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【月刊『WiLL』(8月号)より】『うんこ漢字ドリル』林真理子さんまで「いいね!」でも、なんかクサイよネ

7/6(木) 9:00配信

WiLL

「一筋の光」

 何が売れるかわからないというのは出版界でもよく言われることですが、それにしても『うんこ漢字ドリル』(文響社刊)という問題集が発売からわずか1カ月半で100万部を超え、いまや200万部のベストセラーになったというニュースには驚きました。
 小学校1年生用から6年生用まであり、計3000余りの例文すべてが「うんこ」に関するものだそうです。表紙には「日本一楽しい漢字ドリル」「全例文でうんこの使用に成功!」と謳っています。マスコミの話題になるのは当然ですが、そのほとんどが好意的に取り上げていて、教育評論家らしき先生のなかにも、「子供たちに面白く漢字を学ばせる画期的な教材」と推奨する方がいます。
 作家の林真理子さんは、週刊文春(6月1日号)の連載エッセイに、〈「うんこドリル」の大成功が本当に嬉しい。……ふだんはタブーとされる「うんこ」という文字を使って、漢字を書く方がはるかに楽しいことを子どもたちが気づいてくれた。/よかった、よかった〉とお書きになっていて、〈この出版不況の中、一筋の光を見つけたような思い〉と絶賛されています。
 たしかに子供は排泄物が好きです。「うんち」と言うだけでクスクス笑ったり、はしゃいだりします。精神分析の創始者フロイトは、幼児における排泄の快感を性に目覚める前段階ととらえ、肛門性愛は幼児期の未熟さから脱しないものという仮説を立てているほどです。
 でも、漢字をすべてうんこの例文で覚えさせるということに、少なくとも私は違和感を覚えます。例文を見てみると、「予想もしなかったところからうんこが飛んでくる」とか「神話の英雄はうんこのモンスターと戦った」とか、シュールといえばシュールですが、すべてがこの調子で、ページをめくっているうちに気持ちが悪くなってきました(笑)。
 いくら子供が排泄物が好きだからといって、「うんこ」という言葉を使って漢字の勉強をさせようというのは、子供への迎合ではないでしょうか。子供に寄り添うのと、子供と同レベルになるのとは全く別次元の話だと思うのです。
 あるお医者さんは、お子さんと同じ目線のお母さんが多くなったと嘆いていらっしゃいました。注射をすると「痛かったね、怖かったね」と、治療しているのに、まるで悪いことをしたように言われる。子供はそれを聞いて、やはり自分は怖いことをされたんだとショックを受け、恐怖が刷り込まれていく。そうではなくて、「これで病気が治るよ、よく頑張ったね」と前向きな声をかけてほしいとおっしゃるのです。たしかにその通りだと思います。子供と同じ目線に立つのは迎合でしかありません。
 私は子供のころ親からは「大人」として扱われ、「子供だから」という理屈は通りませんでした。それは考えてみればあたりまえで、子供でも大人でもやってはいけないこと、言ってはいけないことは基本的に同じだからです。小中学生の頃の友達は、私がいない時もうちの母に恋愛から将来の相談までしにきていました。子供だからと上から目線にならず、大人ならこうするんだという大人目線での対等な話し合いに友達は満足していたのではないでしょうか。因みに、私は母には男性からの誘いのかわしかたまで教わりました(笑)。

《続きは本誌にて》

深田萌絵(アナリスト)

最終更新:7/6(木) 9:00
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