のUberは、企業風土だけでなく、新たなビジネスモデルを持つ「新生Uber」になっている可能性はあります。

 一方、逆に、シェアを獲られて落ちていく会社になる可能性もあります。ベンチャー企業でのキーマン総入れ替えは、劇薬に近いものがあるからです。

<文/岡本泰輔>

【岡本泰輔】

マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。

ハーバー・ビジネス・オンライン