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700キロの大自然レースを完走した4人と1匹。人間と犬の絆が感動を呼ぶノンフィクション

7/4(火) 6:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 2014年11月、世界中がエクアドルで行われていたアドベンチャーレースに注目していた。熾烈を極めるレースの行方は確かに魅力的だったが、その大会に限れば主役は優勝チームではなかった。スウェーデンのチーム「ピークパフォーマンス」に一匹の犬が途中から加わったのである。「アーサー」と名付けられたその野犬は、傷だらけの体でチームと共にレースを完走したのだった。

 あまりにもドラマティックなアーサーの物語を、チームのリーダー、ミカエル・リンドノードが一冊の本に綴った。『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』(早川書房)は人間と犬の間に芽生えた奇跡的な出会いが感動を呼ぶノンフィクションである。

 アドベンチャーレースとは、過酷な大自然の中で行われる競争である。コースは何百キロにも及び、最低限の食事や睡眠をとりながら、世界中から集まった4人1組のチームがタイムを競い合う。コースには山や砂漠、急流までもが組み込まれ、自転車やボートなどの乗り物の使用も許可されている。ただし、整備されていない自然が相手なので、訓練した人間でもリタイアがあとを絶たない過酷な内容だ。ミカエルたちピークパフォーマンスが挑んだのは、エクアドルの山岳地帯で行われたハードなレースであり、勝利のためには約700キロを7日で完走することが求められていた。

 元軍人のミカエルをはじめ、メンバーは熟練の体力自慢ばかりだが、それでも疲労や脱水症状に襲われる。地図を紛失するなどのトラブルもあり、5日間で5時間しか睡眠を確保できなかった状態でチームはジャングル地帯のTA(トランジットエリア=通過点)に辿り着いた。そして、ミカエルは一匹の野犬と出会う。野犬らしからぬ落ち着きに心を惹かれたミカエルは、気紛れから食料のミートボールを分け与えた。食事と休息を経てから出発すると、程なくしてミカエルは別チームから話しかけられる。

「おい、お前たち犬を連れてるのか?」
 さっきの犬がミカエルの後をついてきていたのだ。ミカエルはすぐに帰るだろうと思っていたが、道のりが険しくなっても引き返そうとしない。犬は血に汚れ、感染症にかかっている恐れがあった。まるで生き延びるための最後の手段を見つけたかのように、犬はミカエルの後を追い続ける。ミカエルたちも犬を仲間と認め、一緒にレースを走り抜ける決意をする。ミカエルがアーサーと名付けたのは、犬の物静かで威厳ある雰囲気がアーサー王を連想させたからだ。

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