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【開発秘話】累計出荷数が395万個を突破した花王『ビオレ/メンズビオレ 薬用デオドラントZ』

7/9(日) 7:30配信

@DIME

 汗が気になるシーズン。とくに汗かきの人は、汗と同時に汗のニオイも大いに気になるだろう。そんな汗かきの人たちに現在、好評を博しているのが、花王の『ビオレ/メンズビオレ 薬用デオドラントZ』(以下、薬用デオドラントZ)である。

 同社のスキンケアブランド『ビオレ』と『メンズビオレ』から発売された『薬用デオドラントZ』は、殺菌作用を長持ちさせることでたくさん汗をかいてもニオイを防ぐほか、制汗デオドラントとは異なり汗を蒸散させるという特長を持つ。足の指に塗るのに最適なエッセンスタイプと、ワキに塗るのに最適なロールオンタイプを用意。2017年2月に発売されたが、6月20日現在で累計出荷数量が395万個(ビオレ247万個、メンズビオレ148万個)に達している。

■汗かきの人ほど、既存の制汗デオドラントに不満

『薬用デオドラントZ』の開発は、スキンケア商品の世界的な市場動向と関係していた。ブランドマネジャーを務める小林恵美さん(ビューティケア スキンケア・ヘアケア事業ユニット スキンケア事業グループ ビオレグループ)は、次のように話す。

「『ビオレ』というブランドと事業は日本ではトップですが、この先、アジアやそれ以外の地域でもさらに発展させていきたいときに、市場規模が世界で2番目に大きいデオドラントは必要不可欠な商品カテゴリーです」

 このため2014年秋に、『薬用デオドラントZ』が企画される。ちょうどその頃、研究所でも、他社にはマネでない新規性の高い汗やニオイ対策の新技術の開発が進んでいた。

 ただ、日本の女性用デオドラント市場は横ばい、もしくはやや縮小傾向。そのため、新技術の生かし方が悩ましかった。そこで、既存の制汗デオドラントに満足していない人たちを対象に聞き込み調査を実施し、その人たちをユーザーとして獲得するためのブレークスルーポイントを探った。

 調査の結果、汗かきな人ほど、既存の制汗デオドラントのニオイ防止効果に満足していないことが判明。たっぷり汗をかいても臭わせないものを、新技術で実現することにした。

■オレンジジュースをヒントに開発された「汗殺菌スタミナ技術」

『薬用デオドラントZ』を実現する上でキーになったのが、マネのできない新規性の高い技術であった。それは、「汗殺菌スタミナ技術」と「汗瞬間ドライパウダー技術」の2つである。

 まず「汗殺菌スタミナ技術」だが、これは汎用殺菌剤を汗にしっかり溶解するようにし、汗中の菌をもれなく殺すことでニオイの発生を抑制するもの。しかも、効果が持続する時間が1日中と長いのが特長だ。

 汗が臭うのは、肌の表面にいる菌が汗の成分を食べることによってニオイ成分を出すため。そのため、ニオイを抑えるためにこれまで、菌を殺すというアプローチが採用されてきた。しかし、汎用殺菌剤は水に溶けづらく、菌を殺し切れない。汗をたっぷりかく人が、これまでの制汗デオドラントのニオイ防止効果に不満を持っていたのは、このためであった。

 界面活性剤などを使えば、問題は解決できる。しかし、この方法だと、殺菌剤が水の中に出てこなくなる。そこで開発されたのが、「汗殺菌スタミナ技術」というわけである。

「汗殺菌スタミナ技術」はオレンジジュースをヒントにして開発された。オレンジを搾りしばらく放置すると、容器の底に不純物が沈殿するが、果汁100%飲料として売られる際は、不純物が液体中に溶け切っている。これは、充填する際に滅菌を行なっているため。これにヒントを得た開発担当のハグラさん(ビューティケア スキンケア・ヘアケア事業ユニット スキンケア事業グループ 商品開発 開発リーダー)は、「滅菌処理技術のエッセンスを生かし、殺菌剤を水に溶かす技術を開発することにしました」と話す。

 オレンジジュースからヒントを得たのは、今から5年ほど前。「最初はビーカーぐらいの量でも溶けなかった」(ハグラさん)こともあり、工場で安定して量産できるようになるまで時間がかかった。

■肌上に形成した塗膜で汗を吸収・蒸散させる「汗瞬間ドライパウダー技術」

 もう1つの「汗瞬間ドライパウダー技術」は、肌上に塗膜を形成することで出てきた汗を素早く拡げて蒸散させるもの。珪藻土をイメージするとわかりやすいだろう。基剤に粉体を使用しており、塗布後に乾くと、塗膜が形成される。

 制汗デオドラントでは、汗腺を制汗アルミニウム塩でフタをすることで汗を抑制するのが一般的だが、「いくら汗腺を強くフタをしても、すごく汗をかいたときは汗が漏れ出てきてしまいます」とハグラさん。汗かきの人が既存の制汗デオドラントのワキ汗防止効果に不満を持つ理由の一端が、これであった。そこで、汗は止められないという前提に立ち、2014年頃から「汗瞬間ドライパウダー技術」を開発することにした。

 この技術は、多孔質粉体を連結させて形成した広い塗膜で汗を吸収・蒸散する。しかし、粉体は汗で流れ落ちてしまう。流れ落ちないようにするためには、粉体同士がくっつきやすくなければならなかった。このため、接着性のある粉体を採用した。

「粉体そのものに接着性を持たせることで、しっかりとした塗膜が形成でき、汗をかいても流れ落ちなくなりました」とハグラさん。ゆうに100種類を超える粉体を対象に、粒子径も変えながら探査したという。

■「ニコニコ超会議」に協賛し体感イベントを実施

 こうして完成した『薬用デオドラントZ』は、デオドラント市場への参入は最後発ながら、発売と同時に好調に売れていった。とくに男性向けは、直接塗布タイプで第2位のシェアを獲得。1位との差も小さく、トップを狙えるところに位置している。

 発売に当たってはインパクトの創造を狙い、同じブランドから同じ訴求内容の商品を、男性用・女性用であえて同時に発売した。こうすることで流通に対しては、女性用での強いブランド力を生かした商談力を男性用にも生かすことを目指した。注目の新商品であることを印象づけるため、男女ともに、棚の最上段に置いてもらえるよう、小売店に対して重点商品として扱ってもらえるよう商談に時間とコストを使った。

 また、高い防臭効果を即時に体感してもらうようなことにも取り組んだ。例えば、4月29日と30日の2日間開催された「ニコニコ超会議」に協賛し、サンプリングを行なったほか、脇のニオイをクンクン嗅いでもらい臭わないことを体感してもらうイベントを実施した。ニコニコ超会議のほかにも、特定のエリアをピンポイントで攻める取り組みを、同社は今回、重点的に実施。「今年の夏も猛暑になりそうなので、さらに力を入れていきたいです」と小林さんは明かす。

★★★取材からわかった『薬用デオドラントZ』のヒット要因3★★★

1.絶妙なターゲット設定

 ターゲットにしたのは、既存の制汗デオドラントに不満を持っている人や、納得いく効果が得られず離脱した人。新たなユーザーとして獲得できそうな人たちを狙い、見事に取り込んだ。

2.不満の解消

 前項に関連するが、汗かきの人は既存の制汗デオドラントに対して、ニオイ防止効果とワキ汗を防止する効果に不満を持っていた。この不満をすくい取り、新技術で不満解消を果たしたことが、大きな支持を集めた。

3.期待感の醸成

 最後発であったため、機能の説明だけでは相手にしてもらえない可能性があった。ニコニコ超会議で来場者に効果を体感してもらう場を設けるなど、従来の『ビオレ』では行なわないような施策にもチャレンジし、期待感を醸成することができた。

 競合がひしめく分野で、最後発で参入したところが生き残ろうとするには、決定的な差別化要因がないと厳しい。『薬用デオドラントZ』は他社がマネできない画期的な技術を採用し、既存の制汗デオドラントに不満を持つ人や、かつて使っていたが満足できず離脱した人をターゲットにすることで、決定的な差別化を図ることができた。商品がつくり込まれていただけでなく、いろいろ考えられていたからこそ、現在の好調がある。

■文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:7/9(日) 7:30
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