ここから本文です

テロワールを楽しむ宮崎芋焼酎 100年の歴史を数える「旭萬年」の蔵元へ

7/7(金) 12:01配信

CREA WEB

芋焼酎ロックにお湯を注いで「オンザロッキュー」

 いまだ眠る日本の魅力を発掘するために、日本のどこかで数日だけオープンするプレミアムな野外レストラン「DINING OUT(ダイニング アウト)」。第10弾の舞台は宮崎。2017年5月、「DINING OUT MIYAZAKI with LEXUS」が開催された。

 今回は、前回の記事で触れられなかった、宮崎の食文化には欠かせない芋焼酎を紹介しよう。6皿目に提供された「循環する風土から生まれる料理」と名付けられた、宮崎地鶏を使った一皿がこちら。

 この料理とマリアージュしたのが、宮崎市で100年の暖簾を守る芋焼酎の蔵元、渡邊酒造場の芋焼酎「黒麹 旭萬年」だ。「オンザロッキュー」との名で提供されたグラスを覗くと、透明な焼酎に浮かぶ氷。氷の上に振られた粉末は山椒だ。そのまま、いわゆるロックで飲むのかと思いきや、ここからがユニークなところ。飲む前に、グラスにお湯を少々注ぐのだ。

「こうすることで、芋焼酎の香りと甘みが出てくるんです」と言うのは、渡邊酒造場4代目の渡邊幸一朗さん。

「焼酎には糖質が含まれていないのに、ほんのり甘さを感じます。これは、焼酎がわずかの油分を含むため。飲む寸前にほんの少しお湯を注ぐことで油分が溶けだし、焼酎が持つ甘みと香りをより感じることができるのです」とも語る。

「ちなみに“ロック湯(ゆ)”を何度も早口で言ってみてください……。ね、だから“オンザロッキュー”なんですよ(笑)」

 今回は、山椒の香りを加えることでスパイシーさとすっきり感をプラス。キュッとした飲み口に繊細な香りが加わったオンザロッキューと、自然放牧鶏のパンチある旨みとの相性が抜群だった。

 渡邊酒造場は、宮崎市街から電車で20分ほどのところにあり、代々家族で「旭萬年」のブランドを築き上げてきた。

 今回は4代目、渡邊幸一朗さんの案内で、酒造場を見せてもうことになった。

風土で醸すことで生まれる「旭萬年」だけの味

 渡邊酒造場があるのは、鰐塚山の麓に広がる宮崎市田野。酒造場の歴史は、アメリカに渡った初代が帰国後に、この地で焼酎蔵を購入したところからはじまる。

 代々受け継ぐブランドが「旭萬年」。4代目となる渡邊幸一朗さんは、受け継いだ芋畑と醸造の技術を守りつつ、新しい工夫とチャレンジを続ける毎日だ。

 渡邊さんが大切にしているのが「風土で醸す」ということ。「たとえばワインの世界では、テロワールという考えがあります。土壌や気候、地形がワインに与える影響のことで、焼酎にも同じことが言えると思うのです」と言う。

「焼酎は、目に見えない微生物が作用して造られます。微生物は目に見えないけれども、土の中にも、空気の中にも存在する。これらを活かして、ここでしか生まれない焼酎を造り続けたい」

 たとえば通常、収穫した芋に付いた土は、丁寧に水で洗い流す。しかし土壌にも、その土地にしかいない微生物が含まれる。土は醸造の過程で取り除くことができるので、微生物の力を活かすため、渡邊酒造場ではそれほど几帳面に土を取り除かないのだそうだ。

 酒造場の環境も面白い。「宮崎市田野というエリアは、実は漬物用大根の一大生産地なのです」と教えてくれた。この地では、冬になると漬物用の大根をやぐらに吊るして干す風景が見られるのだそうだ。聞くと、渡邊酒造場の隣も大根農家。

 酒造場内に風を通して場内の室温を調整するのだが、あるとき専門家にもろみの成分の調査をしてもらうと、漬物に多く含まれる乳酸菌の量が多かったという。

「もしかすると、大根農家に囲まれた環境のせいかもしれませんね。でも、この環境を含めて旭萬年の味ができている。もしこの町から大根農家がなくなったら、焼酎の味が変わることがあるのかもしれない。でも、それが旭萬年の味。“風土で醸す”とは、そういうことだと思うのです」

 渡邊さんの視点は未来に向いている。将来の地球環境を考えて、廃棄処理のためのプラントを新設したほか、新しいアイデアで「旭萬年」の可能性を広げている。

 食事と一緒に焼酎を楽しめるようにと、アルコール度数を12度に抑えた「旭萬年 Spicy.Sweet.Smooth」も商品化した。「アルコール度数が25度前後の焼酎は、食事と一緒に飲むには度数が高い。そこで度数を下げて、水やお湯で割らずにダイレクトに味わってもらえたらと思って造りました」。

 また、5月中旬から8月末まで限定の「夏のまんねん」はアルコール度数20度。暑い夏にさっぱりと飲みやすく、ロックでついつい杯が進む。

 渡邊さんは、「DINING OUT MIYAZAKI with LEXUS」のゲストへのお土産に、2代目が最後に手掛けた10年古酒を用意した。「祖父は約60年間、焼酎を造り続けた人で、旭萬年の基礎をつくった大きな存在。DINING OUTがちょうど10回目を迎えたということで、ゲストの皆さんにも祖父が手掛けた味を一緒に楽しんでもらいたい」と言う。

 100年前にはじまった家業を守り、続け、チャレンジしていく渡邊酒造場では、今日も強烈に照りつける宮崎の太陽の下、家族総出で芋畑に出ているのだろう。5月に見た芋畑はこれから夏を越え、秋に収穫期を迎えて、ようやく醸造の過程にはいる。宮崎市田野の風土で醸された、今年の「旭萬年」で乾杯する日が待ち遠しい。

DINING OUT
http://www.onestory-media.jp/diningout/

ONE STORY
http://www.onestory-media.jp/

渡邊酒造場
http://asahi-mannen.com/

CREA WEB編集室

最終更新:7/7(金) 12:01
CREA WEB

記事提供社からのご案内(外部サイト)

CREA

文藝春秋

2017年9月号
8月7日発売

定価780円(税込)

100人の、人生を豊かにする1冊、1曲、1杯
本と音楽とコーヒー。

岡村靖幸×ほしよりこ
高橋一生「ひとり、静かな生活」

ほか