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「ユーロ危機再燃」が免れないこれだけの理由

7/2(日) 15:00配信

東洋経済オンライン

 改革に前向きな中道派のマクロン氏がフランスの大統領となり、ドイツのメルケル首相再選の可能性も高まってきた。問題だらけの統一通貨ユーロに展望が開けてきたようにも見える。

 だが、ユーロ圏経済の今後10年間の見通しは、低成長が続き、債務危機が発作的に繰り返される可能性のほうが高い。財政・金融の枠組みの統合といった安定化策が進展しなければ、ユーロ崩壊の確率は一段と高まる。

■統一通貨ユーロというおりの中で

 確かに短期的に見れば、楽観論にも根拠はある。ユーロ圏経済はこの1年間、循環的な景気改善の恩恵を受け、どの先進国よりも期待を上回って成長している。

 だが、ギリシャ経済は今もほぼゼロ成長だ。イタリアもギリシャほどひどくはないが、褒められた状況ではない。実質賃金は、この10年で下落している。

 南欧諸国はいわば統一通貨ユーロというおりの中で捕らわれの身になっている。厳格な財政・金融規律を課されたうえ、為替調整という経済的ショックを吸収する手立てまで失ってしまったのだ。

 英国経済が昨年の国民投票でEU(欧州連合)離脱を決めた後も堅調を保っていられるのは、英ポンドが急落し、交易上の競争力が増したのが一因だ。英国がユーロを採用しなかったのは賢明だった。

 今や統一通貨が必ずしもEUを成功に導くものでなかったことは明らかだ。それどころかユーロは巨大な阻害要因になっている。


 欧州の官僚たちは、欧州統合を自転車に例えてきた。前進し続けなければ倒れるのだと。だとしたら、時期尚早にも統一通貨を採用したことは、近道をして乾いてもいないセメントに深くはまり込んだということになりそうだ。

 皮肉なことに、1980~90年代にかけて、統一通貨の導入は南欧諸国で広く支持されていた。一般市民が物価安定を望んでいたからだ。だが、ユーロ圏の外では、統一通貨なしでも物価上昇率を抑えることができている。

 物価安定にとってはるかに重要なのは、独立した中央銀行の存在だ。仮にイタリアやスペインがユーロを採用する代わりに、中央銀行に強い独立性を与えていれば、それで低インフレは実現できただろう。ここまで債務問題が悪化することもなかったかもしれない。

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