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悲劇続きで沈滞ムードのイギリスに残る良心 - コリン・ジョイス Edge of Europe

7/5(水) 17:00配信

ニューズウィーク日本版

<マンチェスターやロンドンのテロ、高層住宅の火災と、イギリスでは最悪な事態が次々と起きている。それでも人々の怒りや絶望より、ボランティアや寄付などの善意の方が目立っている>

ここのところ、イギリスでは最悪なことが次から次へと起こっているように見える。

ウェストミンスターでの襲撃事件はおぞましかったが、こうしたローテクのテロ攻撃はいつの日か起こることは避けられないと分かっていただけに、まだ何とか耐えることができた。この手のテロが起こるであろうことはずっと警告されていた。そうはいっても、死者の出るようなテロが起きることなく「かなりの時間」が過ぎたところで、この襲撃事件が発生した。

それに続いて、マンチェスターのコンサート会場で、子供や罪なき人々を狙った非道な大量殺人が発生してしまった。

それからさらに、ロンドン橋とバラマーケットでの襲撃事件が起こった。

メディアで絶え間なく報道される犠牲者の名前、突然命を絶たれた人々のプロフィール――それから、葬儀の様子。スコットランドの小さな島からマンチェスターのコンサートに来ていた女子生徒が犠牲になり、地元の街は喪失感に打ちのめされた。ウェストミンスター橋で暴走車に接触されテムズ川に落ちたルーマニア人建築家の女性は、それから2週間後に亡くなった。

事件の日、彼女にプロポーズするつもりだったという彼女の恋人の人生はめちゃめちゃになった。みんなが彼女の「奇跡のストーリー」を切望していたが、ついにかなわなかった。いくつもの悲しい物語が、こんなふうに絶え間なく語られている。

そして、書くことすら苦し過ぎる、公営高層住宅「グレンフェルタワー」の大火災のトラウマ。

それから、フィンズベリー・パーク地区のモスク近くで、イスラム教徒らの列に1台のワゴン車が故意に突っ込む事件が起こった。1人の男性が死亡した。

こうした一連の事件の最中に、昨年6月に銃撃され殺害された若き国会議員ジョー・コックスの1周忌が訪れ、1年前のおぞましいあの日の記憶を呼び覚ました。

【参考記事】ロンドン高層公営住宅火災で団結するロンドン市民 アデルなど著名人も

2011年のような暴動は起きず

こうしたことを長々と並べ立てるのは実に気が滅入ることだとは、言うまでもないだろう。ひどく極端な状況を味わっている時期には「国家的ムード」のようなものが漂うと僕は思うが、今はまさにそんな時期な気がする――それも、かなり後ろ向きなムードだ。



でも僕は何とか、「中心部分がまだしっかりしている」ことにいくぶん慰めを見出している。グレンフェルタワーの大火災の後、僕は2011年のときのような暴動が起こる可能性がかなり高いと感じていた。ある意味、僕が考えた「法則」はシンプルだった。2011年にロンドンなどイギリス各地で起こった暴動のきっかけになったのは、少なくとも犯罪集団と何らかの関係があり、当時違法な武器を運搬していたとされる1人の黒人男性マーク・ダガンが警察に射殺されたことだった。

2017年の今回の場合は、過失致死傷か、少なくとも重過失だと思われるような行為が原因で、大勢の罪なき人々が自宅に居ながらにして焼け死んだ。

2011年の当時、イギリスの根底に漂っていた社会的不公正の感覚は、いまだ解決されないまま――むしろある意味、悪化している。

にもかかわらず、今回は群衆が違法行為に走るようなことは起きていない。一般市民の相当な怒りは何度も表面化しているが、それが大爆発に至るような事態には一度もなっていない。むしろ目立ったのは、ボランティア精神や寄付行為など、人々の善意のほうだ。

【参考記事】トランプ、抗議デモ避けてイギリスに「密入国」?

フィンズベリー・パークのモスクの事件では、イスラム教徒を殺害しようとしたとされる容疑者は、その犠牲者になるかもしれなかった市民たちによって取り押さえられた。これは、自分を殺そうとした男を拘束するうえで、かなりの自制を示している。

その週末、僕の家の近所の広場で大音量の音楽と何やらアナウンスが始まったので、僕は最初、イラっとした。でも「長いものには巻かれろ」的な精神で、何が起こっているのか見てみようと足を運んでみた。するとそれは、ジョー・コックスの一周忌記念行事だった。彼女は僕の住む地域とは個人的なつながりはなかったが、その日はイギリス中が、死ななくてよかったはずの彼女の死を思い返していた。

僕はあまり楽観主義者ではない。今のイギリスで起こっていることを見て、これから全てがいい方向に向かうだろうとも思わない。でも同時に、絶望しない方法だってちゃんと見つけることができている。

コリン・ジョイス

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