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名波ジュビロ、躍動の2017前半戦。守備の改善が結実。サックスブルーはさらなる高みへ

7/6(木) 12:08配信

フットボールチャンネル

 5日の未消化試合開催をもって前半戦の全日程を終えた2017年の明治安田生命J1リーグ。J1復帰後2季目を迎えているジュビロ磐田は、勝ち点28を獲得し現在7位。昨年も前半戦は8位と健闘したが、今季の姿は昨季のそれとは大きく異なっている。サックスブルーはどのような点がバージョンアップしたのだろうか。(取材・文:青木務)

●昨年と比べて明らかに成長。「内容が全く違う」(名波浩監督)

 明治安田生命J1リーグは第17節を終え、今週末から後半戦がスタートする。ジュビロ磐田の成績は8勝4分5敗、得点24失点15、得失点差は+9。勝ち点28を獲得し、7位につけている。

 昨シーズンも前半戦で8位と健闘したが、その後失速。目標に掲げた年間勝ち点40にも手が届かなかった。今シーズンも最終節終了時点でどの順位にいるかは読めないが、少なくとも当時とは一味も二味も違う姿を見せている。

 前年の同時期に比べ明らかな成長を見せており、名波浩監督は「内容が全く違う」と言う。

「攻守両輪がうまく噛み合っているゲーム、噛み合っている時間帯が非常に増えてきたなと。満足はしないけど納得するゲームが増えてきた」

 特に強調しているのが守備の充実だ。鹿児島キャンプから取り組んできたことが成果として表われており、現在4連勝中のチームを支えるポイントでもあるだろう。中でも、3バックへの信頼は大きい。指揮官は一人ずつ名前を挙げながら、こう語る。

「(高橋)祥平はゴール前で必ず身体を投げ出す。そういうところをサボらないから、やられたとしても、一番我々が納得するやられ方をしてくれる。その意味でも素晴らしい」

 ゲームキャプテンを務める大井健太郎に対しては、「健太郎は相変わらずのリーダーシップを発揮している。もう一個上のラインコントロールという意味では、我慢強く高い位置を保ってくれていた」と、その成熟ぶりに目を細める。

 そして、主力として稼動する森下俊への賛辞も惜しまない。

「俊がすごく成長したなと思うのは、リスク管理の中でクリアの質や奪った後の質の意識がものすごく高くなって、いいレベルにあるなと。カミンスキーのカバーリングも8割は俊がやるし、そこもサボらずにやりきるので」

●強敵相手の3連勝も、慢心は広がらず

 もちろん、3バックの奮闘だけで守備の安定を語ることはできない。守護神のカミンスキーは毎試合ファインセーブを見せ、最前線の川又堅碁のファーストディフェンダーとしての貢献も見逃せない。ムサエフの帰陣の素早さは、名波監督も「ワールドクラス」と舌を巻く。また中村俊輔を中心に、試合状況に応じた戦いができている点もポジティブな要素だろう。

 ピッチに立つ11人が、それぞれの役割を全うしているからこその好調ではある。それでも高橋、大井、森下が守備の完成度を高め、チームに安定感をもたらしているのは間違いない。

「1試合1試合、全力でやるだけ」

 選手たちはこう口にする。『常套句』と言われれてしまえばそれまでだが、選手たちは目の前の試合の重要性をしっかりと理解して戦っているように思う。そうした姿勢がなければ勝利は掴めないはずで、6月を全勝で終えることなどできなかっただろう。

 5月14日の第11節・川崎フロンターレ戦を皮切りに、磐田はリーグ屈指の強豪との6連戦に臨んでいる。最初の3試合は川崎F、柏レイソル、サンフレッチェ広島を相手に1勝も挙げられなかった。この6戦を名波監督は「茨の道」と話していたが、厳しい結果に直面してもおかしくなかった。しかし、ガンバ大阪、浦和レッズ、FC東京を立て続けに撃破。世間の驚きをよそに、サックスブルーは勝ち点と自信を積み上げていった。

 そして、3連勝を果たしてもチームに慢心が広がることはなかった。前節・アルビレックス新潟戦でゴラッソを決めた櫻内渚は、紙一重のゲームをモノにしてきたと語る。

「カミック(カミンスキー)が止めてくれたり、相手のミスで外してくれたりと、危ないシーンが全くないかといったらそんなことはなかった。でも、相手のシュートを0本に抑えるくらいの気持ちでやっていけば負けることはないとも思えた。勝ってはいるけど内容がめちゃくちゃいいかといえばピンチもあるので、しっかり修正するところはしていきたい。危機感は全選手が持っているので」

●昨年経験した後半戦の失速。活かしたい教訓

 開幕からリーグ戦全試合フル出場を続ける大井は、勝って反省できるサイクルを「素晴らしいことだと思う」としつつも、こう続けた。

「次の試合はまた0-0で90分が始まるだけなので。負けて全てがダメになるとは思わないけど、勝ち続けた方がいいのは当然。上位がせっかく見えているので、より上を意識してプレーすれば、選手とチームの成長に繋がると思う。チャンスだと思ってやりたい」

 強豪撃破の直後に対戦した新潟は、浮上のきっかけを得ようと必死だった。しかし、結果は2-0で磐田が勝利。ビッグクラブから3連勝したサックスブルーは自分たちの力を決して過信せず、チャレンジャー精神で臨むことでアウェイから勝ち点3を持ち帰った。

 後半戦もこの勢いを維持したいところで、期待も高まっている。しかし、一筋縄ではいかないことは昨シーズンで嫌というほど痛感させられている。2ndステージわずか2勝と、チームは迷路を彷徨うかのように低空飛行を続けた。二桁順位が定位置となり、J2への逆戻りも現実的な危機として迫ってきた。J1残留を争っていたライバルが揃って足踏みしたため、順位が下がらずに済んだということもあった。その意味では運にも恵まれたが、同じ苦しみは味わいたくないところだ。

 夏場以降の戦いを見据え、新加入の中村俊輔は教訓を活かすべきだと主張する。

「去年は前半戦残り3試合くらいから、後半戦の途中までなかなか勝てない時期があった。それは暑さなのか、前線と後ろが離れすぎてしまったのか。前線の温度と中盤から後ろの温度がバラバラにならないようにしないといけない。暑くなればなるほど、そこが大事になる。グラウンド上の全員が同じ温度でいないといけない。それができれば去年みたいなことは起きない」

●2年越しの勝ち点40越えを単なる通過点にできるか

 名波監督は選手間の対話を重要視する。背番号10も「コミュニケーションを取って実際に活かせるのはこのチームの良さだと思う」と共感しており、勝利という目標へチーム全員が同じ方向を見ていることに手応えを掴んでいる様子だ。

 今シーズンの磐田は先制した試合で7戦全勝と、勝ち点3獲得の方程式ができつつある。だが、このレフティーは追いかける展開にも目を向ける。ベストゲームのひとつに第7節・サガン鳥栖戦を挙げたが、この一戦では最後の最後に試合をひっくり返し勝利を手にしている。

「逆転できた試合はいいと思う。うちは先制点を取ってからそのままのリズムで戦う、というのはできている。でも、先に取られてしまった試合でも粘り強くやっていかないといけない。先制されてから、どうリズムを崩さずに粘り強くやっていけるかというのが、後半戦の鍵になると思う」

 昨シーズンとは比較にならないほど、磐田がグレードアップしたのは言うまでもない。選手・監督ともに収穫の大きさを感じながらも、全く浮かれたところがないのも頼もしい。

 いつかは連勝も止まるだろう。もしかしたら、5月のように勝てない時期がまた訪れるかもしれない。しかし、名波ジュビロはその度に力強く立ち上がるだろう。危機感とチャレンジャー精神を濃厚に感じられる今の雰囲気を維持できれば、大崩れすることはないはずだ。

 2年越しの勝ち点40越えを単なる通過点とし、さらに上を目指してまい進したい。それを可能にする力が、今の磐田にはある。

(取材・文:青木務)

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