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140試合連続フル出場。大記録をもたらした中澤佑二「自分を動かす」力

7/4(火) 12:12配信

BEST TIMES

■徹底したコンディショニング

  39歳で達成した快挙は、長くプレーしたから達成できた、という類のものではない。アスリートにとってはむしろ、齢を重ねるにつれハードルが上がるものだと言える。

 横浜Fマリノス、中澤佑二選手の連続フル出場記録だ。

 J1第17節、大宮アルディージャ戦に先発し、ピッチで勝利のホイッスルを聞いた中澤選手は140試合連続で90分間を戦い抜き、フィールドプレイヤーで歴代1位の記録を打ち立てた。

 日本代表として、アジアを代表するセンターバックとして、長きにわたり一線で活躍を続ける中澤選手の秘密に、徹底されたコンディショニングがあることはサッカーファンであればよく知るところだろう。お酒は一切口にせず、食事にも徹底的にこだわる。寿司のシャリがあまりに小さくて驚いたことがあった。それ以外にも、朝起きる時間、寝る時間など試合で戦うための体づくりに余念がない。2013年に『自分を動かす言葉』という中澤選手の書籍を担当した。取材をしながら、ふと時計に目をやった中澤選手が申し訳なさそうに言ったことがあった。

「すみません、そろそろ帰らないと夕飯の時間に間に合わないんで」

 あとでマネージャーが教えてくれた。

「食事の時間も、寝る時間から逆算して決まってるんです」 

 そんな中澤選手にはもうひとつ、秘密がある。

■逆境を跳ね返す「言葉の力」

「言葉」に対して敏感であることだ。『自分を動かす言葉』はまさにそれをテーマにした書籍だった。本書のはじめに、にはこうある。

『サッカー小僧だった僕――ただうまくなりたい、試合に勝ちたい、世界を目指したいとグラウンドで四苦八苦していただけの――が「言葉」を意識し始めたのは2007年ごろだった。振り返ってみると、それ以前にも僕の中にたくさんの「言葉」が息づいていることに気が付いた。(中略)多くの言葉が、時にくじけそうになっていた僕を奮い立たせ、時に喜びに包まれていた僕をさらに何倍も喜ばせ、明日へのモチベーションを上げていってれた。(中略)時に思う。言葉には力があるのではないかと。苦しいと時も、楽しい時も、自分を前に進めてくれる「自分を動かす」力だ。今でも僕は、特に自分に対してネガティブな感情が湧いてきた時に、「言葉」に救いを求めている。新しい本を読んだり、これまで読んだ本を読み返したり、なんとなくネットで言葉を探してみたり……』

 大記録のかげには、多くの苦労があったはずだ。そんなとき、中澤選手は「言葉」の力を求め、自身の力に変えていった。
 本書の最初に記された「言葉」は『成功ではなく成長を目指す』だった。以下、引用してみる。

『僕のサッカー人生を表していると思った言葉がある。

「人生において『成功』は約束されていない。しかし人生において『成長』は約束されている」

 これは田坂広志さんという多摩大学の教授の方が書いた『未来を拓く君たちへ』(くもん出版)という本で出会った言葉だ。大げさな言い方かもしれないけど、僕はこの言葉は人生の真理を突いているように思っている。

 世の中、思い通りにはいかないのは、ほとんどの人が身に染みて感じていることだろう。
 僕らサッカー選手にとって成功とは、結果であり、優勝やゴールといった華々しいものだが、僕自身、今までのサッカー人生において、そう簡単に結果が出たためしなどない。
 一方で、週末の試合で得点をしたり、活躍したりする選手が、実は大して練習をしていなかったなんてことはよくある話だ。
 そんなとき、「なぜあいつが……」と思ってしまうのが人間のさがであり、僕も少なからず、嫉妬心にさいなまれた時期がある。特に自分自身が人よりも努力していると自負していればいるほど、「自分はずっと居残り練習をしてきたのに、何で活躍できないんだ」とか「何で俺は点を取れないんだろう」と悩んでしまうのだ。

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