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声優ファンの心を掴む!多様化するオーディオブックの世界

7/3(月) 16:00配信

週刊SPA!

 日本最大のオーディオブック配信サービス「FeBe」を運営する株式会社オトバンクが月額750円のオーディオブック聴き放題アプリ「audiobook.jp」を6月26日にリリースした。

 書籍などを音声化し“聴く本”と称されるオーディオブック。その市場はアメリカでは2000億円にものぼり、書籍の5~10%をオーディオブックが占めているとされている。日本国内の市場は現在50億円程度に留まっているものの、その潜在市場は最大1000億円規模ともいわれ、急成長を続けている。

 読書のためにまとまった時間を確保しにくい中、電車や就寝前といったスキマ時間にスマホなどで電子書籍を読んでいるという人は、決して少なくないだろうが、“ながら聴き”という新たなコンテンツ体験ができるオーディオブックは、日々の情報収集や読書における第三の選択肢となりえるのか。

 2016年から2017年にかけての一年間で登録者数を5倍に伸ばした「FeBe」の動向から探る。

 オーディオブックは黎明期から多忙なビジネスマンに利用されるケースが多く、自己啓発本やビジネス書ばかりといったイメージは未だ根強い。実際、オトバンクの広報担当・佐伯帆乃香氏も「昨年のビジネス書単行本ベストセラー(株式会社トーハン)ベスト10のうち、9作品がFeBeで現在配信されています。お目当のビジネス書はほぼオーディオブック化されていると考えてもいいかもしれません」と語るように、いま現在もビジネス書がオーディオブックの売れ筋のカテゴリとなっているのは事実のようだ。

 しかし、近年FeBeでは文芸作品の新作タイトルを継続的にリリースしている。6月末現在、FeBeのサイトをざっと覗いてみるだけでも、7月に映画化される『君の膵臓を食べたい』(住野よる著、双葉社刊)、85万部のベストセラー『おやすみ、ロジャー』(カール=ヨハン・エリーン著、三橋美穂監修、飛鳥新社刊)、芥川賞受賞作『火花』(又吉直樹著、文藝春秋刊)といった、書店で平積みされているような有名タイトルが数多く見受けられる。ラインナップが充実するにしたがい、ライトユーザーの増加などその層はより厚くなってきた。

「特に文芸作品が充実してきたことで、女性ユーザーが顕著に増加しました。利用されるシーンも実に様々でランニングなどの運動中や通勤などの移動中、子育て中のお母さんが子供を寝かしつける際、真っ暗な部屋でオーディオブックを聴いているという声もあります」(同)

 また、年齢層も幅広く全世代的になっており、老眼で本を読むのがつらいという人が、散歩しながらオーディオブックを聴くのを日課にするようになったケースもあるという。

◆あの人気声優も参加

 文芸作品をオーディオブック化するにあたり、企画段階から原作の魅力や世界観を表現するための様々な工夫が、従来のビジネス書以上に必要とされるようになり、単なる“音声化”に留まらない、独自のコンテンツとしてもオーディオブックの存在感は増しつつある。

「例えば浅田次郎さんの時代小説『一路』(中央公論新社(中公文庫)刊)は、今となってはネイティブで話せる人はほとんどいない“江戸弁”が多用されている作品で、オーディオブックにする際はできるだけ忠実に江戸弁を再現するため落語家の林家たけ平さんを朗読者に起用しました。また、岩波少年文庫の作品はお母さんが子供に読み聞かせしているというコンセプトで音声化しているため女性声優が一人で朗読しておりますが、こちらも好評を得ています」(佐伯氏)

 さらに、対話本の類は音声ならではの強みが発揮されるジャンルだ。文字だけではできなかった表現も可能だ。

「アドラーの『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社刊)は“哲人”と“青年”の二人による対話で物語が進む形式で、それぞれキャスティングして二人の掛け合いを再現しています。イヤホンで聴くと目の前で問答を繰り広げているかのような臨場感があり、作品世界に引き込まれます」(同)

  当然ながら音声化する上で朗読者のキャスティングは、やはり重要な要素となっているようだ。

 『世界から猫が消えたなら』(川村元気著、マガジンハウス刊)では小野大輔、氷上恭子。『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉著、小学館刊)では、松井恵理子、浪川大輔、白井悠介といった人気声優が参加しているほか、『火花』の堤真一や『海賊とよばれた男』(百田尚樹著、講談社刊)の中村雅俊や國村隼など人気俳優が朗読するものもある。

「ツイッターで有名になった筋トレ社長のつぶやきをまとめた筋トレ系自己啓発書『筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法』(Testosterone著、U-CAN刊)は、オーディオブック化した時にあの“シュワちゃん”の吹き替えで有名な玄田哲章さんを起用し、ツイッターなどを中心に大きな話題となりました。ほかにも、松下幸之助さんの名著『道をひらく』を声優の大塚明夫さんでオーディオブック化したり……。基本的には原作の世界観にしっくり合うかどうかが大事なポイントなんだと思います」(同)

 ちなみに先述の『一路』は上・下巻で約20時間に及ぶ大作だが、オーディオブックの収録は作品時間の3倍以上の時間が掛かるのが普通だそうで、長丁場で大変な分、物語に深く携わる“朗読”にやり甲斐を感じるベテラン声優も多いのだとか。

 もちろん、声優ファンにとっては長時間好きな声優の朗読に浸れるオーディオブックが、大きな魅力を持っていることは言うまでもない。

◆定額制の聴き放題アプリで読書体験がより手軽に

 主体的に読むとなるとそれなりに集中力も必要だが、少なくとも聴くだけなら古典的大作なども比較的とっつきやすくなる。一概には言えないが、人や作品によっては聴く方が早く頭に入るという場合もあるだろう。

 存在は知っていても実際に試したことがある人は、まだまだ少ないオーディオブック。今回の聴き放題サービスを提供するスマホアプリ「audiobook.jp」のリリースには、オーディオブックが初めての人にも気軽に試してもらいたいという狙いがあるようだ。

 オーディオブックが新しい本と出会うきっかけや、本や映像とはひと味違う新たなコンテンツ体験として、当たり前に存在する日もそう遠くないのかもしれない。

<取材・文/伊藤綾>

日刊SPA!

最終更新:7/3(月) 16:00
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