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中国No.1トーク番組もやられた! 習近平「検閲」最新事情 - 李小牧(り・こまき) 元・中国人、現・日本人

7/3(月) 16:48配信

ニューズウィーク日本版

<人気の3サービスに下った「ネット動画を全面改正せよ」との通達。出演した番組が放送されなかったり消されたりといった実体験を交え、検閲事情をお伝えしよう>

今回は、中国ではお馴染みの「検閲」の話。習近平政権になって検閲が厳しくなったと言われるが、習政権もまもなく5年。最近の検閲事情はどうなっているのか、気になっている人も多いだろう。私の実体験を交えてお伝えしたい。

私は最近、中国での活動が増えている。以前にもこのコラムで紹介したが、中国人の多くが「日本で選挙に出馬した元中国人」に興味津々なのだ。私も民主主義の素晴らしさを伝えたいと願っているので、テレビやネットの番組出演の要請にはできるだけ応えるようにしているが、その前に立ちはだかるのが検閲である。

6月22日、中国政府のメディア統括部門である国家新聞出版広電総局が突然、新浪微博、AcFun、鳳凰網の3サービスに対して、ネット動画業務を全面改正するよう通達を下した。

3サービスは「情報ネット電波動画番組許可証」を保持していないにもかかわらず、大量のネット動画を配信していた。しかも動画には、国家規定に合わない時事政治系や社会に対してネガティブな見方をする評論が含まれていたというのが理由である。

許可証が必要というのも面倒な話ではあるが、ネガティブな社会評論が許されないというのも困った話だ。「諫言、耳に痛し」と言うではないか。私を含め、ジャーナリストが社会批評をする時には手厳しく批判するのが常。褒めたたえるばかりでは批評にならない。

しかし、政府の通達は絶対だ。鳳凰網は時事政治系番組のネット配信を中止してしまった。その1つ、中国ナンバーワンのトーク番組である「鏘鏘3人行」に私は度々ゲスト出演しているのだが、この番組も、私が出演した回を含めすべてのバックナンバーのネット公開を停止した。

せっかく頑張って話した内容が当局のお叱りひとつで存在を抹消されてしまう。中国で言論に携わる者として避けては通れない問題とはいえ、やりきれない気持ちになってしまう。

問題は過去の番組だけではない。私が出演したあるテレビ番組は、収録から1カ月以上が経つがいつまで待っても放送されない。このままお蔵入りになってしまうのだろうか。他にも2本、放送されないネット番組がある。残念だが、ギャラは振り込まれたのでまあよしとするしかないだろうか(笑)。

【参考記事】中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!



今秋の党大会が終われば、検閲はゆるむ?

さて、「鏘鏘3人行」は検閲ぎりぎりのラインに踏み込むことで知られる番組だ。いや、ぎりぎりどころかスタジオではとても放映できないような内容が飛び交う。日本ならばピー音を入れるところだが、中国の検閲手法は独特だ。安徽省の景勝地、黄山にある有名な大木「迎客松」の画像を表示し、のどかな音楽を流して過激発言を消すのだ。

「テレビ信号伝達の故障です。少々お待ちください」というメッセージが添えられていることも。他にも突然広告が入るというパターンもあるようだ。中国では契約すると、衛星放送でNHKなど海外の番組が見られるようになるが、天安門事件関連などの「敏感」な話題となると、画面がブラックアウトしてしまう。そのもう少しのどかなやり方が「迎客松」というわけだ。

鏘鏘3人行を見ようとしたら、番組すべてが検閲で見られなくなっていたとネット掲示板でぼやく中国ネットユーザー。故障とのテロップが入っているが、番組終了時間になるとたちどころに故障は直ったという

丁々発止のやりとりが続いたかと思うと、突然、松の写真が映し出されるのだから異様そのものとしかいうほかない。まあ一部のファンはそれを楽しみにしているようだが。

ともあれ、ぎりぎりのラインを探りながらも、この番組は存続してきた。初放送は1998年という超長寿番組だ。それがここに来てバックナンバーのネット公開停止という危機に追い込まれたのはなぜか。

背景にあるのは「政治の季節」である。今秋、中国共産党は党大会を開催する。党大会で第2期習近平体制の顔ぶれが発表されるわけだが、今は人事をめぐり最後の暗闘が続いている状況なのだ。誰かの失点になるような内容を放送すれば一気に責任問題となる。それだけに検閲は一気に厳しくなっている。

党大会が終われば、少しはこの検閲もゆるむのではないか。いや、たんにゆるめるだけではなく、本当の意味での改革を進めるべく言論の自由をもう少し認める方向に変わるのではないか。変わってほしい、私はそう願っている。

というのも、実は今、私の半生を映画化するプロジェクトが中国で動いているからだ。主演候補になっているのは日本人なら誰もが知っているあの中華系の有名俳優だ。発表できるタイミングがくれば皆さんにもご紹介したいが、その前にまずクリアしなければならないのが検閲である。

中国では映画の検閲は厳しく、プロジェクト申請時、台本完成後、そして完パケ後と3回の審査が必要となる。テレビやネット番組同様、映画の検閲も強化されているわけだが、この厳しい基準が続けば私の映画がいつになったら完成するのか、わかったものではない。

とまあこうした個人的な事情もあるのだが、それ以上に民主主義国・日本で暮らす人間として、中国の人々にもその素晴らしさを味わって欲しいという思いが強い。私が日本で得た経験を、自由に中国の人々に伝えられる時代が来ることを祈っている。

【参考記事】中国SNSのサクラはほぼ政府職員だった、その数4.8億件


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李小牧(り・こまき)

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