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ナーゲルスマンにテデスコ…DFB主任指導者育成教官に聞く 「ドイツ若手監督ブーム」の理由

7/6(木) 11:30配信

footballista

ドイツサッカー連盟(DFB)が2000年代の育成改革によって低迷していたドイツサッカーを復活させたのは有名な話だが、同時に選手たちを指導する監督の育成にも力を注いできた。その結果登場したのがトゥヘルやナーゲルスマンなど新世代の監督たちだ。彼らに共通するのは現役時代は無名選手で、純粋に監督としての勉強を突き詰めてきた叩き上げであること。DFB主任指導者育成教官フランク・ボルムートに、ブンデスリーガで多くの若手理論派が台頭している理由を教えてもらおう。聞き手はDFB公認A級ライセンスを持つ中野吉之伴氏だ。


インタビュー・文 中野吉之伴


 一昔前、ブンデスリーガ監督の人選に驚きはなかった。どこかのクラブで監督が解任・辞任となった時に挙がる名前はいつも似たり寄ったり。たまに新しい人物がその輪の中に入ってくるにしても、元ドイツ代表や長年そのクラブでプレーを続けたレジェンドが重用される時代が続き、血の出入りは極端に少なかった。目立った成績を残していない60歳近いベテラン監督でも、「ブンデスリーガで監督をした」という実績さえあれば、いつまでも現場にいられる時代だった。

 それが今はどうだろう。現在ブンデスリーガで監督を務める18人の顔ぶれを見ると、「名ばかり」の監督は一人もいないし、何より若手が多い。特に注目されるのは選手時代の実績がない無名監督だ。トーマス・トゥヘルやユリアン・ナーゲルスマンのように1部リーグでのプレー歴がない監督がもはや普通になってきている。

 彼ら新世代はどのように生まれてきたのだろうか? ドイツの指導者育成の変遷を誰よりもよく知るドイツサッカー連盟(DFB)プロコーチライセンス(UEFA・S級ライセンス)主任指導教官のフランク・ボルムートにコンタクトを取った。残念ながら大変多忙な方で直接インタビューすることはできなかったが、特別な好意でこちらから送った数多くの質問に書式で驚くほど丁寧に答えてくれた。


無名の理論派vs元有名選手


――最初にメインテーマについて聞かせてください。なぜこれほど多くの若手監督がブンデスリーガで成功しているのでしょう?

「理由は4つあると思う。1つ目は指導者育成システムが良くなったこと。2つ目は若い監督がプロクラブの育成アカデミーでフルタイムジョブとして働けるようになり、その中で監督として必要な多くのものを習練できるようになったこと。3つ目はチームマネージャーやスポーツディレクター(SD)といったクラブで監督人事権を持つ人物が、自クラブの若手監督にもしっかりと目を向け、彼らがトップチームの舞台で問題なく実力を発揮できるまで成長しているかを見定められるようになったこと。そして4つ目がトーマス・トゥヘルやユリアン・ナーゲルスマンなどの成功事例が存在していること。こうした複数の要素が重なり合って、クラブ首脳陣が若手監督を信頼して起用する下地ができた」


――僕もドイツのライセンス講習を受けましたが、指導者講習会では元プロ選手とアマチュア畑出身の監督が壁を作らずにディスカッションをします。こうした事例は日本ではとても珍しい。何か特別なアプローチを行っているのでしょうか?

「我われの文化でも成功を収めた選手に対しては大きなリスペクトがある。彼らが選手時代に成し得たことから多くを学び、知りたいとみんなが思うだろう。だが、それとディスカッションをする/しないというのは別のテーマだ。それができないと、元プロ選手だったとしても、これまでの枠から抜け出して成長できない。ここで言う枠というのは、選手時代の栄光の日々のことだ。我われDFBは元選手の価値は素晴らしいものだと認識している。だが、そこで立ち止まっていてはダメなんだ。スター選手にとっては難しいことかもしれないが、そこから前に進まなければならないんだ」


――この5~10年、プロ選手経験のない指導者が増えてきている一方で、元スター選手が監督として活躍することがほとんどありません。昨シーズン2部のパダーボルンの監督に就任したエッフェンベルクは1勝も挙げられないまま更迭されました。マテウス、ブッフバルトといった英雄たちも目立った成果を上げられていません。

「まずどれだけ育成プログラムを充実させても、あるいはどれだけ経験を積んでも、個人ではどうすることもできない問題はある。その上で話をするが、まず考えられるのはクラブの首脳陣が選手時代の経験ではなく、監督としての能力を重要視するようになったこと。トゥヘルやナーゲルスマンは選手時代に大きな経験をしていないが、監督として能力を発揮している。元スター選手は、おそらくプロ指導者としてのキャリアアップを急ごうとし過ぎているのかもしれない。加えて有名な人間はそれだけプレッシャーがかかるし、ドイツ全体で若手指導者を起用しようというトレンドも感じる」


――監督選びはSDやチームマネージャーの目利きが重要になります。この分野においてDFBが取り組んでいることは?

「この分野はまだ改善の余地があると思うが、今のところSD用の特別な講習会はない。ただ、クラブサイドはSDのポジションに就く人物の指導者ライセンスの有無にも注目するようになってきている。プロコーチライセンスとは言わないが、A級ライセンスは必要になるようになるかもしれない」


――ブンデスリーガではマインツやホッフェンハイムのように、U-19やU-23の指導者をトップチームの監督に抜擢し成功したケースがあります。監督を自前で育成するということが重要になってくると思いますか?

「どのような指針とフィロソフィでチーム作りに取り組むかはクラブ次第だ。自分たちで監督を育成しようとするならば、それは素晴らしいことだ。だけど、だからといって外から監督を連れて来ることが悪いわけではない。もちろん外から獲得する時は入念なスカウティングや準備が必要だろうけどね」


――DFBがそのためにできることは?

「アドバイスをすることはできる。だが、こうしなければならないという強制力は持っていない」


――スペインでは元有名選手がいきなり最上位ライセンスを取得するチャンスがあるそうですが、ドイツではプロコーチライセンス講習会を受ける条件として「ブンデスリーガ(1~3部)アシスタントコーチ、6部リーグ以上の成人チーム監督、U-19、U-17ブンデスリーガ監督、女子ブンデスリーガ監督といった実績が必要になります。その理由は?

「いい選手がいい監督になるには長い道のりが必要だ。選手と指導者の能力は分けて考えなければならない。元プロ選手も、プロ指導者として最初のステージから学ぶ必要がある。そして何より監督としての実戦経験がなければならない。指導者の育成に必要なのは、講習会やセミナーでの理論習得や指導実践の向上、そして現場での経験との両輪なんだ。監督としての経験がない人間に育成のチャンスを与えるつもりはない。講義室で話を聞くよりも現場に立つ方がよっぽど学びになる。どのように知識を生かすのか。学ぶことではない。学び方が大事なのだ」

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最終更新:7/6(木) 16:40
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