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『フリースタイルダンジョン』ユニットで表舞台へ HIPHOP発展に尽くしたZeebraの歩み

7/4(火) 15:00配信

リアルサウンド

 6月16日に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にZeebra率いるDungeon Monstersが出演し、「MONSTER VISION」を披露して話題となった。

 Dungeon Monstersは人気のMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)で挑戦者に立ちはだかる7人のモンスターで結成されたユニットだ。ZeebraはDungeon Monstersには含まれてはいないが、同番組のオーガナイザーを務めているため、DJとしてMステへの出演に至った。

 Dungeon Monstersは漢 a.k.a.GAMI、般若、サイプレス上野といったベテラン勢の他、R-指定、DOTAMA、CHICO CARLITOなどの昨今のMCバトルブームで名をあげたラッパー、さらに『高校生RAP選手権』で知名度を上げたT-Pablowの7人から構成される。『フリースタイルダンジョン』ではMCバトルで挑んでくる挑戦者に対し、それぞれ持ち前のスキルで相手を打ち負かす。そんな彼らがリリースした「MONSTER VISION」はそれぞれに個性がある声やフロウが楽しめるマイクリレーが特徴だ。

 Zeebraは『ミュージックステーション』番組内で「我々HIPHOPも、Mステからだいぶ遠ざかってましたから。もう10年くらい呼んで頂けなかった」とコメント。10年ぶりのMステ出演に興奮を隠せない様子で、SNSでも喜々として報告をしていた。

 その姿を久しぶりにテレビで見るのはとても感慨深いものがあった。Zeebraもすっかり落ち着いたなあと思ったらもう46歳になるという。あたしが青春時代にテレビで見ていたZeebraはもうちょっとやんちゃな印象だったが、今ではZeebra the daddyという二つ名がすっかり似合う歳になってしまった。Zeebraだけではない。妄走族に所属していた般若、MSCとして活動していた漢 a.k.a.GAMI。彼らがこういった形でゴールデンの音楽番組に出る日が来るとはまさか思っていなかった。

 Zeebraは90年代初頭から黎明期だった日本のHIPHOPシーンにおいて重要な役割を果たしてきた。1993年にK DUB SHINE、DJ OASISとキングギドラを結成し、1995年にアルバム『空からの力』をリリース。同年にはLAMP EYEの歴史的名曲「証言」にも参加。さらに1997年には日本初のメジャーHIPHOPレーベル<Future Shock>からシングル『真っ昼間』でソロデビュー。その後も今でも名盤と名高い1stアルバム『THE RHYME ANIMAL』をリリースするなど、ジャパニーズHIPHOP業界のトップスターとしてシーンを牽引し続けた。

 中でも偉業と呼べるのは1999年にリリースされたDragon Ashの「Grateful Days」への参加だろう。ちょうどDragon Ashが「陽はまたのぼりくりかえす」「Let yourself go, Let myself go」などのシングルで人気をぐんぐん向上させていたタイミングでのリリースとなり、「Grateful Days」もオリコンチャートで1位に輝いた。ACOと共にZeebraが大きくフィーチャーされたこの曲は結果的になんと90万枚も売れ、HIPHOPという音楽ジャンルをお茶の間に浸透させた。もはや「ジャパニーズHIPHOPといえばZeebra」という図式を世間に植えつけてしまったのだ。

 残念ながらZeebraはその後Dragon AshのKjをDisしてしまうが、勢いをつけたZeebraは2000年リリースの2ndアルバム『BASED ON A TRUE STORY』でなんとオリコン3位を獲得。そして後に代表曲となる「MR.DYNAMITE」をスマッシュヒットさせ、他にも『Neva Enuff featuring AKTION』をオリコン10位にランクインさせるなど、コンスタントに作品を発表。それぞれスマッシュヒットを記録した。

 2003年には今井了介とのユニット・FIRSTKLASとして安室奈美恵の別名義SUITE CHICの楽曲をプロデュース。EXILEの「LET ME LUV U DOWN」にも客演で参加するなど精力的に活動を続けた。そして同年リリースされた3rdアルバム『TOKYO'S FINEST』はチャートでも9位を記録。2006年の4thアルバム『The New Beginning』ではDMXやビヨンセのヒットメーカーとして知られるスウィス・ビーツをプロデューサーに起用。他にもスコット・ストーチやジャズ・オーなど海外のプロデューサーを起用して話題となり、チャートでも6位にランクインした。

 思えばここまでがZeebraの全盛期であったが、HIPHOPという未開の音楽ジャンルでありながら日本のメジャーシーンでこんなに人気を集めたという功績は非常に大きい。もちろんジャパニーズHIPHOP史において名を残したのはZeebraだけではない。90年代にはBUDDHA BRANDやKAMINARI-KAZOKU.、RHYMESTERなどがいたし、00年代は<Def Jam Japan>勢、Shing02、THA BLUE HERBなどより多様化したHIPHOPシーンにおいて、それぞれのMCが立ち位置を築き上げた。その中でもトップアーティストで居続けたと言えるのは間違いなくZeebraだろう。

 しかしその後、Zeebra人気は一時失速してしまう。オリジナルアルバムをリリースしてもオリコンTOP10入りを逃すようになってしまったのだ。2013年の『25 To Life』が63位という残念な結果に終わったのはなんとも衝撃的であった。唯一、あの頃では2008年にリリースされたベストアルバムが辛うじて9位に入ったのがビッグヒットだった。かつての栄光を知る身としては、Zeebraの気持ちを考えるとやるせない思いであった。

 それはZeebraだけの話でなかった。一時期はかなり勢いのあったDABOやS-WORDなどの元祖<Def Jam Japan>勢など、その他の著名なラッパーも同時期から売上が低迷。KREVAが2006年にリリースした2ndアルバム『愛・自分博』がオリコン1位を取ったり、根強い人気のあるRHYMESTERがアルバムリリースごとに20位以内を保っていたりと明るい話もあるにはあったが、なにより日本のHIPHOP文化を長い間支えてきた雑誌『blast』が2007年に廃刊したのがHIPHOP人気の低迷を現している。

 そもそも低迷したのはHIPHOPに限らない。音楽シーン全体において以前に比べてCDが売れなくなった時代が到来したのだ。HIPHOPに関しても2000年代後半に登場した新しいアーティストは皆インディーズからのリリースが当たり前となる。また、ラッパー業だけでは食べていけず、兼業ラッパーという選択をせざるをえないラッパーがほとんどであった。よっぽど人気があるラッパーならライブで稼ぐことができるが、その境地まで行けるアーティストは僅かだ。

 例えば、Dungeon Monstersの一人である漢 a.k.a.GAMIも、最近は自身の著書『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社)や「毎日パンチライン」という代表曲のリリックを掲載した日めくりカレンダーをヒットさせるなど、音楽コンテンツ以外で売り上げを作る動きを見せている。タレント活動にも積極的でAbemaTVでは『漢たちとおさんぽ』という番組にも出演。新宿アウトローMCというイメージが強かった漢 a.k.a.GAMIだったが、意外とコミカルな面を番組内で見せるなどして新たなファンを獲得している。

 そんな中、ZeebraもHIPHOP業界の人気の底上げに繋がるようにとこれまで様々なことにチャレンジしている。BSスカパー!で放送されている『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』において審査員を務め、高校生にラップというものを浸透させた。また、<GRAND MASTER>というレーベルを始め、新しい才能をピックアップして世に送り出している。Dungeon Monstersの一人、T-Pablowも<GRAND MASTER>所属だ。更にZeebraは今年、HIPHOP専門のインターネットラジオ「WREP」の開設に携わり、新しいラッパーたちにスポットライトが当たる居場所を作った。

 そしてご存知の通り、Zeebraがオーガナイザーを務める『フリースタイルダンジョン』の人気も上々。そういった流れの中、HIPHOP要素の一つであるMCバトルの人気をHIPHOPそのものの人気へとどうしたら繋げられるかを考えられてリリースされたのが「MONSTER VISION」だ。

 賛否が分かれるところでもあるかもしれない。しかし、「MONSTER VISION」はiTunesダウンロードランキングで1位を獲得するなど、ある程度の結果を残している。今後、Dungeon Monstersのアルバムがリリースされるという可能性だってあるだろう。最近の『フリースタイルダンジョン』は波乱続きの展開だ。今後の彼らの動きにも期待したい。

 「Grateful Days」が発売された1999年、V.I.P.CREWという名義の元、ZeebraをはじめとしてYOU THE ROCK★やTWIGY、DEV LARGEなど多くのMCが集まって「DANCEHALL CHECKER」という曲をリリースした。大ヒットには至らなかったが、昔のB-BOYにはそれなりに知名度がある名クラシックだ。この曲は参加したMCからHIPHOPというジャンルでメインストリームにのし上がろうとしていた当時の気迫が今でも感じられる。

 あたしはDungeon MonstersをこのV.I.P.CREWの姿に重ね合わせて『ミュージックステーション』を見ていた。「DANCEHALL CHECKER」がリリースされてからもうすぐ20年が経とうとしているが、Zeebraの挑戦は終わらない。そんなZeebraの姿を見て、影ながら応援したいと心の底から思ったのであった。

最終更新:7/4(火) 19:36
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