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都政と国政の混同で、東京は選択機会を逸した - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

7/4(火) 16:45配信

ニューズウィーク日本版

<首都・東京がどれだけ重要な票田でも、地方選挙の都議会選の結果で国政を論じるのは筋違い>

首都の地方選挙が、そこが首都だからといって国政の象徴になるのは筋が違います。確かに、党派別の勢いについて最新のデータにはなるのですが、それでも東京の選挙区の動向だけです。国政選挙の場合は東京以外に9000万人余の有権者が存在することを考えると、今回の都議選の結果で国政を論じるのは全くの飛躍だと思います。

見方を変えてみればどうでしょう? 東京の票が国政を左右するのではなく、東京という地方の政策を決定すべき都議選で、東京は東京の問題が決められなかった、そう考えることもできます。

東京には大きな課題が3つあると思います。

【参考記事】大阪と東京に生まれた地域政党の必然と限界

1つ目は人口の問題です。雇用と大学が東京に一極集中する中で、全国から若者人口を現在でも「吸引し続けている」わけですが、この異常な状態を続けるのか、少なくとも抑制するのかという問題は東京が選択していかなくてはならないと思います。

2つ目は、東京が近い将来に単身の高齢世帯を支えていかなくてはならないという問題です。2035年頃から財政負担も重くなるという試算がある中で、今からその備えをしなくてはなりません。その備えについて、東京を縮小し、コストカットしていくのか、それともより経済を成長させるのかという問題は、今この時に選択しておく必要があると思います。

3つ目は、産業構造転換の問題です。仮に東京がさらなる経済成長を志向するのであれば、国際金融都市にするしかありません。この点については、一部の政党のマニフェストにも入っていましたが、問題は中身です。国際金融都市にするには、まずアドミ(総務・経理・人事)の仕事を英語化すること、会計基準をIFRS(国際財務報告基準)にすること、金融情報を完全に英語化することが必要です。そのような都市にするには、社会制度も教育も含めた決断をしなくてはなりません。

3つ掲げましたが、この他にも東京の出生率が低い原因として教育費の問題があり、その背景には中学校レベルの公教育の破綻という問題があります。これも、この3つの問題に関わってくる問題であり、全国では上手く行っているのに東京だけが深刻な状況に陥っているわけで、この点についても、東京は自分で変わっていく必要があると思います。



いずれにしても、妙な流れの中で純粋な地方選であるはずの都議選が、国政選挙のように扱われ、その結果としても国政への影響ばかりが語られる状況が続いています。要するに、東京は自分で自分の進路を決めること、特に大切な選択をすることができなかったのです。

今回の選挙を見ていて、私はふと納得させられたことがありました。

一つはJR東海によるリニア中央新幹線プロジェクトの問題です。私は品川=名古屋間を40分程度で結んだら、名古屋は消費も雇用も東京に吸い取られてしまうのではないかと思っていました。どうして中京圏の財界が大真面目でそんな危険なプロジェクトに邁進しているのか、今ひとつピンと来なかったのです。

ですが、もしかしたら名古屋の人々はリニアを推進することで、東京から繁栄と富を奪い取ることが出来るというそんな野心を秘めているのかもしれない、今回の選挙を見ていてふとそう思ったのです。

【参考記事】地方学生が抱える奨学金ローンの破綻リスク

リニアということでは、大阪府知事や市長時代の橋下徹氏は、リニアの早期大阪開業にこだわり、同時に第二首都として中央官庁の大阪誘致を提案していました。私は、そこに民間活力に注力しないで官庁の誘致というのでは改革として生ぬるいという印象を感じていましたし、それこそ大阪こそ「アジアの事務仕事の街」として、英語での事務が「こなせる」商都として復権すべきということを一貫して言い続けてきました。

この点について私の主張は変わりませんが、同じく今回の都議選の「混迷」を見ていますと、「自分のことを決められない東京」では首都機能を支えられなくなるかもしれず、大阪にリニアを、そして首都機能の一部移転をという主張にも一理あるのではないかと思ったのです。

とにかく、都政という地方政治と国政が混同されて良いことは一つもありません。今回の選挙が東京の衰退の契機とならないことを祈るばかりです。

冷泉彰彦

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