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<都議選結果>都民ファーストの勝利ではなく自民党の自爆

7/7(金) 7:30配信

メディアゴン

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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秋葉原での街頭演説で大きなブーイングに安倍晋三首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言したことについて、菅官房長官は「きわめて常識的な発言じゃないですか」とおっしゃいました。

総理が指をさして絶叫した「こんな人たち」によってボロ負けしたのに政府は反省を口にするものの安倍さんも菅さんも振る舞いに反省は見えません。稲田さんも居座ったままですし、二階氏・麻生氏などによるマスコミ批判はとうとう官邸側情報の雄・田崎史郎氏までが批判しています。

誰が見たって、そして識者の皆さんが口をそろえるように、今回の都議選は都民ファーストが勝ったわけではありません。都民ファーストの公約を良く知って投票した人がどれだけいますか。ひとえに自民党の自爆です。

もう安倍政権はいやだ、今回は自民党には入れたくないという有権者の目の前に、きわめて都合良く小池百合子さんがいただけです。ですから、安倍総理や周辺が振る舞いを変えなければ支持率の回復は望めないはずですが。

特定秘密保護法、安保法制のころから、安倍さんのやり方は人をモヤモヤ、イライラさせ、ついには気分をムカムカさせるものでした。

そのあげくの森友問題です。

記録がないなんてウソでしょ。お役所が8億円の値引き根拠をキッチリ示せないなんてありえないでしょ。昭恵さんの100万円、ほんとは渡したんじゃないですか。昭恵さん付き秘書のFAXだって昭恵さんの指示でしょ。何もかも本気で調べりゃ分かることでしょ。籠池氏だけを悪者にするのはひどいでしょ。

数多い納得不可能な具体例のひとつをあげます。安倍総理は100万円の授受について

 「たった二人きりでですね、こちらが渡していないということを証明のしようがないというのは常識、いわば悪魔の証明と言われるわけでして」

と答弁しておきながら、別の質疑ではその場には昭恵さん付き秘書二人が同席していて、一瞬も離席することはなく、よって100万円の授受はなかった、と答弁しています。秘書二人がその場にいたのなら悪魔の証明でも何でもないですね。

こういう時、ふつうの日本人がどう感じるかと言えば、当事者に聞けば良い、です。公正な第三者が昭恵夫人と秘書二人に聞けば良いのですけど、安倍さんはそれをさせません。安倍さんが昭恵さんの主張を代弁するだけで国民が納得しますか。

昭恵さんを隠せばやっぱりアヤシイと感じるのです。国会質疑は時間で終わりますが、総理から「こんな人たち」と指弾された日本国民のモヤモヤはいつまでも終わりません。

加計問題も同じです。

なぜ加計学園には、安倍総理自身をはじめ、昭恵夫人、羽生田氏、稲田氏、木曽功内閣官房参与、井上義行元総理秘書官、下村博文氏と夫人、逢沢一郎氏など、総理周辺の人たちがこれほど多く関係しているのですか。

なぜ開学時期を30年4月と尻を切り、その上で「広域的に」などと入れたのですか。なぜ総理のご意向文書を怪文書と言い切り、文書を存在しないと断じ、出てきたら個人のメモのようなもの、と切り捨てたのですか。

なぜ事実の確認もせずに前川氏の発言を否定し、人格攻撃をしたのですか。読売の記事と官邸は関係ないのですか。なぜ文科省に文書があって内閣府にはないのですか。

加計問題もいろいろと腑に落ちないのです。なのに、納得の行く説明ができないまま強引に幕引きしようとするから、国民の心には澱のようにモヤモヤ、イライラがたまったのです。そうした「こんな人たち」の気持ちが、時とともにボデイブローのように効いてきて、都議選ではKOパンチになったのです。

さて「こんな人たち」にとって、直近の腑に落ちない件をひとつ。

下村博文氏が都議選中に週刊文春の記事に対する緊急記者会見で、なぜか徹夜明けのような目をしながらこんなことを言いました。

 「(200万円は加計学園の元秘書室長が)個人的に、私がパーテイをやるなら手伝ってやろうということで、知り合いに声をかけていただいて、11の個人および企業から集めてもってきてくれたもの。内容は調べなければわからないが、加計孝太郎氏からはないことは確認している。」

加計学園の秘書室長がなぜそんなことをするのかという疑問と、集めた金をキャッシュで持参するのは不自然という疑問と、下村事務所は個別に11枚の領収書を切ったとしているのに事務所のリストには「100万円・加計」とのみ記載され個別の記載がないのも疑問です。

しかも11人の詳細は調べるまで分からないと言いながら、加計孝太郎氏だけはないと言い切る根拠も大いなるミステリーです。だいたい、当時現職の文科大臣であった下村氏の事務所に、学部新設を申請していた加計学園の秘書室長が何度も訪ねるほどに親しかったこと自体が怪しまれても仕方のないところです。

下村発言ではあくまで当時の秘書室長による個人的な行為と言明していますが、恐ろしく手回し良く記者会見直後に、加計学園がパーテイ券を購入した事実はないと文書で発表しました。ところが、その文書には

 「当学園と関係のある個人や会社の11名のパーテイ券代を元秘書室長が預かり持参したもの」

と書かれています。あれ?秘書室長が個人的に知り合いから集めたお金の詳細をなぜ法人たる加計学園が知っていて、それをなぜ法人として発表するのでしょうか。下村説明ではこれは秘書室長個人によるあくまでプライベートな金集めのようなお話でしたが。

しかも加計学園本体が出していなくとも、すべてが「加計学園と関係のある個人と企業」のお金ならば、事実上は利害関係者である加計学園によるパーテイ券購入で、これのどこが個人的なお手伝いなのでしょうか。

これが違法か適法か知りませんが、実態は下村さんの会見でのニュアンスとはまったく違います。安倍総理、これは印象操作っていうやつではないのですか。こういう事だからモヤモヤイライラする「こんな人たち」が増えてしまうのですよ。

この下村さんという方、真面目な顔してコントを演じているような気もします。週刊文春に対して選挙妨害での告訴をにおわせながら、記者会見では情報を漏らした疑いがあるという元秘書について、「あえて名前は出しませんが」と言いつつ、その問題行動を認めたとする本人の「上申書」なるものと、その署名の筆跡を比較するための「退職願」までわざわざコピーして記者に配りました。あれ?「名前は出しませんが」って言いながら署名入りの文書を配るのですか。笑えます。

そもそもこんな疑惑段階の内輪文書を記者に配る下村氏の下品さに辟易としますが、元秘書はこの時に都民ファーストの候補者として都議選を戦っており、下村氏の指摘を否定し署名も自分の字ではないと反論しています。事実はともかく、週刊文春の記事を選挙妨害とする下村氏の考え方なら、下村氏の発言も元秘書の選挙妨害ということになりませんか。

総理が「こんな人たち」と攻撃しても、「こんな人たち」は紛れもない「国民」です。総理と意見を異にした「国民」ですが、加計問題に関し総理の説明に国民の8割が納得していないというデータがあるように、総理と意見を異にする国民は「ふつうの国民」です。

ほんとうに政権に過ちがないのなら、必要なのは「こんな人たち」に政権の正しさを示すことです。事実と論理と証拠をすべて明らかにして納得させることです。納得した国民の数だけ支持率は上がります。

7月4日現在、ようやく閉会中審査を1日だけ開き前川氏の参考人招致を決めました。しかし総理の出席はなく、どうにも消極的な印象です。追及をかわそうとする逃げ腰の印象が続く限り、いつまでも腑に落ちない「こんな人たち」は減りません。

逆にイライラ・ムカムカが続けば「こんな人たち」がますます増えて行くという現実に総理やその周辺はお気づきではないようです。

サルのごとく、反省、反省とポーズを作っていても何の意味もありません。安倍政権が根本から振る舞いを変えなければ、都議選で自民党を吹っ飛ばした「こんな人たち」パワーは、こんどは政権を吹っ飛ばすのかもしれません。

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

最終更新:7/7(金) 7:30
メディアゴン

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