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新江ノ島水族館「クラゲ展示はここから始まった」――水族館哲学2

7/8(土) 11:00配信

文春オンライン

 水族館のすべてを知り尽くす敏腕プロデューサーが、全国の水族館から30館を独自の哲学で選んだ『水族館哲学 人生が変わる30館』が刊行されました。今回紹介する新江ノ島水族館は、中村さんが水族館プロデューサーとして独立して初めて手がけたところ。いまやメジャーな展示であるクラゲや、ショーアップされたイルカショーなど、この水族館発で有名になったものがたくさんあります。

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挑戦的・先進的展示法の先駆者

 60年間にわたって日本の水族館業界を牽引してきた江の島水族館に代わり、2004年、新江ノ島水族館としてリニューアルオープンした。それから10年余経った今、スタッフの努力で、江の島水族館の時代に劣らず、新しい水族館の時代を切り開いている。 

 新江ノ島水族館は、目の前に広がる相模湾について展示することにこだわった水族館だ。水族館の主な部分が、相模湾をテーマに展示がなされている。そのため、川の展示も相模川の上流の展示一本に絞られている。 

 また、江の島水族館時代の長い歴史の間に積み上げた技術を存分に活かした、新感覚の展示も見所だ。日本で初めてクラゲ展示を始めた誇りが、クラゲ展示に特化した癒しのホールの設置に繋がり、長いイルカショーの歴史が、日本初のミュージカル仕立てのイルカショー「ドルフェリア」の上演へと結びついた。いずれも挑戦的かつ先進的な展示として、今後の水族館の歴史に残るだろう。

私がプロデュースするうえで、本当にやりたかったこと 

 実は私にとっても、水族館プロデューサーとして独立して初めて展示を監修監督させていただいた水族館であると同時に、展示に「観覧者起点」の理念や「水塊」の概念を初めて実践した水族館で、感謝の念が尽きない。 

「水塊」を導入したのは、展示テーマとした「相模湾」と「クラゲファンタジーホール」の展示においてだ。狙いは、縄文時代から人の暮らしに恵みを与えてきた相模湾を、日本人が海に対する感謝と畏れの気持ちを持てるような水中世界として展示すること。そして、「全ての命に魂が宿る」と考える日本人の世界観に訴えかけ、クラゲの浮遊感の儚げな美しさを感じさせることだった。

 1990年前後より国内で始まった水族館の建設と建て替えラッシュでは、そのほとんどが一様に、米国のリゾート開発や水族館の展示技法に学び追いつこうとする、まるで明治時代の欧化主義が甦ったかのような様相だった。 

 そこで、新江ノ島水族館が相模湾にこだわるのなら、日本の風土文化にもこだわり、日本らしい展示を世界に発信すべきであると考えたのだ。理由の一つには、それが、欧米リゾート的な水族館の続出にそろそろ食傷気味の日本人には、きっと新鮮に映るであろうという狙いもあった。

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最終更新:7/14(金) 11:36
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