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日本は弾道ミサイル防衛能力を強化しなければ国民を守れない――北朝鮮「ICBM発射実験成功」で見えてきたもの

7/5(水) 15:50配信

週刊SPA!

◆北朝鮮が「ICBM発射成功」

 北朝鮮は7月4日午前、日本海方向へ弾道ミサイル1発を発射、約40分間飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に着水したとみられると、日本政府は発表しました。

 一方、北朝鮮は「特別重大報道」を発表し、米国本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと伝えています。ミサイルは933キロ飛行し、高度は2802キロに達したといいます。

 私は、6/30の記事「北朝鮮のミサイルには反撃できず、EEZに落下するミサイル破壊も違法――手足を縛られた日本の防衛政策の現実」で、6月に発射実験がなかったが「油断は禁物です」と申し上げましたが、北朝鮮は着々と準備を進めていたのです。

 さて、その記事で述べたとおり、日本は北朝鮮のミサイル基地を反撃することが憲法上可能ですが、残念ながら自衛隊には反撃の装備がありません。また、日本のEEZ内に落下するミサイルを打ち落とす装備はありますが、今の自衛隊法の規定では日本の領域の外に落下するミサイルに対して破壊措置を取ることはできません。

 国民のみなさんも、日本政府は北朝鮮のミサイルから私たちを守ってくれることができるのか、不安かと思います。

◆日本は北朝鮮のミサイルをどのように防衛するのか

 我が国に武力攻撃として弾道ミサイルなどが飛来した場合には、武力攻撃事態における防衛出動により対処します。武力攻撃事態が認定されていないときには、迅速かつ適切な対処を行うこと及び文民統制を確保することを十分考慮し、防衛大臣は、弾道ミサイルなどを破壊する措置をとることを命ずることができます。

 弾道ミサイルは発射前に着弾地域を特定することが極めて困難で、しかも短時間での着弾が予想されます。日本の弾道ミサイル防衛は、イージス艦による上層での迎撃と地対空誘導弾ペトリオットPAC‐3による下層での迎撃を、自動警戒管制システムにより連携させて効果的に行う多層防衛を基本とし、平成16年度から弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を開始しています。

 2016年2月2日、国際海事機関(IMO)及び国際民間航空機関(ICAO)から、北朝鮮当局から「地球観測衛星」打ち上げの事前通報があった旨の連絡を受けた時は、翌3日、不測の事態に備え、「弾道ミサイル等に対する破壊措置等の実施に関する自衛隊行動命令」を発出し、SM‐3搭載護衛艦を日本海及び東シナ海に、PAC‐3部隊を、石垣島、宮古島や首都圏にそれぞれ展開させるとともに、沖縄本島に所在するPAC‐3部隊がそれぞれの基地において態勢を維持しました。

 また、万一の落下に備え、被害情報の収集や被害局限措置のため、陸自部隊を南西諸島に派遣するなどの万全の対応をとりました。

 そして2月7日の「人工衛星」と称する弾道ミサイルが発射されると、防衛省・自衛隊は、早期警戒情報や自衛隊の各種レーダーなどにより得た情報を官邸などへ迅速に伝達するとともに、被害の有無を確認するための情報収集を実施しました。翌8日には、防衛大臣が「弾道ミサイル等に対する破壊措置等の終結に関する自衛隊行動命令」を発出し、速やかに部隊を撤収させました。

◆米国のミサイル防衛システムとの連携

 また、日米両国は、弾道ミサイル防衛に関して緊密な連携を図ってきており、米国保有のミサイル防衛システムの一部が、我が国に段階的に配備されています。

 米国は、弾道ミサイルの飛翔経路上の、①ブースト段階、②ミッドコース段階、③ターミナル段階の各段階に適した防衛システムを組み合わせ、相互に補って対応する多層防衛システムを構築しています。

 日本は弾道ミサイルの対処にあたり、早期警戒情報を米軍から受領するとともに、米軍が日本に配備しているBMD用移動式レーダーやイージス艦などを用いて収集した情報について情報共有を行うなど、緊密に協力しています。

 北朝鮮は、その後も弾道ミサイルの発射を繰り返していますが、防衛省・自衛隊は、引き続き、米国や韓国とも緊密に連携しつつ、いかなる事態にも対応できるよう、緊張感をもって、情報収集や警戒監視等に万全を期しています。

◆弾道ミサイル防衛のさらなる強化が必要

 一方で、北朝鮮が弾道ミサイル開発全体を一層進展させていることを踏まえ、日本は米国の先進的な取り組みや装備品などを研究しつつ、防衛大綱などで示された、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上についての取り組み及び検討を加速しなければなりません。

 今回の北朝鮮のミサイル発射実験で、ミサイルが過去最高の高度に達したことを日本政府は重く受けとめています。長射程ミサイルが日本に向けてロフテッド軌道(弾道ミサイルを通常より高い角度で打ち上げる)で発射されると、イージス艦の迎撃ミサイルが届かない高度を飛行したり、着弾直前の速度がより速くなったりするためで、現状では対応できない可能性もあるからです。

 北朝鮮が新たな段階の脅威であることは明白です。自民党「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」(座長・小野寺五典元防衛大臣)は、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を検討し、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を取りまとめ、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、予算措置を含め、その実現を求めています。

 特に「弾道ミサイル防衛能力強化の新規アセットの導入」については、以下の2点になります。

★イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(終末段階高高度地域防衛)の導入の可否について成案を得るべく政府は直ちに検討を開始し、常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等から我が国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。

★また、将来の我が国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること。

 これは、従来の防衛予算の大綱・中期防、歳出化予算、概算要求といったことではなく、災害対応で予備費を充当するといった大胆な発想で早急に政府の決断を求めています。あわせて、現大綱・中期防に基づく能力向上型迎撃ミサイルの配備やイージス艦の増勢の着実な進捗、事業の充実・さらなる前倒しを求めています。

 日本政府は、さらなる抑止力の向上により北朝鮮にこれ以上の暴挙を断念させるとともに、国民保護体制の充実を含めたより一層の対処力の強化により、万が一の際に国民の生命と日本の領土・領海・領空を守り抜く万全の備えを構築しなければなりません。

【田村重信(たむら・しげのぶ)】

自由民主党政務調査会審議役(外交・国防・インテリジェンス等担当)。拓殖大学桂太郎塾名誉フェロー。昭和28(1953)年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。政調会長室長、総裁担当(橋本龍太郎)などを歴任。湾岸戦争以降のすべての安全保障・防衛政策の策定・法律の立案等に関わる。慶應義塾大学大学院で15年間、日本の安保政策及び法制に関する講師も務めた。防衛法学会理事、国家基本問題研究所客員研究員。著書に『改正・日本国憲法』(講談社+α新書)、『平和安全法制の真実』(内外出版)他多数。最新刊は『知らなきゃヤバい! 防衛政策の真実』(育鵬社)

<文・自民党政務調査会審議役・田村重信>

日刊SPA!

最終更新:7/5(水) 16:40
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