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天才とはこういうこと。──時代のいろいろな顔を語るプライベートな視点たち

7/4(火) 18:10配信

GQ JAPAN

ポール・マッカートニーの武道館公演に行った小田嶋隆。鋭い視点とキレのある文章でおなじみのコラムニストも、天才を前にしてミーハーな中学生に戻った。

【 ジーンズの天才は日本に教わった 】

ポール・マッカートニーの日本公演に行ってきた。実は昨年の公演にも駆けつけている。われながらミーハーで恥ずかしいのだが、こればかりはどうしようもない。中学時代にファンだった対象については、一生大人になれない。ビートルズやボブ・ディランを前にしたら最後、私は永遠の中学生なのである。

不思議なもので、高校時代にカブれたバンドや、大学生になってから傾倒した作家に対しては、一定の距離を取ることができる。作品にも、是々非々の姿勢で対峙できる。駄作は駄作として、傑作は傑作として、作品単位で、批評的に向かい合える。が、ビートルズはダメだ。もう全面肯定しかできない。

とはいえ、コンサートに出来不出来がないのかといえば、そこはそれで、たとえば、去年行ったディランの日本公演は、さすがにおじいちゃんだった。それでもまあ、奈良の大仏がありがたいのと同じ文脈で、ディランぐらいな人になると、もうそこに立っているだけでうれしい。「なにごとのおはしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」と西行法師がうたったそのままの気持ちだ。

ポールの場合、コンサートも完璧だ。とても74歳とは思えない。立ち姿といい、2時間半水ひと口飲まず立ちっぱなしで歌う体力といい、まごうかたなき現役のミュージシャンだ。

そういえば、コンサートに出かける日の午後、ツイッターのタイムラインに、ディランがポールについて語ったインタビューの抜粋(2007年『ローリングストーン」誌)が流れてきて、その内容がまた素晴らしかった。

ディランは、ポールについて、「自分がこの世界でほとんどただ一人尊敬する存在」である旨を語った上で、ソングライターとして、ミュージシャンとして、また、シンガーとして、ポールが「effortless」である点を最大限に賞賛している。

辞書を引いてみると、「effortless」は、「努力」を意味する「effort」に、否定の接尾辞「less」を付加した形の派生語で、「努力をしたように見えない、いかにも自然な、巧まない」ぐらいなニュアンスの形容詞だ。

なるほど。ディランから見て、ポールは、「いかにも楽々と、とってつけたような作為を感じさせずに」メロディーを紡ぎ出す存在に見えているということなのだろう。

たしかに、長年のファンから見ても、ポールは常に楽しそうに見える稀有な人だ。

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最終更新:7/4(火) 18:10
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