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「モエルゥ」なアシに萌えられる ニューC3は正統派シトロエンだった!【CITROËN C3試乗】

7/7(金) 20:22配信

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今夏、日本にようやく上陸するシトロエンのニューC3に、フランス本国で1200㎞超ほど乗ってくることができた。

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いきなり脱線気味で恐縮だが、よくスイーツの世界で「モエルー・ショコラ」といったら、中味がとろりと流れ出すチョコレート焼き菓子のこと。よってフランス語の「moelleux(モエルゥと発音)」は「やわらかい」と訳されがちだが、カタカナで聞くと、いつも何か違う!?的な違和感があった。

というのも、パンケーキやスクランブルエッグやスムージーなどがひたすら「ゆるフワ」な様子は、むしろ「aéré(アエレ、エアが入ったの意)」とか「mou(ムゥ、ゆるいの意)」と、かの地では形容される。「モエルゥ」は、カリッと焼き上がった固い部分から始まって、トロけるほどの柔らかさに至るのが前提というか、独特のシズル感があるのだ。

それは、口の中を切っちゃうほど皮は固いが中味はしなやかなバゲット然り。表の薄皮だけカリカリで、中の層がジワリと弾むようなクロワッサン然り。噛めば噛むほど肉汁の溢れる分厚いステーキ然り。旨味とは、剛から柔へ、無限の諧調テクスチャ―の中にこそ潜んでいる・・・・そんなニュアンスなのだ。



前置きが長くなったが、シトロエンのニューC3の足回りは、まさしく「モエルゥ」と呼ぶにふさわしい出来映えだった。ハイドロプニューマチックという油圧と空気で減衰力を制御する仕組みを廃した時、シトロエンのエンジニアは、もはや金属バネでもハイドロの乗り味は再現できる、そう述べていた。聞いた時はマユツバに思っていたものの、C4がマイナーチェンジされた時は、確かにもっとも近い実現例だと唸らされた。

ところが、新しいC3の「揺らぎ感」ときたら、まさしくハイドロの動きそのもの。1000㎏ちょっとの車重にハイドロかくやの乗り味は、もはや80年代の名車「BX」の再来とすら感じられた。いや、全長4mを切るニューC3はBXよりコンパクトだし、3気筒の1.2Lターボのピュアテック110を積むだけに、鼻先の動きは軽い。しかもデザインもいたって21世紀的だ。



LEDとヘッドライトが2階建てになった顔つきはC4ピカソから、ドアサイドの「エアバンプ」と呼ばれるスニーカーのソールのような衝撃吸収クッションや、内装の雰囲気は、人気ながら限定モデルに終わったC4カクタスに準じる。近頃、ヤル気のないデザインの多かったBセグのコンパクト・ハッチバックで、こうも元気でポップなデザインは、見ていて気持ちをアゲてくれる。実際、SUVではないが、見た目は車高の高いクロスオーバー風。シートに腰を下ろした時の視線もヘタなSUVより高い。



水平基調で、ラウンジかサロンのような内装は、C4カクタスに似て落ち着きリラックス路線といえるが、意外にもシートは横方向のサポートがよく、コーナーでお尻がズレることもない。リアシート中央にもヘッドレストを備えるなど、居住性や快適性の面で「しょっぱい」と感じるポイントが見当たらないのだ。強いてあげれば乗り降りで身体を支える天井のハンドルが省かれている点だが、上着をかけるフックは備わっている。



いまだプラットフォームはプジョー207や旧C3から受け継がれた、PSAのプラットフォーム1で、前席シート下、横方向に補強メンバーが入ったという。お世辞にも新しいプラットフォームではないが、段差を超える際のマナーの穏やかさ、静粛性の高さ、乗り心地のフラットさは、Bセグ・コンパクト離れしている。それは高速道路でも変わらず、長距離を難なく、飲み込むようにこなしてしまう。



得意は90㎞/h制限の下道だ。フランスの路面もけっこう荒れていたりツギハギ舗装の凸凹が少なくないのだが、C3は波間をボートが切っていくように、しなやかに路面を捉えて進んでいく。ステアリングの中立付近はむしろ遊びが多いと感じるのに、速度が増すほどに座りがよくなる感覚だ。ロール量は少なくないが、粘る領域に当たるのも早く、予想できる動きだから怖さを感じない。積極的に走らせるもよし、のんびり構えて流すもよし、そういう懐の深いロードホールディングだ。



ただしC3の弱点を強いて挙げれば、フランスの高速道路の130㎞/h制限で巡航していると6速3000rpm弱、平均燃費がリッター15㎞強と、下道でも負荷のかかる走り方をしていたとはいえ、あまり伸びなかったことだ。乗員が2人、3人と増えれば、さらに悪化する可能性もある。とはいえ110km/h巡航では2600rpm程度だったので、速度域が低い日本の道路事情ではもっと伸びるだろう。



ちなみに距離をついつい伸ばしたくなる仕掛けは、走る・止まる・曲がるだけではない。バックミラー一体で修められたドライブレコーダーには、Wifiとアプリを経由して、フロントスクリーンの先に広がる景色を、SNSにすぐアップできる「コネクティッド・カム」が備わっている。



車窓に広がるキレイな景色は従来、ドライバーならカメラを出すこともできないし、停めるにも安全確認が必要で、なかなかモノにできるものではなかった。それがほぼ自動的に記録できるようになったことで、景色のいい場所へと寄り道をしたくなる。



そう、寄り道がしたくなる実用ハッチバックであること。それこそがニューC3の強烈な存在理由なのだ。

(NANYO Kazuhiro)

最終更新:7/7(金) 20:22
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