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「人喰い」に魅せられた男の七転び八起き人生

7/6(木) 9:00配信

東洋経済オンライン

■異彩を放つ特殊古書店「マニタ書房」とは? 

 東京・神保町は古書店の街であり、数十軒ものお店が軒を連ねている。各店、特徴的な品ぞろえに余念がないが、そんな中にあって、なお異彩を放つお店がある。特殊古書店「マニタ書房」。まず店名である「マニタ」からして意味がわからない。聞いたことがあるような、ないような、懐かしいような、不穏なような、不思議な響きである。

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 店舗も不思議な場所にある。神保町の交差点から徒歩1分のすばらしい位置なのだが、エレベーターのない4階だ。

 曲がりくねった階段を上り、時計屋やマッサージ屋さんを超えて、少し息が切れた頃やっとお店にたどり着く。店内はいたってシンプルで壁際に本棚が設置され、ジャンル別に本が並べられている。しかし、ジャンル分けが普通じゃない。

 「毛」「やくざ」「人喰い」「ホームレス」「秘境と裸族」「日本兵」……などなど。普通の本屋ではまず見たことがない、タグが付いている。いわゆる珍本ばかりがそろったお店。なるほど「特殊古書店」である。

 ただ、珍本を集めただけではなく、独自の整理がされたうえで、アウトプットされているので楽しい。レイアウトにも愛情を感じる。なんとなく、主の人となりが伝わってくる。

 どれ反対側の本棚も見てみるか、と眺めていると、

 「ああ、そこは僕の本棚です。売り物ではないですよ」

 と声をかけられた。


 「マニタ書房」の主、とみさわ昭仁さん、56歳である。この場所は、古本屋であると同時に、とみさわさんの事務所でもある。とみさわさんはフリーライターを生業にしているので、店内で原稿を書いている。

 とみさわさんが、取材に出るときは、お店は閉めてしまう。不定期営業なので、事前に調べてから足を運ばなければならない。このように「マニタ書房」はなんとも不思議な古書店なのである。

 なぜこんな古書店ができることになったのか、主にお話を伺った。

■古本にハマったきっかけ

 とみさわさんが古本にハマったのは中学時代だった。以来、神保町はもちろん、渋谷、中野、吉祥寺……と東京中の古本屋に足しげく通った。中学校の時分から、漠然と古本屋になりたい、という夢はあったという。

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