ここから本文です

クリエイター向けクラウドファンディング「Patreon」が急成長

7/4(火) 18:53配信

WIRED.jp

YouTube動画などを製作するクリエイターを支援するクラウドファンディングプラットフォーム「Patreon」が成長している。広告収入による無料コンテンツか、有料コンテンツを配信するのか──。より良いウェブのためのビジネスモデルとは。

情報過多のストレスから“脱出”する、たったひとつの方法

デイヴィッド・パックマンは2009年、進歩的な政治について語るため、YouTubeで「David Pakman Show」を始めた。視聴者は徐々に増え、それに比例するように収入も増加した。現在のフォロワー数は約36万5,000人で、広告収入だけで制作費を賄うことができるようになった。

少なくとも、これまではそうだった。ところが、YouTubeが広告主の保護を拡大しはじめ、物議をかもすような広告を表示させないようにする対策を取ったことで、広告収入が枯渇した。

パックマンによれば、広告収入の額は2017年3月末までに、過去6カ月の平均と比べて96パーセント減少したという。約1カ月半後、状況は好転し始めたが、まだ十分ではない。現在の広告収入は、かつての3分の1をかろうじて上回る程度だ(YouTubeのコミュニティ責任者は3月、「もし今後数週間で広告収入が変動するとしたら、その理由はおそらく広告システムの微調整を行い、こうした懸念に対応しているためです」という文章を投稿している)。

しかし、収入を得る方法はほかにもある。パックマンは広告収入の大幅な減少に気づいたとき、クラウドファンディング・プラットフォーム「Patreon」でページを開設し、月額料金を支払ってもいいというファンたちを募った。パックマンによれば、このやり方で収入源が増えたおかげで、広告収入が枯渇していた間も、少人数のスタッフに報酬を支払い、番組を続けることができたという。

仕事の対価を直接受け取るという古いビジネスモデルをクラウドファンディングという新しい手法で実現し、命をつないでいるのはパックマンだけではない。Patreonは2017年5月、パックマンのようなインターネット上の“クリエイター”に月額料金を支払うことで制作を支援するファンの数が、2013年の設立以降100万人に達したと発表した。2016年の時点では50万人だった。クリエイターの数もこの1年で倍増し、5万人に到達したという。2017年はあわせて1億5,000万ドルの寄付が集まると予想されている。2017年に入ってから、設立以降の合計額が1億ドルと発表されていたため、こちらもかなりの偉業だ。

起業家精神あふれるクリエイターがオンラインで稼ぐ方法が増えるのは素晴らしいことだ。しかし、PatreonとYouTubeの現状を見ていると、ある本質的な問題が浮上してくる。より良いウェブをつくるための最善の方法は何か、という問題だ。広告の視聴回数が増えるよう、できるだけたくさんの人にクリックさせるようなコンテンツを制作することは、おそらく最善の方法ではない。

「Patreon」の共同創業者ジャック・コンテは、「人々が消費するものと、人々が料金を支払うものの間には違いがあります」と話す。コンテは、YouTubeに投稿した自身の音楽ヴィデオを支援してもらうため、Patreonを設立した。「人々は扇情的なコンテンツを、キャンディーのように消費します。はっきり言うと、くだらないコンテンツを一日中クリックしているのです。しかし、そのコンテンツを観るのに10ドル必要だったら、彼らは支払うでしょうか? 人々はそのような、つかの間の楽しみを得るためだけに財布を開くことはありません」

つまり、無料のウェブというインセンティヴによって生まれるコンテンツは、有料のウェブから生まれるコンテンツとは全く違うということだ。前者は注目の大きさに応じて報酬が与えられ、後者では興味や関心の深さが報酬を左右する。どちらが人々を引きつけるだろう? もしかしたら有料モデルは、YouTuberなどのクリエイターが金を稼ぐ手段であると同時に、ウェブの品質を向上する手段であるのかもしれない。

1/2ページ

最終更新:7/4(火) 18:53
WIRED.jp

記事提供社からのご案内(外部サイト)

『WIRED Vol.28』

コンデナスト・ジャパン

2017年6月8日発売

630円(税込み)

特集「Making Things ものづくりの未来」。大量生産、大量消費の時代が終わりを迎えるなか、ヒトはいかにものと向き合い、それをつくり、使っていくのか。