ここから本文です

グループメールアドレスだけで差出人のないメールがダメな理由

7/3(月) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 差出人が個人名でないメールが増えている。いわゆるグループメールアドレスで、soumu@xxxx.co.jpやcustomer@xxxx.co.jpといった、部門のメールアドレスで、そのメールアドレスには部門の複数のメンバーが登録されている。

 差出人はグループメールアドレスだが、差出人名として、担当○○、電話番号XXXXというように、個人名を書いているメールもある。しかし、差出人名として、総務部とか、顧客サービス部というように、部門名のみ記載されているものもあるし、中には、差出人名が何も書かれていないメールも散見されるようになった。

 差出人名に個人名を書くメールが少なくなっており、部門名を書くだけだったり、差出人名を何も書かなかったりするメールが増えているように感じている。私は、この現象に、日本のビジネスパーソンのモチベーション低下と責任感低下の兆候を感じてしまう。

◆責任所在が曖昧なメールが、受信者を惑わす

 分解スキル反復演習は、その90%が参加者同士の演習で構成されているので、その参加者は意欲があり自律性がある人がほとんどだ。演習参加者に聞いてみると、差出人に個人名がかかれていないメールについては、次のように感ずるケースが多いようだ。

○「部として出していますので、このメールに問題があっても、私個人には何の責任もありません」と言っているように思える

○「問い合わせがあれば、部として対応しますので、個別に質問して来ないでください」という意思表示をしているようだ

○差出人が部門名で、個人名が書かれていないと、単純に、誰が言っているのかがわからず、不安に思う

○実際には担当者がいるはずなので、その担当者が名前を表示できないとすれば、何か後ろめたいことがあるのではないかと勘繰ってしまう

○差出人が部門名だと、組織の力で相手にプレシャーを与えているように思えてしまう

○部門名で送信されるメールの担当者は、やる気がないのではないかと思えてしまう

 個人のパフォーマンスを高めることに貪欲で、モチベーションが高く責任感の強い、分解スキル反復演習参加者の声なので、特段、過敏なのかもしれないが、多かれ少なかれ、そのような印象をもたれてしまうようだ。

◆グループメールアドレスは抜け漏れ防止に役立つか

 一方で、個人名ではなく部門名で発信したい人々には、次のような言い分があるようだ。

○発信する部門内で情報の抜け漏れがあってはならないので、グループメールアドレスから受発信する

○送信してもらう場合には、宛先に担当者名を入力する手間が省け、部門名だけでよいので、利便性がある

○そもそも仕事は組織で進捗させるものなので、部門メールアドレスをさらに普及しなければならない

 私には、むしろ、グループメールアドレスの方が、発信や受信の責任の所在が不明確となり、抜け漏れのリスクは大きいように思えてならない。確かに、個人名ではなく部門名だけ入力すればよいグループメールアドレスは、入力の利便性があるかもしれない。しかし、オートコンプリート機能を用いれば、入力の手間は省ける。

「仕事は組織で進捗させるものだ」という側面があることは確かにそのとおりだと思う。しかし、私は、組織運営というものは、個人のパフォーマンスの集積だと考えているので、個人の自立性と責任性の高さなくしては高まらないと思えるのだ。だとすれば、グループメールアドレスでの発信は逆効果だと思えてならない。

◆合理性か、巻き込み効果か

 そもそも、差出人そのものに何の記載もないメールについて、その理由を差出人に聞いてみたら、「差出人メールアドレスで誰が送信したかわかるので、わざわざ差出人に名前を記すことは時間の無駄だ」という答えが返ってきたことがある。

 私には、差出人の合理性と、そのメールの受け手を動かす効果ということを考えると、日本のビジネスパーソンの受け取り方は、いまだ後者を重んじなければならない状況だと思えてならないのだ。

 メールには、組織で対応するものであろうと、個人で対応するものであろうと、差出人の個人名を書く。そして、個人のメールアドレスと、電話番号を記す。質問や問い合わせが来たら、個人でしっかりと受けて回答する。このような基本的な行動なくして、パフォーマンスの向上とビジネスの伸展はあり得ないと思えてならない。

※分解スキル反復演習型能力開発プログラムは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第39回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、リブ/コンサルティング組織開発コンサルティング事業部長。。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

ハーバー・ビジネス・オンライン