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ポドルスキが背負う特大の期待と使命。Jリーグ変革元年、神戸が指した未来への一手

7/7(金) 12:09配信

フットボールチャンネル

 元ドイツ代表のFWルーカス・ポドルスキが、6日に来日してヴィッセル神戸入団記者会見に臨んだ。W杯で世界の頂点に立った経験を持つスーパースターは、Jリーグの未来を左右しかねないほどの大きな期待を背負っている。今度こそ“失敗”に終わってはならない。だが、それだけの期待に十分なほど応えてくれそうな気配を初日から漂わせていた。(取材・文:舩木渉)

●ポドルスキ、大きな期待を背負って来日

「こんにちは! ポドルスキです。よろしく!」

 元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキは、6日に行われたヴィッセル神戸への入団発表記者会見の冒頭で日本語の挨拶を披露した。

 3年前、ディエゴ・フォルランがセレッソ大阪入団記者会見で約2分間にわたって披露した日本語ほどではなかったが、明るい笑顔での挨拶は完璧だった。同時に大きな期待を感じずにはいられなかった。

 神戸の代表取締役会長を務める三木谷浩史氏は、ポドルスキ獲得の喜びを語った上で「ヴィッセル神戸にとってもそうですが、Jリーグにとっても、非常に記念すべき新しい出発をする日」と宣言した。
 
「これで日本人選手がどんどん海外に流出していくのではなく、ポドルスキ選手を皮切りに、むしろ世界のスーパースターがどんどんJリーグに来るような流れになればいい」

 2014年に、当時は現役のウルグアイ代表だったディエゴ・フォルランが日本にやってきて、我々は同じことを感じていた。あの時はチームの成績不振など様々な要素が複雑に絡み合い、フォルランだけでなくカカウも含めて、彼らの挑戦は失敗に終わってしまったように思える。

 だからこそ、今回のポドルスキののプレーに対する期待だけでなく、彼のキャリアをかけた挑戦を失敗させてはならないという戒めが心の中に同居していなければならない。そう強く感じている。

 ポドルスキの入団発表記者会見は非常に盛大に執り行われた。高級ホテルの巨大な宴会場に200人のサポーターが招待され、それとほぼ同等の数のメディアが詰めかけた。もはやJリーグ中継でおなじみとなった『DAZN』による生中継も行われた。1人の選手のお披露目としては異例の規模である。

 そんな中、ポドルスキは英語で言った。

「僕はプレッシャーと向き合って戦ってきた。毎日の練習や試合を通じてプレッシャーを感じながらフットボールをしてきたし、5万人が入ったスタジアムでプレーしたとしてもそれは関係ない。僕にとってプレッシャーは問題にならない」

 記者会見の中で、ただひとつ英語で投げかけられた質問が、最も意味のある質問だったかもしれない。それに答える時のポドルスキの顔は、他の質問に対しての顔と違った。

●目標はACL出場権獲得。困難なミッションだが…

 彼はドイツ代表でW杯を制しただけでなく、バイエルン・ミュンヘンやアーセナル、インテル、ガラタサライといった常に勝利を求められる環境でプレーしてきた。ケルンではエースとして常に結果を残さなければならない立場にあった。

 大きな期待への向き合い方、そして選手としていかに振る舞うべきか、勝利のために何をすべきか、結果を残すために必要なものは何か、すべて知っている。これまでのキャリアの中で積み上げてきた経験が、自信になって表れている。

「僕にとってこれは大きな挑戦になる。ヨーロッパでプレーしているのではなく、いまはアジアのJリーグにいる。もちろん大きな移籍ではあるけど、僕には目標がある。クラブやチームメイトたちと最後に目標を達成したい。最初の目標は3位以内に入ってACLの出場権を獲得することだ」

 長いキャリアの中でアジアのクラブに所属するのは初めてだが、ポドルスキの目標は明確であり、チームに合流すれば「ACL出場権獲得」に向けて何をすべきか、何が足りないのか、はっきりと伝えるだろう。

 神戸はJ1の前半戦を終えて11位に沈んでいる。目標とする3位との勝ち点差は11ポイント。今季中に追いつくのは決して不可能ではないが、極めて困難なミッションになる。加えて現在3連敗中で、前節の川崎フロンターレ戦は0-5の大敗を喫してネルシーニョ監督の進退が騒がれるような状況だ。

 それでもポドルスキが神戸にもたらす影響の大きさは計り知れない。彼の振る舞いには期待を抱かせるだけの要素があった。

 6日朝に行われたイベントには、神戸に到着したポドルスキを歓迎するため約800人のファンが参加した。そこで元ドイツ代表のスターは求められるサインや写真撮影のほぼすべてに応じ、子どもとふれあい、ファンとの対話を楽しんだ。

 ポドルスキのような選手がファンに歩み寄ってくれれば、「もっと応援したい」という気持ちは強くなるはず。そうやって互いの距離を近づけることで自分たちへのサポートがより強く大きくなることを、ポドルスキは自らの経験から自然に理解していたのだろう。

「僕はここでみんなを助けたいし、1人ではない。チームメイトたちが助けてくれると願っている。僕たちは顔を上げて、ハードに練習して、90分間ピッチ上で戦い、勝ち点3を獲りにいく」

●ポドルスキ獲得がJリーグの大きな転換点に?

 ポドルスキが口にした非常にシンプルな言葉は、フットボールの本質であり、基本となる考え方だろう。チームは全員が共闘しなければ力を発揮できず、常にポジティブな姿勢で、真摯に取り組んでこそ最高の結果が得られる。

「今までトレーニングで積み重ねてきたことや、経験の全てをファンの皆さんの前で見せられるように全力を尽くす。自分の経験をチームメイトに伝えていくことも大切だと思っている。皆さんにたくさんのゴールを見せたいし、僕自身がプレーすることを楽しみたい」

 トルコのガラタサライでプレーしていたポドルスキの日本移籍報道が出始めたのは昨年12月のこと。実際には「昨年11月に三木谷会長から熱烈なオファーをもらった」と選手本人が明かしているが、それから長い時間をかけて、ついに神戸の地を踏んだ。

 これから契約満了までの2年半にわたって、どんなプレーを見せてくれるのか。三木谷会長の言う「Jリーグ自体が国際的なリーグになって、日本全体を盛り上げていく。あるいは世界の人たちがJリーグを見る状況を本当に作り出せるのではないか」という目論見を実現するには、ポドルスキの活躍は欠かせない。

「Jリーグが一団となって、このように夢のあるスーパースターを日本に連れてくるということができる、大きなきっかけになるのではないか」

 世界的名門のバルセロナと大型スポンサー契約を結ぶなど、スポーツ界で意欲的な動きを見せる楽天や三木谷会長は、ビジネスの視点で今を大きなチャンスと捉えている。『DAZN』からの巨額の放映権料収入もあり、リーグとして大きな転換期を迎えているだろう。この好機を生かせるかはJリーグや各クラブの振る舞いしだいだと、神戸は証明したのかもしれない。

 ポドルスキ自身、まだ32歳で体は十分に動く。ドイツ代表からはすでに引退を表明しており、クラブでの戦いに専念できることもプラスに働くかもしれない。世界の頂点を経験したスーパースターが見せるトップクラスのプレーに期待は膨らむ。最短の公式戦デビューは7月29日のJ1第19節・大宮アルディージャ戦となっている。まずは気持ちよくいい結果を残して、おいしい神戸牛を食べられるよう願うばかりだ。

(取材・文:舩木渉)

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