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不安障害に苦しんだテネリフェ・柴崎岳を支えたクラブと監督の“愛情”

7/7(金) 6:00配信

週プレNEWS

テネリフェ(スペイン2部)と柴崎岳の目標であったプリメーラ(1部)昇格は、ヘタフェの前に後塵(こうじん)を拝し、あと一歩のところで水泡に帰した。きっと、テネリフェの選手たちは「あと1点を決めていたら、守れていたら」と、このオフシーズンに問い続けるのだろう。

勝負の世界に「たられば」がないことは誰もがわかっている。それでも、テネリフェの番記者である『ラジオ・マルカ』のミゲル・エルナンデスは、移籍直後に柴崎を襲った不安障害を悔やんだ。

「ガクはテネリフェの選手にはなかったキャラクターを持つ選手。悔やまれるのは移籍直後の問題だ。その問題がなければ、チームは自動昇格を果たしていたかもしれない」

昇格プレーオフの4試合中3試合で、チームの得点に絡むパフォーマンスを見せた柴崎を見ると、本当に不安障害があったのかと首をかしげたくなる。だが、彼の代理人や日本代表の関係者が柴崎の状況を確認する様子や、体調を崩したことがひと目でわかるような写真があったことは紛れもない事実だ。

以降、チームは柴崎の適応を最優先に、日本人MFが落ち着いてサッカーに集中できるよう、メディアから遠ざける決断をする。しかしその決断は、テネリフェの選手としてデビューしたレウス戦で対応がなかったことから、「過保護すぎるのでは」とスペインメディアがクラブの姿勢を疑問視したこともあった。

とはいえ、クラブ関係者は柴崎を特別待遇したとは考えていない。足を故障した選手に手術を勧め、風邪をひいた選手が薬を飲み自宅で療養するのと同様に、一日も早くチームの戦力として復帰させるための処置と考えてのものだった。

広報のハビエル・アルマスは「大事なのは、選手本人が落ち着いた状況にあることだった。記者は日本人だけでなくスペイン人もいる。選手がどのメディアに対しても平等に話すことを、自分たちは優先した」とふり返る。その言葉どおり、不安障害を克服してからは、柴崎が主役となった試合ではメディアの前に姿を見せていた。

シーズン終盤、柴崎が好パフォーマンスを見せる要因となったのは、症状に対して適切な処置を行なったクラブの力だけではない。監督のマルティの存在も柴崎にとっては幸運だった。

現役時代に家長昭博(現・川崎フロンターレ)とマジョルカで共にプレーをした経験のある青年監督は、日本人のシャイな性格を理解していた。柴崎をチームのレベルをアップさせられる選手と惚(ほ)れ込んで獲得を決断した、柴崎の後ろ盾となる人物でもあり、見切りをつけずに問題が解決するのを待った。

また、柴崎が孤立しないよう気にかけていた、キャプテンのスソをはじめとしたチームメイト、クラブW杯でレアル・マドリードを苦しめたタレントを愛したサポーターやメディアなど、テネリフェの多くの人々の愛情に支えられ、本来の力を取り戻した。

残念ながら昇格を逃したことで、テネリフェと柴崎の契約は6月末で終了した。クラブは契約を打診し、新シーズンも共に昇格を目指すことを考えている。だが、すべては柴崎サイドの返答次第。残留か移籍か、気になる夏の移籍市場の幕は上がっている。

(取材・文/山本孔一 写真/Getty Images)

最終更新:7/7(金) 6:00
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