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不妊治療と、子どもの発達障害リスク…日本では知らされない大問題

7/3(月) 8:50配信

女子SPA!

 不妊治療…30~40代の女性にとっては、気になる言葉ではないでしょうか。

 実際、不妊治療を受けるカップルは急増しています。ですがどんな医療にもリスクはつきもの。実は不妊治療にも、大きなリスクがあるのに、それが患者に知らされていないというのです。

 そのショッキングな実態に迫る『本当は怖い不妊治療』を上梓した、ジャーナリストの草薙厚子さんに聞きました(同書の監修は黒田優佳子医師)。

 リスクについて聞く前に、まず基礎知識を。「不妊治療」に使われる医療技術である「生殖補助医療」には、次の3つの受精法があります。

①人工授精:精子を子宮内に送り込むだけの方法

②体外受精:体外に取り出した卵子に精子をふりかけて、精子が自力で卵子に侵入するための環境を整え、培養液内で受精させてから子宮に戻す方法

③顕微授精:体外に取り出した卵子に顕微鏡を用いて極細のガラス針で人為的に1匹の精子を穿刺注入し、受精させてから子宮に戻す方法

◆生まれた子が自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍

――この本の中で一番衝撃的だったのは「顕微授精に代表される生殖補助医療によって生まれた子は、そうでない子に比べ、自閉症スペクトラム障害であるリスクが2倍である」という研究結果でした。

草薙:私が取材を進めていく中で、この記事を見つけたのですが、この研究結果は、2015年3月にアメリカの権威ある学術誌に掲載されて世界にショックを与えたものです。しかし、なぜか日本ではほとんど報道されていないのです。

 その内容はコロンビア大学のピーター・ベアマン教授が行った研究で、もとになったデータはアメリカ疾病対策予防センターによる大規模な疫学調査です(※)。日本でニュースにならなかったのは不思議に思います。

――自主規制するようなデリケートな部分があるのでしょうか。

草薙:最近、よく耳にする機会が増えた自閉症スペクトラム障害は発達障害のひとつで、なかなかデリケートな問題ではあると思います。

 自閉症スペクトラム障害は、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心に強いこだわりがあるのが特徴で、知的障害をともなうこともあります。軽度だと、ふつうに社会生活できる人もたくさんいらっしゃいます。また、関連書物も数多く出版されていますから、一般的に以前より知識と理解が深まっていると思います。

 私は1990年代から少年事件の取材をしてきて、自閉症スペクトラム障害が事件の要因の一つになるケースが多いと感じていたんですね。たとえば、神戸連続児童殺傷事件(1997年)を起こした「少年A」は、少年院で自閉症スペクトラム障害と診断されています。

 ただし、いつも取材を受ける際は強く訴えているのですが、自閉症スペクトラム障害だから事件を起こすのではなく、誘発要因の一つである可能性があるということです。

 ですから、早期発見・早期治療によって、周りで支援をすることが大事なポイントなのです。

 そんななかで、「生殖補助医療で生まれる子は、自閉症スペクトラム障害のリスクが2倍」という研究結果を聞いて、関心を持ったのがこの本を書いたきっかけです。

 もちろん、これも生殖補助医療そのものが問題だと言いたいわけではなくて、そのリスクを知ったうえで、どの不妊治療の方法を選択していくかを決めるべきだと思うんです。

◆不妊クリニックは、ほとんどリスクを説明していない

――その「リスク2倍」という研究には、「顕微授精に代表される~」とありますが、顕微授精をする人は多いんでしょうか。

草薙:多いようですね。取材によると、不妊治療の約80%が顕微授精だそうです。

 みなさん、生殖医療を「体外受精」って呼びますけれど、その違いを理解していない方が多い。①人工授精と②体外受精は、精子が「自力で」受精するわけです。でも③顕微授精は、精子を人為的にひとつ取り出して、卵子に直接針を刺して注入するから「他力」なんですね。

 自力と他力は、実は受精卵ができる過程で大違いなのです。

 顕微授精の場合は、卵子に針で精子を入れるから、授精はしやすい。ですので、クリニックでは顕微授精を勧めることが多いです。そのクリニックでの受精率・妊娠率を上げることができますから。

――そのとき、クリニックでは、顕微授精のリスクを説明しないんですか!?

草薙:取材ではほとんどのクリニックは説明していないようです。取材中、クリニックや生殖医療の権威の医師からも「顕微授精は安全ですよ。何も心配ないですよ」という答えが返ってきました。厚生労働省も日本産科婦人科学会も、リスクのことは何も触れませんでした。

 そもそも、日本には生殖医療について、法律もきちんと整備されていないし、曖昧なガイドラインしかなくて驚いたんですね。

 国もある程度現状は把握しているはずですが、今の状況は治療を受ける側ではなく、クリニック側を中心とした流れになっているのではないかという疑問があります。不妊治療は夫婦の人生を左右する大事な問題なのですから。リスクをきちんと説明した上で実施すべきではないかと思います。

 今回、本を監修してくださった黒田優佳子先生は臨床精子学を専攻する極めて珍しい産婦人科医師で、精子側の視点から顕微授精のリスクを危惧しています。黒田先生から見ても、「不妊治療に伴うリスクについての説明が不十分ではないのでしょうか」ということなのです。

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 ショッキングな不妊治療の実情…。でも、なぜ生殖補助医療で、生まれてくる子どもに先天異常があるリスクが高まるのでしょうか? 次回は、不妊治療現場の驚くべき実態を草薙さんに伺います。

※当該論文は「American Journal of Public Health」に掲載。

アメリカ疾病対策予防センターの統計(カリフォルニア州で1997~2007年に生まれた590万例の小児の調査)を元に分析されている。

 また、米医学誌『JAM』(2013年7月3日)に掲載された論文では、スウェーデンで出生した250万人を10年間追跡調査した結果、顕微授精は体外受精に比べて、自閉症や知的障害リスクが高まることが報告されている。

【草薙厚子さん】

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『少年A矯正2500日全記録』『子どもが壊れる家』『本当は怖い不妊治療』などがある。

<TEXT/庄司ライカ、女子SPA!編集部>

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最終更新:7/3(月) 8:50
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