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クルマの傷からニーズ発見!? 成約率6割のスゴ腕営業、ケタ違い提案力はなぜ?

7/2(日) 11:10配信

NIKKEI STYLE

パイオニア・渡辺勇人さんの「売れる営業 私の秘密」

 パイオニアは業務用車両向けのサービスに力を入れている。その中の運行管理サービスの営業は20人ほどが担当する。提案した件数に占める成約の比率は平均で約3割だが、渡辺勇人さん(33)は6割と突出する。「気になったら調べずにいられない」好奇心の強さが提案力につながっている。介護業での採用実績が好例だ。

 パイオニアの運行管理サービス「ビークルアシスト」はクラウドコンピューティングを使い、カーナビゲーションシステムを通じて業務の指示や安全運転の注意喚起ができる。渡辺さんが所属する本社(東京・文京)のカーソリューション部が主に営業している。

 ビークルアシストの売上高の1割ほどをデイサービス(通所介護)関連が占めている。関東地区を担当している渡辺さんがそのきっかけをつくった。

■小さな傷 見逃さず、デイサービスの会社に攻勢

 2015年10月。当時の勤務地だった大阪市内で営業車を運転する道すがら、デイサービスの車両を多く見かけることに気づいた。運転手は女性が多く、よく見るとバンパーに小さな傷が目立った。

 知りたい気持ちを抑えられず、業界団体のホームページからデイサービスの会社をリストアップして順番に電話をかけた。「車載機器の開発に役立てたいのでぜひ話を聞かせてほしい」。売り込みだと怪しむ相手を説き伏せ、何とか面会の約束を取り付けた。

 聞くと人手不足で専任の運転手を雇えず、介護スタッフが自ら運転していた。介護スタッフには女性が多い。送迎する高齢者は日々違い、紙の地図を見ながら道順を確認する。道順を気にして安全運転がおろそかになった結果が、バンパーの傷に現れたという。

 その場で渡辺さんは運行管理サービスを応用すれば解決できると感じた。送迎する高齢者を管理者がパソコンで指定するだけで最適な道順をカーナビゲーションシステムに示すサービスを、その会社に提案した。

 会社が利用を始めると効果は絶大だった。介護スタッフに「道順を覚える負担から解放された」と喜ばれただけでなく、経営者にも「事故が減って保険料が安くなった」と歓迎された。「介護スタッフの負担が減ったことをPRでき、新規の採用がしやすくなった」とも言われた。

 運行管理サービスは主に物流業のトラックなどへの採用を狙って開発したが、デジタルタコグラフ(運行記録計)やスマートフォンなどと競合し、思ったようには需要が伸びていなかった。デイサービス業界で評判が広がり、次々と新規の契約につながった。

 渡辺さんはふだんの商談で顧客の業務内容を詳しく聞くことを欠かさない。製品やサービスより先に顧客の仕事の話から始める。1日の業務の流れを聞き出す中で、顧客が抱える課題がはっきりしてくるからだ。

 走行時に映像を記録するドライブレコーダーが人気だが、導入したいという顧客にも、どんな課題を抱えているのかをまず聞き出す。事故を減らしたいならドライブレコーダーだけでは効果が少ない。運転手の癖などを分析して指導できるシステムを提案する。

■顧客に精通、優れた提案の武器に

 ぼんやりしていた顧客の課題を明確にすることは「社内での説明の説得力が増し、決裁を得やすくなる効果もある」という。上司である栄秀樹課長(48)は「顧客の業務に精通しているため優れた提案ができる」と渡辺さんを評する。

 渡辺さんの興味は尽きない。今は家庭向けの電力やガスの小売り自由化が気になる。電力やガスの営業車に運行管理サービスを導入できるのではないかと思い、ヒアリングを始めたところだ。
(河合基伸)
[日経産業新聞2017年6月7日付の記事を一部再構成]

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最終更新:7/2(日) 11:10
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