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持続可能なアジアの未来は実現されるか

7/6(木) 23:16配信

オルタナ

サステナビリティ 新潮流に学ぶ 第10回

アジアの未来を左右する2つの国際開発銀行の総会が続きました。5月上旬、横浜で開催されたADB(アジア開発銀行)設立50年総会には約6000人が参加し、ADB史上最大の盛り上がりを見せました。他方、ADBを凌駕する中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)第2回総会が6月中旬、韓国の済州島で開催されました。持続可能なアジアに向けて、最新動向に迫ります。(古沢 広祐:オルタナ/Sustainable Brands Japan)

アジア開発銀行の役割をふり返る

まずADB総会に参加しての印象を報告しましょう。戦後、日本がリード役を務めてアジア・太平洋地域の発展に大きく貢献した国際機関がADBです。インフラ整備・開発援助に成果をあげたのですが、環境面や社会面での不備が過去に市民社会から批判・指摘されたことで、セーフガード(環境社会配慮)政策が取り入れられ、持続可能な発展への貢献が目指されてきました。

戦後の日本を振り返ってみると、荒廃した国土の復興と発展に際して、世界銀行からの融資に大いに助けられました。東名高速や東海道新幹線もその一例です。その後1966年、世界銀行からの借入支援を終了した日本は、自らの経験を踏まえてアジア・太平洋地域の開発を支援するADBの設立に協力したのでした。最大出資国で歴代総裁は日本人、本部はフィリッピンのマニラにあります。当初、飢餓の克服と農業分野への支援を皮切りに、その後は電力や交通など工業化とインフラの整備へと経済発展の土台作りに寄与してきました。

日本の経済発展の歩みを振り返ると、実際には輝かしい光の部分とともに深刻な公害被害や自然破壊、山間部のダム開発や沿岸開発による居住地移転など、影の部分が同時進行しました。躍進するアジア地域の経済発展においても、実は開発における同様の光と影の部分が交錯しており、とりわけ民主化が遅れた地域では環境破壊のみならず地域住民に深刻な人権侵害が引き起こされる経緯があったのです。

持続可能な開発・発展には、「経済」のみならず「環境」配慮と「社会」配慮が欠かせないこと(サステナビリティ3要素)は、現代世界では常識となってきたのですが、それが常識化する過程では、NGOなど市民社会側からの告発や抗議など社会運動が欠かせませんでした。詳細は省きますが、ADBによる開発援助が多大な貢献をする一方で、開発実施国側の制度的不備や汚職・腐敗、融資案件の審査の甘さなど、いわゆるアカウンタビリティ(説明責任)問題が顕在化したのでした。

論点としては、開発実施主体のみならず融資する貸し手の責任や、資金提供している援助国側の日本国民の税金の使い方という点でも、見過ごせない問題となりました。すでに連載で紹介した1992年の地球サミット当時、NGOによる世界銀行など国際開発銀行への批判が急速に高まったことで、環境社会配慮のガイドライン(セーフガード)の制定が相次ぎました。ADBでも、1991 年に「業務手続きに関するガイドライン~ADB 業務における環境配慮」を定めて、セーフガード政策が取り組まれたのです。

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最終更新:7/7(金) 0:02
オルタナ

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