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ダム建設でアマゾン先住民の暮らしが消えてゆく

7/3(月) 17:53配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 熱帯の生態系は、外部からの干渉を受けるともろく、壊れやすい。熱帯雨林は「地球の肺」と言われ、その呼吸は気候や天候、そして地球上に生きる全ての人間に影響を与える。

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 では、アマゾンに開発の手が入り、木々が切り倒され、道路が舗装され、ダムが建設されると、何が起こるのだろうか。

 アーロン・ビンセント・エルカイム氏は写真家としてのキャリアのほとんどを費やして、開発の脅威にさらされている先住民や、彼らが先祖代々受け継いできた土地の物語を伝えている。2014年、エルカイム氏はブラジル北部パラ州を初めて訪れ、シングー川に建設中のベロモンテ・ダムが、この土地に頼って暮らしている2万5000人以上の先住民たちにどのように影響するのかを目の当たりにした。

 ブラジル政府は開発と成長を促すため、この地域にさらにあと40基のダム建設を計画中だ。しかし、シングー川をせき止めれば、数百年にわたってこの土地から糧を得て、その環境を子孫のために守ってきた人々の暮らしを損なうことになると、エルカイム氏は危機感を抱く。「アマゾンの森林破壊を食い止めるという点で私たちは大きな前進を見せましたが、私にしてみればこのダム建設は、未来を守るのではなく、破壊の象徴なのです」

 1975年にベロモンテ・ダム計画が持ち上がって以来、アマゾンに住む16の先住民部族が、ダム湖によって住む土地が奪われるとして、建設に反対してきた。その後、居住地の一部を残し、猟場だけが影響を受けるよう修正が加えられ、2011年に計画は再び前進を始めた。2019年に予定通り操業が始まれば、ダムは1万1233メガワットを発電し、世界第4位の水力発電ダムとなる。新たなエネルギーは、この地域の開発に拍車をかけるものと見られている。

 これに対して複数の訴訟が起こされており、先住民社会への補償が争点となっている。2016年、近隣住民への安全が十分に確保されていないとして、ダムの所有者であるノルテ・エネルヒアと政府に対し、27万5000ドルの罰金が命じられた。その他の訴訟でも、水没面積がそれほど広範囲にならないように発電所を全稼働させない約束をするなどの譲歩が引き出された。

 ダム周辺では、既に水没が始まっているところがある。数回にわたって建設現場や川を訪れているエルカイム氏は、幅広くなった川岸に石を並べてダム反対のメッセージを書いているムンドゥルク族に出会った。人々は既に、流域の変化に適応し始めている。流れ込んできた水で洗車をする人や、かつては乾いた土地に立っていた枯れ木に上る少年たちもいた。

 政府は、計画が完全にひっくり返らない範囲で抗議者に対する譲歩を続け、一連のダム建設を前進させている。なかには、文化的に重要とされた土地もあり、開発会社はそこを避けて計画を修正するよう求められた。ダム会社のノルテ・エネルヒアは一部の住民に対し、近くの町アルタミラにある新興住宅地への引っ越し費用を支援しているが、雇用をもたらすわけでもなく、地域社会への貢献もほとんどない。エルカイム氏は、移住した先ではアルコール中毒や犯罪が多いという話を聞かされた。

 水はあらゆるものを洗い流してしまうものだ。エルカイム氏は現地へ繰り返し足を運び、ダムがもたらす影響や、脅威にさらされている人々をカメラに収め続けている。そして、自分の写真が世界中の人々の目に触れ、アマゾンとそこに住み続けている人々への思いをかきたてることができればと願っている。

文=Daniel Stone/訳=ルーバー荒井ハンナ

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