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「ムーアの法則」は死なず。IBMの新技術が超小型高性能チップを生む。

7/6(木) 19:10配信

WIRED.jp

IBMが、プロセッサーの効率を飛躍的に向上させる技術を発表した。自律走行車からスマホなどのガジェットに搭載される人工知能、5Gに至るまで──。こうしたイノヴェイションを加速させる可能性を秘めた、同社の新技術に迫った。

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シリコンはまだ限界に達していない──。2017年6月上旬、IBMの研究者グループが画期的なトランジスタの設計手法を発表した。この手法を利用すると、プロセッサーは「ムーアの法則」に従い、より小型、かつ安価になり続けていくことが可能になるのだという。

さらにいい点がある。研究者らが、実際に機能する独創的な方法によってこの設計を実現し、数年以内に新しいトランジスタを大量生産しようとしていることである。自律走行車やガジェット搭載型の人工知能(AI)、5Gの通信技術などが登場しつつあるいま、今日の主要なテック界のプレーヤーにとって念願のタイミングだといえるかもしれない。

「FinFET」というトランジスターの革命

過去数十年にわたって、半導体業界は小型化のことばかり考えてきたが、これには正当な理由がある。1枚のチップにより多くのトランジスターを搭載できるほど、より安価なコストで、より速い処理速度および高い電力効率を実現できる。

かの有名なムーアの法則とは、インテルの共同創業者ゴードン・ムーアが1965年に残した言葉であり、(同じ面積に搭載できる)トランジスタの数が毎年2倍になっていくというものだ。1975年にムーアはこの見解を「2年ごと」と修正した。半導体業界はこのペースを維持できていないが、それでもトランジスタを小型化する方法は常に発見されてきた。

小型化を続けていくためには、独創性が必要だ。最後の大きなブレークスルーは、2009年に起きた。このとき研究者らは、立体構造を採用した「FinFET」と呼ばれる新しいタイプのトランジスターの設計手法を発表した。2012年にFinFETトランジスタが初めて製造されたことで、半導体業界は22nm(ナノメートル)のチップ上にプロセッサーをつくることが可能になった。FinFETは革命的な一歩であり、数十年のなかで初めてトランジスタの構造を大きく変えたものだった。従来の2Dの平らなシステムではなく、電流をコントロールするために3D構造を用いたのである。

「FinFETは基本的に長方形の構造をしており、この構造の3つの面がゲートに覆われています」と、IBM Researchの半導体研究部門・副所長、ムケシュ・カーレは言う。トランジスタをスイッチにたとえてみよう。ゲートに異なる電圧をかけることで、トランジスターの「オン」と「オフ」が切り替わるからだ。FinFETは3つの面がゲートに囲まれていることにより、「オン」状態において流れる電流の量を最大化し、「オフ」状態において流出する電流の量を最小化する。結果的にトランジスターの効率が高まるというわけだ。

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最終更新:7/6(木) 19:10
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