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「報道の自由」は、オンラインセキュリティーの強化なしには守れない

7/7(金) 7:31配信

WIRED.jp

米国ではトランプ政権がメディアへの情報漏洩防止に神経を尖らせ、ジャーナリストたちは政府からの監視の危機にさらされている。いまや人々にとって、ジャーナリストへの情報提供は大きなリスクを伴う行動だ。報道の自由を守るため、あらゆるメディア企業にとって、オンラインセキュリティーの強化は急務である。

ニュースは「怒り」で拡散される

ドナルド・トランプ米大統領は2017年2月16日、司法省に対してメディアへの情報漏えいについて調査するよう要請したことを明らかにした。その際、大統領はこう警告している。「情報漏えい者を必ず見つけ出す。彼らは大きな代償を払うことになるだろう」

その後ショーン・スパイサー報道官は、ホワイトハウスのスタッフが所有している機器の抜き打ち検査を実施し、こっそりと記者に接触したりソーシャルメディアにアクセスしたりするためのアプリがないかチェックし始めた。もっとも、この検査の話もたちまちメディアにリークされることとなった。

それでもほとんどのジャーナリストが、いまだにメールや通話を暗号化していない。確かに、こうしたツールは使うのが難しい。だが、たとえテクノロジーが苦手であっても、情報提供者を守る責任が記者にはある。

監視されているかも、という恐怖も事実を捻じ曲げる

ウィキリークスは3月6日、CIAの機密資料「Vault 7」の内容を公開した[関連記事]。その内容は、CIAに自分の機器を奪われれば、暗号化チャットアプリ「Signal」のメッセージさえ解読されると人々に思わせるに十分なものだった。プライヴァシー擁護派は、記者(そしてあらゆる人々)が何を使えば安全でいられるのか、再考を余儀なくされるだろう。

セキュリティーを向上させる必要があるのは、調査報道を行うジャーナリストたちだけではない。『Teen Vogue』は電話の盗聴に関する記事を掲載しているし、『Vanity Fair』も入国禁止に関する話題を報じている。トランプ大統領を専制君主になぞらえる記事を掲載した『The Philadelphia Inquirer』の編集スタッフたちも、おそらく防御を固めたほうがよい。

暗号化プライヴァシーツールを利用するジャーナリストは、編集者や出版社にオンラインセキュリティーの重要性を理解してもらう必要がある。ただ、これはなかなか難しい。オンライン上の監視をオタクの趣味的な活動くらいにしか考えていないような人もいるからだ。

しかし、ジャーナリストの監視は、報道の自由といった民主主義の根幹に重大な影響を及ぼす行為だ。記者が調査を行ったり情報提供者と接触したりできなければ、あるいは誰かに監視される恐怖を感じずに記事を書けなければ、報道機関はその独立性を長く保つことはできない。PEN Americaが2013年に行った調査では、監視される恐れがあるだけでも、記者が自己検閲を行ったり、記者の考えや調査、記事に影響があることが明らかになっている。

グーグルは昨年、CNNや『New York Times』、『The Atlantic』の記者たちに対して警告を発した。その内容は、「国家の支援を受けた何者かがメールをハッキングしようとしている」というものだ。警告を受けた人のなかには、大統領についての記事を書いたジャーナリストも含まれるという。

ぞっとする話だ。メールがハッキングされれば、その人の雇用主や交際相手、経済状況、あるいはアルコール依存症を患っているといった個人情報まで知られる可能性がある(ヒラリー・クリントンの選挙対策責任者だったジョン・ポデスタは、お気に入りのリゾットのレシピまでばらされた)。

諜報機関がハッキングしたメールから得た情報を利用して、記者に対して記事内容を変更するようそれとなく圧力をかける可能性もある。政治家に対して、議会での行動を変えさせたり、選挙に出馬しないよう迫ることもできるかもしれない。

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最終更新:7/7(金) 7:31
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