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繰り返す子どもの中耳炎、どうしたらよいですか?

7/6(木) 12:30配信

Wedge

質問:0歳から保育園に通っています。鼻水がしょっちゅう出て、中耳炎にも何度か罹ってしまっています。どんな治療法が良いのでしょうか。

答え:繰り返す中耳炎には、鼓膜用の換気チューブを留置する治療法があります。

答える人 藤巻豊先生(藤巻耳鼻咽喉科医院)

 まず、鼻水が頻繁に出るということですが、急性副鼻腔炎というケースが考えられます。人間の鼻は、息を吸ったり吐いたりする鼻腔と、隣接する副鼻腔という構造になっています。この副鼻腔に菌が付着すると、頭痛などの痛みや鼻水などの症状が表れます。また、長期化すると副鼻腔粘膜が腫れて、膿が溜まる慢性副鼻腔炎という状態になります。

 耳鼻咽喉科に比べて小児科のほうが数が多いので、初診では小児科を受診することが多いでしょう。小児科医のなかには、耳鼻科領域にも熱心な方もいますから、鼻水を吸い取り、鼻の奥の鼻水の色や溜まっている膿についても診てくれることもあります。ただ、動き回る小児の鼻を吸引することはなかなか難しく、鼻の入り口付近の鼻汁の色調で病状を判断されがちです。

 副鼻腔炎に対し、多くの小児科では薬を処方します。そして薬で症状が軽減すると通院をやめてしまうケースが多く見受けられます。そのため耳鼻科へ来院したときには慢性化していたり、中耳炎を合併していたりと重症化している場合があります。

 また、副鼻腔炎でなくても、ご相談のように保育園へ通っているお子さんは中耳炎を繰り返すことが多いですね。これは保育園に通う子どもの課題だと思います。保育園のような複数の子どもが同じ環境で長時間過ごすと、鼻腔に原因菌が付着しやすく、その菌が中耳炎を発症させます。加えて、子どもは顔が小さく、鼻から耳や喉への距離が近い上に、耳管が太いため、菌が中耳に入りやすいのです。

 中耳炎の原因菌は、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌が過半数以上を占めます。保護者の中には「肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種しているのに、どうして?」と思う方もいらっしゃるでしょう。定期接種のインフルエンザワクチンはB型で、肺炎などには効くのですが、中耳炎には効かないんです。

 急性中耳炎の主な症状としては、耳の痛みや耳垂れ、機嫌が悪くなるなどですが、反復性中耳炎になると、難聴などの症状を呈します。

 中耳炎に関しては、耳鼻科医と小児科医では治療に対する考え方が異なることがあります。

 一般的に小児科医は「小児急性中耳炎診療ガイドライン」に従い治療をします。このガイドラインに従って抗生物質を処方すれば数週間で急性中耳炎は治癒することがほとんどです。ただ、問題なのは、中耳炎を繰り返すことで、抗生物質の反復使用になってしまう点です。確かに、中耳炎が治っている期間が長ければ、その都度、抗生物質を服用する治療でも良いと思います。

 ただし、保育園に通う子どもは、その都度は治癒しますが、保育園などの環境で再び長時間過ごすことで、鼻症状が改善しないために、中耳炎を反復するお子さんが多いのです。保育園に通っていると1日3回抗生物質を服用するのが難しいことも関係があるのかもしれません。特に6カ月に3回、12カ月に4回以上、急性中耳炎に罹患した状態を反復性中耳炎と言います。

 急性中耳炎が完治せずに反復性中耳炎になったり、炎症が改善せず中耳腔に液体が貯まる滲出性中耳炎になることも多いです。

 耳鼻科の中でも、私は特に感染症が専門なので、中耳炎を繰り返す子どもには、鼓膜を小さく切開し、短期留置型の鼓膜用の換気チューブを留置します。このチューブは、3~4カ月で自然に脱落し、傷跡も残りません。このチューブが入っている期間は、多少鼻の調子が悪くても、中耳炎を発症することはまれです。

 ただ、耳鼻科医の中には、切開をしたがらず、換気チューブを挿入しない医師もいます。適切な治療を施さないと、鼓膜の一部が陥凹して中耳腔の粘膜と癒着してしまう癒着性中耳炎や中耳のまわりの骨が壊れていく真珠腫になってしまうこともあります。

 保護者の方が、お子さんの鼻水の色が現在はどうなっているのか、また中耳炎になっているかどうかはわかりにくいものですし、子どもは症状を言葉で訴えることができません。お子さんの鼻の調子が悪い場合、保護者は、お子さんが普段より頻繁に耳を触る、耳を触りながら泣く、夜泣きが多い、また家に誰かが帰って来た時に、普段ならばすぐに駆け寄っていくのに行かない、人の話を聞くと時に目をキョロキョロさせているなど変わった様子がないか注意深く見てあげてください。こうした行動で、子どもは耳の調子が悪いことを訴えています。

本多カツヒロ (ライター)

最終更新:7/6(木) 12:30
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