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視力・聴覚低下や命にも係わる「乳児血管腫」は心臓薬で治療

7/8(土) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 乳児の顔や体に生じる赤や青のアザは、血管やリンパ管の増殖や形態異常が原因で生じる。より表面に近い部分にできると赤いアザに、深いところは青く見える。これら乳児のアザは、従来は一括して血管腫と呼ばれてきた。しかし近年、約9割が小学校入学までに自然に小さくなる乳児血管腫に代表される血管内皮細胞の血管腫と、血管の形態異常で起こり、治療しなければ生涯続く血管奇形とに分けて考えるようになっている。

 乳児血管腫は、血管内の内皮細胞が増殖したもので、新生児の0.8~1.7%に生じる。見た目が赤く盛り上がり、イチゴのように見えるため「いちご状血管腫」とも呼ばれる。

 国立国際医療研究センター病院小児科の七野浩之医長に話を聞いた。

「乳児血管腫は、発生の半年から1年にかけて増殖のピークを迎え、その後は少しずつ減り、消失に向かうので大半は治療の必要はありません。ただ、目や耳を覆うように生じた血管腫や気管を塞ぐ位置に生じたものは、視力や聴力の低下や命に係わるため早期の治療が欠かせません」

 乳児血管腫では、その16%に痛みを伴う潰瘍が形成され、視覚障害は5.6%、気道閉塞は1.4%も発生する。治療にはステロイドやインターフェロンαなどの薬物に、レーザーの放射線治療などが併用されてきたが決定的な効果は得られなかった。

 ところが2008年、アメリカの有名医療雑誌に画期的な治療効果を示す事例が掲載された。右目が血管腫に覆われ、まったく目が開かない乳児が心臓機能の悪化のため心臓の治療薬プロプラノロールの服用を開始したところ、1週間もしないうちに血管腫が減り始め、4か月後にはほとんど目立たないまでになった。この偶然の発見から、血管腫に効果があるのでは、と他の研究者も研究を開始、効果が確かめられてきた。

 日本では2016年に小児用シロップ薬が保険承認されている。

「血管腫の中には、カサバッハ・メリット症候群があります。これは血管内皮が大増殖すると血管内部で血小板とフィブリノゲンという止血物質が使われ、その結果、体全体で減少していきます。そのため何かにぶつけただけで、多量の出血があるなど命に係わることもあります。その治療薬を探す臨床研究で、mTOR阻害剤に効果がありそうだとわかりました」(七野医長)

 mTORは細胞の増殖・成長などに関わる物質で、がん細胞を活性化させる。そこで、がん治療の分子標的薬のシロリムスというmTOR阻害剤を使用すると、開始9か月目に血管腫がほとんど消え、血小板やフィブリノゲンも正常値に戻ることが確認された。今後も症例を増やし、研究を続けていく。

 血管腫と血管奇形は、見た目が似ているものもあり、まず血管内皮の腫瘍の有無の確認を画像や病理検査で行ない、正確な診断が必要だ。

●取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2017年7月14日号