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【テレビの開拓者たち / 福田雄一】当たるものより、当たる“かも”しれないもの? 気鋭のヒットメーカーの作品づくりの極意

7/2(日) 6:00配信

ザテレビジョン

「勇者ヨシヒコ」シリーズ(2011年、2012年、2016年テレビ東京系)や、「スーパーサラリーマン左江内氏」(2017年日本テレビ系)など、ユニークな設定のエンターテインメント作品を作らせたら右に出る者なしの福田雄一が、「週刊少年ジャンプ」の人気コミック「銀魂」の実写版映画で脚本と監督を担当。笑いあり、涙あり、痛快アクションありと、面白さてんこ盛りの内容で、日本映画界に新たな伝説を作り上げることになりそうだ。今でも「KinKi Kidsのブンブブーン」(フジ系)など、バラエティー番組の放送作家としても活躍する福田氏が、脚本家、そして映画監督の道を歩むことになったきっかけや、個性的な俳優の競演が楽しい“福田ワールド”の秘密について語ってくれた。

空知英秋の人気同名コミックを実写化した映画「銀魂」は7月14日(金)公開。ぐうたら侍・坂田金時(小栗旬)らの活躍を描く

■ 自分の中で決心がついた最終的な材料は、妻の浪費癖でした(笑)

――福田監督は、もともとバラエティー番組の放送作家として活躍されていたわけですが、ドラマや映画の脚本を書くようになったきっかけは?

「島本和彦さんの原作を映画化した『逆境ナイン』(2005年)の脚本を書いたことが、僕にとっては大きな転機になったと思います。僕は大学生のころから島本さんの大ファンだったんですけど、なかなか同じ趣味を持つ人が周りにいなくて(笑)。で、本当に偶然なんですけど、『うわー、島本和彦好きなんですか?』って意気投合したのが、羽住英一郎監督だったんです。『ギンザの恋』(2002年日本テレビ系)というドラマの脚本を書かせてもらってるときだったんですが、そのときに羽住さんが『今度は「逆境ナイン」を映画にしましょうよ』って言ってくれて。まだ企画も通っていない段階で、僕は脚本を10稿ぐらいまで書いて、キャスティングまで決めちゃってるという、かなり無謀なやり方だったんですけど、結局映画化が実現したんです」

――まさに力技ですね(笑)。

「そうですね。とりあえず、外堀から埋めていった感じですかね(笑)。実はそのころは、僕が放送作家として一番忙しかった時期で。レギュラーを12、3本ぐらい持ってたのかな? 羽住さんとの打ち合わせも、なかなか時間が決められないくらいだったんです。それで、脚本を脱稿した後ぐらいですかね、羽住さんから『福田さんは最終的に何がしたいの?』って聞かれたんですよ。で、僕が『ドラマや映画の脚本を書きたいです』と答えたら、『だったら、今のままでは無理でしょ』と。これからも脚本を書きたいのであれば、仕事を今の半分に減らして待機している状態を作らないと厳しいよ、とアドバイスをいただいて。でも、そのころは放送作家として、正直、自分でも引くぐらい収入が多かったし、結婚して子供もいたから、すごく悩みました」

――悩んだ末の結論は?

「自分の中で決心がついた最終的な材料は、妻の浪費癖。いくら稼いでもどうせ全部使われるんだったら一緒かなって(笑)」

――すごい理由ですね!!

「うちの妻は恐ろしく金遣いが荒いんですよ。あのころ、相当儲かってたはずなんだけど、気づいたら貯金が1円もなかったですからね(笑)。そのときに、どうせなくなるなら、どうでもいいや、好きなことをやろうって思えたんです。結果的に、座付き作家として関わっていた極楽とんぼやココリコ、(堂本)剛くんの仕事以外は全部断りました。

すると驚いたことに、仕事を整理した途端に連ドラの話が舞い込んできて。それが『独身3!!』(2003年テレビ朝日系)です。あの作品には、当時共同テレビジョンに所属していた森谷(雄)さん(※ドラマ・映画プロデューサー)が関わっていて。そこから僕の初監督作品『THE3名様』シリーズ(2005~2009年、DVD作品)につながっていくんです。僕を最初に監督として使ってくださったのは森谷さんですから。そう考えると、同じ島本和彦好きの羽住さんに出会って、『逆境ナイン』に参加できたことは、本当に大きなターニングポイントだったと思います」

■ かっこよさと面白さ。この二つは絶対に外したくないですね

――福田監督がドラマや映画を作るとき、常に心掛けていることは何でしょうか?

「いつでも『けしからん!』と言われることを目標にしてます(笑)。とにかく、かっこよくて面白いものに惹かれるんですよね」

――「かっこいい」だけではダメなんですね。

「はい、かっこよさと面白さ。この二つは絶対に外したくないですね」

――その志向は、子供のときに見ていたテレビ番組が影響していたりするんでしょうか?

「テレビの影響もあると思いますよ。かっこよくて面白いキャラクターと言ったら、やっぱり『ルパン三世』(1971~1972年ほか日本テレビ系)ですよね。(峰)不二子に振り回されっぱなしで情けないのに、いざとなったらすごくかっこいい。『あぶない刑事』(1986~1987年日本テレビ系)もそう。“あぶデカ”は僕の中で刑事ドラマの金字塔ですよ。普段はふざけている2人が、決めるときはしっかりと決める。僕が作るものも、どこかでその落差を求めているんだと思います。その意味では、今回の映画『銀魂』の主人公・銀時(小栗旬)も理想的ですよね。普段はダラダラしてて、金目のモノに目がない、どうしようもない侍なんだけど、戦ったらめちゃくちゃ強い、という」

――では、「銀魂」の原作コミックも好きだった?

「実は読んだことがなかったんですよ。もちろんとても人気のある漫画だということは知ってましたけど。でもあるとき、うちの高校生の息子が、『「銀魂」を実写化するなら、監督は「勇者ヨシヒコ」の福田雄一がいいんじゃないか、ってネットで盛り上がってるらしい』と教えてくれて。だから、『ヨシヒコ』の世界観に通じるものがあるんだろうなとは思ってました」

――人気のある原作を映画化するということで、プレッシャーはありましたか?

「もちろん、原作ファンの人に怒られるようなものができちゃったらイヤだし、映画がコケたらみんなに悪いし。それなりにプレッシャーは感じていました。今回は、製作費もたくさんもらえたし、キャストもかなり豪華なメンツがそろいましたから、正直どうしようかなと。ただ、僕は普段からあんまり事前にプランを練らないタイプで。今回は、クランクインの前の日に考えたんですよね、どうやって撮ろうかって(笑)」

――それで結局、どのようなプランを?

「結局、全然考えがまとまらなくて(笑)。だからクランクイン当日は、朝出掛けるときから緊張してたんですけど、そんな僕の様子を見ていたうちの奥さんが『雰囲気がいつもと違うやん』と声を掛けてきて。『バジェットもでかいし、そりゃ緊張するよ』って答えたら、奥さんが『「ヨシヒコ」と似てるって言われて始めた企画なんだから、「ヨシヒコ」と同じ感覚で撮ってくればいいんじゃない?』って言うんですよ。その瞬間、ものすごく気持ちが晴れましたね。『そうだね、そうじゃないと「銀魂」に対して失礼だよね』とか言いながら(笑)。でも本当に、あの一言で気持ちが楽になって、ふざけるところはとことんふざけて、真面目にやるところは徹底的に真面目な感じで作っていく、という『ヨシヒコ』と同じような感覚で撮ることができるようになりました」

■ いつまでも遊び心がある役者さんが好きなんです

――映画「銀魂」では、キャストの皆さんも振り切った演技を披露していましたね。

「みんな『銀魂』が大好きなんですよね。(中村)勘九郎さんが素っ裸になるシーンは、最終的にモザイク処理をするので、本当に脱がなくてもいいと僕は思ってたんですけど、ご本人から『脱ぎます!』という申し出があって。すごくシリアスなシーンだから、照明もかっこよくセッティングして絶対に笑ってはいけない空気があったのに、柳楽(優弥)がガマンできずに噴き出して、何度もNGを出して…。3回目ぐらいのとき、さすがに『柳楽~っ!』って叫んだんですけど(笑)。でも、目の前に全裸の中村勘九郎がいるっていうシチュエーションは、そりゃつらいだろうなと思いますよ(笑)。とにかく、あのシーンは勘九郎さんの“銀魂愛”を強く感じました」

――(笑)。主演の小栗旬さんは、勘九郎さんの熱い思いに対して、何かおっしゃってましたか?

「その全裸シーンのときは小栗くんがいなかったので、あとでその話を伝えたら、『今後、続編があって服を脱ぐシーンが出てきたら、僕らも全裸にならないとダメだね』と。そういう本気のスタンスが『銀魂』への礼儀だという思いが、みんなの中に共通概念としてあったんでしょうね。そういう意味では、原作への愛がこもった作品になったのかなと思います」

――今回の「銀魂」でも、いわゆる“福田組”と言われるおなじみの顔触れが続々と登場しますが、常連の俳優さんたちの共通点はどんなところなんでしょうか?

「僕は、いつまでも遊び心がある役者さんが好きなんです。山田孝之や小栗旬は面白いことなら何でもやるというスタンスだし、『銀魂』で敵役を演じた堂本剛もそう。剛くんは、僕とはコミカルなものしかやってこなかったのに、いつもとは違うキャラクターをすごく楽しんで演じてくれましたから。そもそも、『何か面白そうだからやってみようかな』っていうノリで来てくれる役者さんじゃないと、僕の組では耐えられないと思うんですよ。実際、いろんなことをさせられるんで(笑)。

この前、ムロ(ツヨシ)くんたちと飲んでたんですけど、ムロくんがずっと『雄一さんはえらい!』って言ってくるんですよ。『雄一さんは、当たるものをやらないよね。当たる“かも”しれないものをやるよね。そこがえらい!』って。えらいかどうかは別として、確かにそうかもしれないなと思ったんです。だって、どう考えても『(HK)変態仮面』(2013年)っていうタイトルの映画が当たるとは誰も思わないじゃないですか(笑)。でも、その分、それが当たったときの喜びは大きいわけで。僕は子供のころ、プロゴルファーになるのが夢だったんですけど、昔から、ゴルフで一番ワクワクする瞬間は、林の中からピンそばに寄せるときだったんですね。フェアウェイから寄せても当たり前だけど、林の中から打って成功したらヒーローじゃないですか。その感覚からいまだに抜けきれてないんですよ。いわば、映画やドラマを作っているときも、常に林の中から打っている感じなんです(笑)」

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