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高校野球 地方大会は甲子園の「予選」なんかじゃない

7/9(日) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 7月8日土曜日から、第99回全国高校野球選手権の地方大会が本格的にスタートした。今年の注目選手は清宮幸太郎選手(早稲田実業)といわれるが、甲子園取材歴24年のフリーライター・神田憲行氏は「高校野球の魅力はスター選手だけじゃない」という。

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 ある年の神奈川大会を球場で観戦していたときのことだ。お目当ての試合の前の試合をたまたま見ていた。コールドゲームで、しかも5回で終わっていたと思う。試合終了の挨拶をしたあと、負けた高校の選手が泣き崩れた。応援団席前に挨拶に行こうとしても、泣き崩れて立ち上がれなくなるほどになっている選手もいた。

 悪いけど、そんな泣くか?と思った。大差で全然惜しくない試合じゃん。

 選手の挨拶が終わった後、応援団、といっても丸刈りの小太りの生徒ひとりだけだったと思うが、くるっと観客席に向かって叫んだ。

「みなさん、応援ありがとうございました! 僕たちはこの学校が大好きでした!」

 えっどういうこと?と思いネットでその学校のことを調べてわかった。その年で閉校が決まっていたのだ。

 野球部の3年生だけでなく、学校にとっても「最後の夏」だったんだな。だからなんとか1勝でも、少しでも良い試合をしたかったのだな。それが9回まで試合を続けることができず、その悔しさがあの選手たちの涙につながったのだろう。

 地方大会のことを夏の甲子園を前提にして「予選」という人がいる。私はそのような呼び方をしない。「予選」というと、なにか甲子園に出場することのみに価値があるように見えてしまう。

 だが地方大会には、1勝をあげることを目標にして出てくるチームもあれば、1点を取ること、あるいは出場そのものを目標にしている高校もある。地方大会も目指すべき、れっきとした大会なのである。

 新聞のスポーツ欄にはこれから、各地方大会の結果がずらずらと並んでいく。私にとって夏の風物詩だ。自分が卒業した高校が初戦負けして「また今年も見に行けなかった」と思ったり、統合して校名変更している学校の存在を知り、時代の移り変わりを感じることもある。

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