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一人旅で笑えますか? 南沢奈央を驚かせた「旅のコツ」

7/7(金) 17:01配信

Book Bang

 先週、数年ぶりに手に取った吉本ばななさんの『日々の考え』の中に、一か所だけページの端が折られているところがあったのだが、読んでみるもピンと来なかった……なんていうことがあった。ドッグイヤーしているということは、感動したり、覚えておきたいと思ったはずだ。なのに読んでも思い出せないなんて。だけどやっぱりそうやって“しるし”が残っていると、つい考えてしまう。初見の新鮮な感覚の自分から、数年後ふたたび手に取る自分への、メッセージなのではないだろうか。
 ドッグイヤーしたページをもう一度、読み返してみた。そこには、吉本ばななさんがとても尊敬しているというご友人のひとりで、「天才」と呼ぶ人物の本のことが書かれている。たかのてるこさんの『ガンジス河でバタフライ』だ。著者が20歳のときに、長年夢見ていたひとり旅に出る、爆笑紀行エッセイである。吉本さん曰く、“旅が好きなあなたには参考になるでしょう”。それでおそらく興味が湧いて、ドッグイヤーをしたのだろう。

 というわけで、早速本を購入した。
 なるほど、あのステキな吉本さんが大絶賛するわけだ。
 文章から滲み出る、ポジティブオーラ。著者の人柄がとてもよく見える。明るくて、人にやさしくて、あたたかい人なのだろう。そして、笑顔がとびきり魅力的な人なのだろうなと思った。文章からそう感じたのは初めてだ。
 わたしもひとり旅をたまにするが、旅先で笑うことはほとんどない気がする。もちろん楽しいのだけど、ずっとひとりで過ごすわけだから仕方ない。だから著者がひとり旅で、しかも初めて行く場所で、言葉も通じない人たちと一緒に笑い合っていることが、衝撃だった。緊張している時こそ、笑うべし。不安な時こそ、笑うべし。そうすれば、自分の心だけでなく、相手の心も自然とほぐれる。このような、旅先だけでなく、実生活の対人関係でも使えそうな“コツ”がたくさん詰まっている一冊だ。
 著者は、初ひとり旅の香港のお粥屋さんで、隣に座っていたおじさんと、「グッド」という単語ひとつで話をし、しまいには仲良くなったりしている。それも自然に。言葉が通じないと思うと、話しかけるのも躊躇ってしまうのが普通だ。だけど懸命さや優しさがあれば、伝わるのかもしれないなと思った。単純な言葉でも、しぐさや感情の込め方次第で伝えられる。逆にいくら流暢でも気持ちが届かないときもある。
 わたしは普段から、言葉を発する前に必ず頭の中でたくさんたくさん考える。どの言葉をチョイスすれば一番よく伝わるだろうか、表現は適切だろうか、相手を傷つけないだろうか。結局、考えすぎてしまって気持ちの部分が小さくなってしまって、うまく伝わらないなんてこともある。だからこそ、著者があらゆる国で、真っすぐな表現で、多くの人と心を通わせている様子を見て、わたしは雷を打たれたような気分だった。

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最終更新:7/10(月) 15:04
Book Bang

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