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吉野家HDが9年4か月ぶりに1800円台へ。好調の秘密は?

7/1(土) 9:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 牛丼で知られた吉野家は、年間6,000円分の牛丼をタダで食べられることで株主優待を目当てにする投資家に人気の銘柄である。

 しかし、2008年に株価が大幅に下げたあと、しばらくの間株価自体は低迷を続けていた。例えば、2003年12月に1576円で100株購入した人は、2008年5月9日以降、およそ9年に渡り株価が購入価格を下回っていたということになる。

 とはいえ、最近は、年間配当が一株20.0円で推移しており、100株保有であれば年間配当が約2000円である。株主優待が100株保有で年間6000円なので、配当と優待でトータル年間8000円ある。そのため、株価が購入価格を下回っていたとしても、トータルリターンではプラスを維持できる……と手放さなかった人もいただろう。

 しかし、ここのところ吉野家の株価が、2016年6月の1300円台から上昇基調にあった。そして、2016年12月に1600円を超え、その後も株価は上昇し、2017年6月19日の終値は、1893円である。実に、およそ9年4か月振りの1800円台となっているのだ。

 2017年2月期決算(2016年3月1日から2017年2月28日まで)で、連結売上高が1,886億23百万円(前年同期比1.6%増)、連結営業利益は18億65百万円(前年同期比15.6%増)、連結経常利益は27億50百万円(前年同期比17.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は12億48百万円(前年同期比49.1%増)となっている。(参照:有価証券報告書)

 このように、吉野家の株価が高値更新しているのは、業績が良いからである。

 2017年2月期決算では、原価率が通期36.3%と、前年より1.9%減少した。また、2018年2月期の原価率は前期比1.3%マイナスの35.0%となる見込みである。原価率が減少を続けるのが、現在の吉野家の強みとなっている。

 また、吉野家ホールディングスの増収要因は、主に、「吉野家」と「はなまる」の双方がうまくいっている強みがある。2017年2月期セグメント別売上高前年差異では、「吉野家」が+1,674百万円、「はなまる」が+2,370百万円である。(参照:「2017年2月期決算説明会」)

 「吉野家」の増収の主な要因は、4月に「豚丼」を復活販売したこと、5月には「吉呑み」の店舗を拡大したこと、10月には初めての大型コラボレーション企画として「スーパーフライデー」キャンペーンを実施し、今まで利用機会のなかったお客様の多くの利用があったこと、また、11月には冬の定番商品として、半日分の野菜が摂れる「牛すき 鍋膳」などを販売し好評であったことを挙げている。

 一方、「はなまる」の増収の主な要因は、積極的な出店に伴う店舗数の増加による。駅前や駅ナカなどへの新立地およびショッピングセンター内への出店を引き続き進めていくとしている。季節商品を次々と販売した。6月のとろろと海鮮松前漬けを組み合わせた「海鮮松前ぶっかけ」、8月の冷たい出汁にオクラと針生姜を入れた「はなまる冷だしうどん」、など、次々とである。

 もちろん、課題がないわけではない。「吉野家」に関しては、豚丼復活・地域鍋導入で客数増となるも、客数効果は限定的、商品投入サイクルに課題ありとしている。「吉野家」と「はなまる」以外では、「アークミール」はしゃぶしゃぶ業態の苦戦があり、「京樽」は回転鮨「海鮮三崎港」を出店加速するも人材育成に課題があるとしている。

◆テクノロジーを駆使した「次世代店舗」

 2017年6月19日の終値1893円で計算すると、配当利回り1%、優待利回り3%、PER58倍である。優待銘柄だから、株価が高く評価されている面もあるだろうが、PERは高いと言えるだろう。

 これからの成長自体は、既存事業の収益性改善に向け、各セグメントにおいて新商品開発、店舗オペレーション改善、新たなマーケティング手法をどう導入していくかなどにかかっていると思われる。

 ここで注目すべきは、吉野家もテクノロジーを活用した「次世代店舗」を模索していることである。例えば、吉野家の店舗の食器洗浄プロセスにおいて、ライフロボティクスの協働ロボット「CORO」を導入している。従業員は、シンク下に設置された回転ブラシで食器を軽く洗浄し、食器をコンベア上に伏せて置くと、食器はコンベア上を流れ、食器洗浄機で洗浄される。「CORO」は、食器洗浄機から出てきた濡れた状態の食器を識別し、種類ごとに積み重ねていく。食器洗浄作業を1日2.3時間から0.5時間へと、約78%の工数削減の成果が報告されている。(参照:ライフロボティクス)

 もちろん、株主優待は100株~999株の株主に対して、2月末、8月末の半期毎に10枚の300円サービス券である。同様に、1,000株~1,999株の株主には20枚、2,000株以上の株主には40枚である。株主優待は、日本国内の吉野家、はなまる、アークミール、京樽、グリーンズプラネットの店舗で利用できるとしてまだまだ「お得感」はある。株主優待狙いでの長期保有は、よい選択になるかもしれない。

<文/丹羽 唯一朗 photo by Gunther Hagleitner(CC BY 2.0)>

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