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こういうものが欲しかったとヒザを打つ ニッチに手厚いコスメこそ美容の真髄! CREA 2017年7月号

7/4(火) 12:01配信

CREA WEB

なぜニッチ・コスメがどうしても必要と思えるようになったのか?

 ここで言うニッチとは、言うまでもなく隙間。マーケティング用語で、大きな市場と大きな市場の間に生まれる、盲点をつくような隙間マーケットを、ニッチ産業と呼ぶ。

 そういう意味で、コスメ界においてはこの“ニッチ”というジャンル、ずいぶん昔から存在していた。そもそもが、化粧下地のような脇役アイテムからニッチというジャンルが始まったわけだが、コスメ界は長い間試行錯誤を繰り返してきた業界でもあり、今までの歴史においては、必要なもの不必要なもの、あっという間に消えていったものまで、ともかく山ほどのニッチ・コスメを作ってきたのだ。

 例えば、メイクの消しゴムやアイライナーシール、首用ファンデにハンド用ファンデ、鼻周りだけを洗うクレンジング、最近の例でも、涙袋を作るペンシルや頰のてっぺんだけツヤを出すバームなどなどと多岐にわたるが、ニッチはニッチ。それ以上の存在感を示すことはなかったのだ。

 ところが最近になって、ニッチ枠に収まらないほどの存在感を持ち始める。例えばまつ毛コームも、大昔からあるニッチ・コスメの一つで、使う人は使うし、使わない人は使わない、完全なるオプションだったが、ここへ来て、一見マスカラコームに見えて、実はリムーバーというアイテムが登場した。思わず、そうそう、こういうものが欲しかったのと、ヒザを打ったもの。これを作ったリンメルが同時に発表したのが、何と“豪雨でもにじまないマスカラ”。ニッチとはいえ、誰もが欲しがるものが次々と商品化されているのだ。

ニッチなのに主役になれる製品とは?

 そういう時代をずばり象徴しているのが、資生堂のプレイリスト。このブランド、資生堂のアーティストが集合して本当に欲しいものを作りたいと、企画を持ち寄って商品を開発するという、全く新しい仕組みにより生まれたもの。だからニッチなのに主役になれるような製品が目白押しなのだ。

 例えばマスカラなのにアイライナーも兼ねているような不思議な製品がある。これは、特殊なブラシで根元にもしっかりと当てられる上に、まつ毛の間を埋めるライナーにもなる。確かに下まぶたは、まつ毛なのかラインなのかが曖昧な影を作るのがテーマだけに、このマスカラ&ライナーが大変に重宝する。同様に、こういうものが欲しかったのと嬉しくなるような有能ニッチが今シーズンも登場した。

 一つは、化粧下地ならぬ化粧上地のケータイ用。日中いつでもどこでもフレッシュな肌を蘇らせる上に、ヨレも直して朝よりもきれいな肌を作ってくれる。そう、これも欲しかった。メイクの消しゴムも従来のものよりももっとピンポイントでもっと確実にミスを消せる使いやすいペンシルリムーバーになり、オプションというより、どうしても必要な定番アイテムになりそうな気配。

 こんなふうに、ニッチがニッチでなくなったのも、一つには、コスメ・テクノロジーが思い切り進化して、中途半端ではない、一度試したら絶対に手放せなくなる技ありコスメが開発できるようになったから。そして何より美容が成熟して、本当に必要なものがハッキリ見えてきて、オプションとはいえ、あってもなくても……というものではなくなったから。実は必要というものばかりが作られるようになったから。いよいよ、メイクが完成に近づいていることの表れなのである。

齋藤 薫 (さいとう かおる)
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか? 』(マガジンハウス)など、著書多数。近著に『されど“男”は愛おしい』(講談社)がある。

齋藤 薫

最終更新:7/4(火) 12:01
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