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砂をつかって「宇宙最古の光」を2週間かけて描き、一瞬で消し去るというアートパフォーマンス(動画あり)

7/7(金) 18:50配信

WIRED.jp

ビッグバンの名残とされ、「宇宙最古の光」とも呼ばれる宇宙マイクロ波背景放射。長期間かけて精緻な砂のマンダラを制作し、壊すというチベット仏教の儀式。米国人アーティスト、レイチェル・サスマンはこのふたつを合体させたインスターレション作品をつくり出した。

夜の公園で息をひそめる、魅力的な「遊具」の姿

宇宙マイクロ波背景放射(CMB=Cosmic Microwave Background)は、ビッグバンの名残とされ、「宇宙最古の光」とも言われる。1964年に偶然発見されて以来、宇宙物理学者たちは、プランク宇宙望遠鏡のような宇宙観測所の助けを借りつつ、生まれたばかりの宇宙の姿を描き出そうとしてきた。だが最近、宇宙の誕生を表現した人物は天文学者ではない。科学者ですらない。アーティストだ。

インスタレーションアーティストのレイチェル・サスマンは2017年3月、「ニュー・ミュージアム・ロスガトス」で開催された展覧会のために、砂を使って「宇宙マイクロ波マンダラ(Cosmic Microwave Mandala)」をつくった。「最先端の科学的イメージと、ハイテクからほど遠いものを組み合わせたかったのです。その結果が砂です」

マンダラとは、ヒンドゥー教や仏教において宇宙を表すシンボルだ。だからCMBを模してマンダラをつくることは、適切に宇宙を表現することになる。

「砂のマンダラが何かを知っている人もいれば、宇宙マイクロ波背景放射が何かを知っている人もいますが、その両方を知っている人は多くありません。なぜならそのふたつは、異質の考え方や慣習だからです」。マンダラはしばしば、知識を探求するうえでの「健康」や「知恵」、そして彼女の最も好きな「勇気」を表しているとサスマンは説明する(チベット仏教の僧侶は、複雑な砂のマンダラを1週間かけて描き、それを壊して川に流すという儀式を行う。記事末尾にそのタイムラスプ動画を掲載)。

サスマンはそうしたことに思いを巡らせながら、多くの時間をかけてマンダラを制作した。宇宙学者がときおり「宇宙が赤ん坊だったころの絵」と呼ぶ、プランク宇宙望遠鏡から得た画像を使った作品だ。

1辺約3mの黒く四角い土台の上に、「チャクパー」という伝統的なチベットの道具を用いて、色のついた砂を落としていく。ノートパソコンの前にかがみこみ、プランク宇宙望遠鏡による元画像を事細かにチェックしながら、サスマンはときおり作業を止め、宇宙の大きさに思いをはせた。「体の不快さを異なる枠組みに置いていくような作業です」と彼女は表現する。

制作には2週間を要した。壊すのは一瞬だ。2016年3月5日、サスマンは絵筆を使い、笑いながら自分の作品を消し去った。「笑っていたのは、このプロジェクトが変だと思ったからではないのです──いえ、そう思ったのかもしれませんね。宇宙のジョークか何かだと」とサスマンは語る。

マンダラをつくることは、それが永遠のものではないと受け入れることでもある。だからサスマンは作品を消し去ることにした。「宇宙を壊すのは、何だか楽しい感じもするのです」

TEXT BY ANNA VLASITS

最終更新:7/7(金) 18:50
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